KADOKAWA Technology Review
×
夏割実施中!購読料20%オフ。
脱炭素、半分はイノベーションによって達成 IEA工程表
Orjan Ellingvag / Alamy Stock Photo
Half of the world's emissions cuts will require tech that isn’t commercially available

脱炭素、半分はイノベーションによって達成 IEA工程表

国際エネルギー機関(IEA)は、2050年までの二酸化炭素排出ゼロ達成には、蓄電池やクリーン水素、二酸化炭素回収技術などのテクノロジーの開発と、既存のテクノロジーの迅速な普及が必要だと指摘している。 by James Temple2021.05.20

今世紀半ばまでに二酸化炭素排出量をゼロにするには、削減量の半分近くは、現時点でまだ初期段階にすぎないテクノロジーで賄う必要がある。

国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)が5月18日に発表した報告書は、クリーンエネルギー技術の研究、開発、および規模拡大への積極的な投資が必要だと指摘している。

2050年までにエネルギー関連の二酸化炭素排出量をゼロにし、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑えるためのIEAのロードマップには、現時点でほぼ存在していないテクノロジーや、非常に高価なテクノロジーが含まれている。例えば、現在よりはるかに大容量の電池、工業プロセス用の燃料や供給原料としてのクリーン水素、航空機用の液体バイオ燃料、それに工場やガス燃料発電所、石炭燃料発電所などから排出される二酸化炭素を安価に回収する装置などだ。

報告書はまた、二酸化炭素を空気中から回収する技術への多額の投資が必要であるとも強調している。例えば、現在は非常に高価な直接空気回収(DAC)装置や、植物原料を燃料として使用し、燃焼中に発生する排出ガスを回収する「回収・貯留付きバイオマス発電 (BECCS)」などがある。

IEAの調査結果は、気候変動と戦うための新たなテクノロジーの創造に注力すべきか、それとも既存のテクノロジーを積極的に展開し普及させるべきか、という現在進行中の論争に影響を及ぼす。

米国のジョン・ケリー気候変動担当特使は、英国放送協会(BBC)のインタビューで「科学者たちからは、実質ゼロを達成するために必要な削減量の50%は、我々がまだ持っていないテクノロジーによってもたらされるだろうと聞いています」と述べ、ネット上で反発を招いた

IEAは、これらを「現時点でデモンストレーション、または試作段階にある」あるいは「まだ商業的に利用可能ではない」テクノロジーと表現している。

しかし、IEAの報告書は、イノベーションか普及かの二者択一の問題ではないことを明確にしている。今世紀半ばの目標を達成するには、既存のテクノロジーをいかに迅速に成長・発展させる必要があるか、タイムラインで示している。

2030年までに、世界全体で年間1000ギガワット以上の風力・太陽光発電容量を追加する必要がある。現在の米国の総発電容量に迫るほどの数字だ。2030年までに自動車の新車販売の60%を電気自動車(EV)にし、2035年までに大型トラックの半分を電気自動車にしなければならない。さらに2045年までに、世界の熱需要の半分を、クリーンな電力で稼働するヒートポンプで賄う必要がある。

つまり、一度にすべてを飛躍的に進歩させなければならないのだ。

人気の記事ランキング
  1. What’s behind this summer’s heat, and why 2027 could be worse 記録ずくめの猛暑の夏、しかし本番は来年かもしれない
  2. Scientists just created female clones of male mice オスのマウスからメス作製、日本チームが遺伝子編集で性逆転に成功
  3. Flock is tightening its rules in response to a growing surveillance backlash 警察官がストーカー目的で悪用、米車両監視大手の規則強化は効くか
ジェームス・テンプル [James Temple]米国版 エネルギー担当上級編集者
MITテクノロジーレビュー[米国版]のエネルギー担当上級編集者です。特に再生可能エネルギーと気候変動に対処するテクノロジーの取材に取り組んでいます。前職ではバージ(The Verge)の上級ディレクターを務めており、それ以前はリコード(Recode)の編集長代理、サンフランシスコ・クロニクル紙のコラムニストでした。エネルギーや気候変動の記事を書いていないときは、よく犬の散歩かカリフォルニアの景色をビデオ撮影しています。
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る