KADOKAWA Technology Review
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Five bridges that show how technology is changing

テクノロジーの進歩を示す最新スペックの「橋」5選

都市をつなぐ「橋」はずっと姿を変えていないように見える。だが、テクノロジーや建設手法の進歩によって、安全性や耐久性は高まり、寿命も延びている。 by Jon Allsop2021.05.10

「橋」は長らくそれほど姿を変えていない——ニューヨーク市立大学シティカレッジで土木工学を担当するアニル・アグラワル教授は言う。確かに素人目には、橋に起こっている変化はあまり分からないだろう。だが、傍目には気づきにくい橋の技術や建設手法の進展によって、現代の橋はより大きく、より安全になり、寿命も延びている。

Cities Issue
この記事はマガジン「Cities Issue」に収録されています。 マガジンの紹介

土木工学の技術者は近年、耐火・耐震・耐風性の改善などにより、橋の安全性向上に力を注いでいる。さらに、新しい橋の状態の監視や既存の橋の維持にテクノロジーを活用する方法も探っている。

20世紀の大部分において、橋の設計寿命は一般的に平均50年程度だった。寿命を延ばすため、新しい橋の多くには現在、構造物の挙動や状態のデータを収集するためのセンサーが備わっている(だが、そうしたデータを有意義な分析にリアルタイムに反映するには、やらなければならないことがまだたくさんある)。

新しい種類のコンクリートや、形を変えて風の抵抗を最小限にする橋といった目新しいテクノロジーが世界中の研究室で研究されている一方で、土木工学の基準や建設基準法はなかなか進展しない。ここで、橋梁技術がすでに変化していることを示す例を5つご紹介しよう。

san giorgio bridge
GETTY

ジェノバ・サン・ジョルジョ橋(ジェノバ)

2018年8月14日、イタリアのジェノバにある斜張橋「モランディ橋」が崩落した。43人が犠牲となり、地域交通網の幹線道路が寸断されたが、それに代わる橋の事業もすぐに開始された。ジェノバ生まれの有名建築家レンゾ・ピアノが新しい橋を設計し、1000人以上の作業員が昼夜を問わず働いた結果、わずか1年で完成にこぎ着けた。モランディ橋では腐食が崩落の原因となったので、それを防ぐためのデジタル監視システムと除湿テクノロジーを特徴としている。

guldbrun
FOSTER + PARTNERS

スルッセン橋(ストックホルム)

2020年、鉄橋の「スルッセン橋」がストックホルムの水門にかけられた。だが、この140メートルの箱桁橋(車道直下の桁が空洞の箱状を形成する構造)が組み立てられたのは、香港の近くの中山市にある造船所である。事業を監督したスウェーデンの大手建設会社スカンスカ(Skanska)のマーカス・グラース・マネージャーによると、橋は造船所で組み立てられた後、中国からストックホルムまで半潜水型の船舶でまるごと運ばれた。そのような積荷を運べる船は世界に10隻しかないという。70日間の航海後、船はゆっくりと潜水して構造物を滑らせ、支柱まで移動させた。許容誤差はわずか15センチメートルだった。スルッセン橋は、世界的なサプライチェーンによって橋の建設状況が様変わりしたことを示す一つの例だ。

Drone view of Stonecutters Bridge and the Tsing sha highway at sunset
GETTY

ストーンカッターズ橋(香港)

吊橋では、主塔に渡されたメインケーブルから垂直に垂らされた支持ケーブルが橋を支えている。それに対して斜張橋は、塔から直接広がったケーブルで橋を支える。斜張橋は何百年も前からあるが、近年の素材や建設技術の進展によって建設が容易になり、コストが安くなるまでは比較的珍しい存在だった。2009年12月に開通した香港の「ストーンカッターズ橋」は、コンクリートの円柱の周囲に巻かれた32のステンレス鋼で構成される巨大な塔を特徴とする。香港は台風の影響を受けるため、橋は秒速約95メートルの強風まで耐えられるように設計されている。技術者はさらに、橋の基礎部分にボートが衝突した状況をコンピューターでモデル化してテストするという史上初の試みもした。

GETTY

エバーグリーンポイント浮橋(シアトル)

浮橋の世界最長トップ5のうち、4本がワシントン州にある。その中で、最長かつ最大幅を誇り、シアトルとベルビューとをつないでいる「エバーグリーンポイント浮橋」は2016年に開通した。州の輸送部門に所属するニコラス・ロッダは、橋がかかっている湖があまりにも広く深いため、従来型の橋は最良の選択肢ではなかったと語る。軟弱地盤も要因の1つだった。

世界の他の場所にある浮橋は、飛び石のように配置されたはしけに乗っていることが多いとロッダは言う。それに対し、ワシントン州の浮橋はスチールケーブルで湖床にしっかり固定されたはしけに乗っている。一方、ノルウェーの技術者たちがビョルナフィヨルデン自治体で計画している浮橋は全長約4.8キロメートルで、完成すればエバーグリーンポイント橋の2倍以上の長さとなる。

angsigang Yangtze River Bridge
ALAMY

楊泗港長江大橋(武漢)

中国は今、新しい橋の建設で目覚ましい成果を上げ続けている。武漢で2019年に開通した「楊泗港長江大橋」は、主径間長が世界第2位の吊橋である。2020年には、その約80キロメートル下流で、楊泗港長江大橋よりやや短い別の橋の建設が始まった。だが、香港とマカオを結ぶ世界最長の海上橋である「港珠澳大橋」や、重慶と広西チワン族自治区にある世界第1位と第2位の長さの鋼アーチ橋など、注目すべき新しい橋は中国に多数ある。楊泗港長江大橋とその下流の橋は、そのうちの2つの例に過ぎない。中国の技術者は、そうした橋の多くに設置されている新型の監視システムから「膨大なデータを集めています」とアグラワルは語る。

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