KADOKAWA Technology Review
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自動丸洗い機能も付いた、世界のハイテク公衆トイレ
Julian Glander
How to build freestanding public restrooms that are clean and safe

自動丸洗い機能も付いた、世界のハイテク公衆トイレ

オレゴン州ポートランドとカナダのモントリオールの最新式の公衆トイレは、より清潔で安全にするためにさまざまな工夫が取り入れられている。 by Andrew Giambrone2021.05.10

公衆トイレは人間の最も基本的なニーズに応えるものだが、いつも簡単に見つかるとは限らない。オレゴン州ポートランドや、カナダのモントリオールなど一部の都市では、誰もが無料で利用できるスタンドアローン(独立型)のトイレで、その困難にうまく対処しようとしている。

Cities Issue
この記事はマガジン「Cities Issue」に収録されています。 マガジンの紹介

現在、ポートランド市全体で約20基の「ポートランド・ルー(Portland Loo、Looはトイレの意味)」が設置されている。一方、モントリオール市は、4基の自動洗浄式のトイレを2018年から設置している(パンデミック中も利用可)。技術的な複雑さの点で違いはあるものの、どちらも都市コミュニティをより快適で衛生的にする可能性を秘めた施設だ。

パリやサンフランシスコなどの他の都市も公衆トイレを設置しているが、ポートランドとモントリオールの取り組みは、トイレを必要不可欠なインフラとして扱うユニークなアプローチで際立っている。特にうまくいっているのが、ポートランド・ルーだ。実際、ポートランド・ルーのメーカーは、ポートランド市以外にも数十基の公衆トイレを販売し、北米の約20都市に設置されている。モントリオールの「ティーマックス(TMAX)」の方が技術的には高度だが、ポートランド・ルーはより安価で設計もはるかにシンプル。清掃は手作業でする必要がある。一方、モントリオールのティーマックスは、使用後にトイレ内を自動洗浄する機能を備えている(清掃員も毎日、トイレ内を清掃している)。


1. ファイバーグラス(繊維ガラス)製の便座は、寒いときにひっついて動けなくなることを防ぐ(そう、これは起こることだ)
2. オプションの鋭利物廃棄ボックスには使用済みの針などを廃棄できる
3. モーションセンサー式LED照明(とオプションの天窓)により、室内を照らす
4. 背面のサプライ・キャビネットには、手動クリーニング用のホースと蛇口も備わっている

「ポートランド・ルー(Portland Loo)」

・長さ約3.2メートル、幅約1.8メートル
・車椅子で利用可
・鏡なし
・ステンレス製の壁は落書き防止用粉末でコーティングされており、水圧洗浄できる
・上部と下部の角度のついた羽根板により、利用者のプライバシーを保護しつつ、内部を見ること(利用状況の確認)ができる
・内部の手すりは、便座に座ったり便座から立ったりする際の補助に使える
・外側の手洗い場は通行人も利用できる。内側には手指消毒液ディスペンサーが設置されている
・価格は約10万ドル(設置費と管理費は含まない)
・重量約2.7トン

1. 自動洗浄機構により、使用後90秒でユニット全体が消毒される。1本の自動バーが便座にスプレーし、圧縮空気で乾燥させる。
2. もう1本の自動バーが床にスプレーし、スクイージー(ワイパー)で乾燥させる
3. 床の重量センサーにより、使用中のユニットに人が押し入ることや自動洗浄中に閉じ込められることを防ぐ
4. 緊急ボタンやトイレットペーパー・ディスペンサー・ボタンが便座の隣に設置されている

モントリオール「ティーマックス(TMAX)」

・長さ約3メートル、幅約2メートル
・車椅子で利用可
・ステンレス製の鏡(ガラスの破片を防ぐため)
・壁は積層用樹脂製で、損傷、火災、落書きに耐性がある
・構造物は完全に囲まれており、明るい室内照明が付いている
・内部の手すりは、便座に座ったり便座から立ったりする際の補助に使える
・内部のシンクにソープ・ディスペンサーとハンドドライヤーが設置されている
・価格は約30万ドル(設置費と管理費は含まない)
・ドア横のボタンを押して入室する。ドアは使用開始から15分で再び自動で開く

筆者のアンドリュー・ジャムブロンは、ニューヨークを拠点とするフリーランスのジャーナリスト。政治、都市、社会問題についての記事を執筆している。

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