KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
ワクチンパスポート、接触追跡アプリの「二の舞」になる可能性
Kirsty O'Connor/PA Wire
生物工学/医療 無料会員限定
What England’s new vaccine passport could mean for covid tech’s next act

ワクチンパスポート、接触追跡アプリの「二の舞」になる可能性

ワクチン接種を受けたことを証明するシステムを導入する国が増えているが、同証明書は、昨年、鳴り物入りで導入され、さほど効果をあげられていない接触追跡アプリと同じような問題点をはらんでいる。 by Lindsay Muscato2021.05.20

ちょうど、ほぼ1年前のことになる。ソフトウェア開発者たちによって、パンデミックを食い止めるためのテクノロジーが慌ただしく開発された。当時は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者の近くにいたかどうかを知らせる追跡アプリに焦点が当てられていた。現在、話題はデジタルワクチン証明書に移った。「ワクチンパスポート」と呼ばれることも多いこのデジタル証明書は、スマホ上で動作し、本人がワクチン接種済みであることを表示するように設計されている。

直近では、5月17日に英国国民健康サービス(NHS)がイングランドで新たに発表した、出入国の際に使用するデジタル証明書が挙げられる。同証明書について今分かっているのは、以下のとおりだ。

専門家たちはすでに、このNHSのワクチン証明書が現在の範囲を超えて拡大するかどうかに注目している。エイダ・ラブレス研究所(Ada Lovelace Institute)のイモージェン・パーカー副所長は、パブや店舗などに入る際にパスを提示しなければならないというアイデアにはすでに反対の声が上がっていることを指摘する。「5月17日の導入が、より広範な使用の前兆であるかどうかを監視することが大事になります」とパーカー副所長は言う。「ですが、政府はとても慎重に歩んでいるようですので、それは歓迎すべきことだと思います」。

現在開発中のワクチン証明書は、このNHSアプリだけではない。欧州周辺では、各国政府がスマホベースのワクチン・パスポートの開発に取り組んでおり、中にはすでに一般公開されたものもある。その一例が、欧州連合(EU)自らが3月中旬に提案したデジタル「グリーン証明書」である。フランスの「トウスアンチコビッド(TousAntiCovid)」という接触追跡アプリは、先月アップデートされ、ワクチン接種証明書や検査結果が陰性であることも表示できるようになった。ただし、他国が今後、これを受け入れるかどうかは不明だ。そうした中でイタリアのイノベーション大臣は、同国の曝露通知アプリ「イムニ(Immuni)」を改良してワクチン証明書を追加するかもしれないと述べており、ドイツ政府の関係者も、6月末までに自国製ワクチン証明書を導入したいとしている。

欧州以外の地域では、状況はこれよりさらに複雑だ。イスラエル政府は2月に「グリーンパス」を導入。シンガポ …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る