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ティックトック、一部ユーザーの顔を無断で「盛って」配信
Lorenzo Di Cola/NurPhoto via AP
TikTok changed the shape of some people's faces without asking

ティックトック、一部ユーザーの顔を無断で「盛って」配信

ティックトックの一部ユーザーの間で、設定していない美容フィルターが一時適用されていたことがわかった。フィルターはオフにできず、「盛った」イメージが強制された格好だ。 by Abby Ohlheiser2021.06.16

「私の顔じゃない」。5月の終わりごろ、動画を作るためにティックトック(TikTok)を開いたトリ・ドーンは思わず声を上げた。画面に映し出されたアゴは本物とは違っていて、もっと細くて女性らしく見えた。カメラの前で手を振りながら、顔の大部分をレンズから遮ると、アゴは元に戻ったように見えた。肌も少し、普段よりすべすべのような気がした。

調べてみると、動画にはティックトックの美容フィルターがかけられているようだった。32万人のフォロワーがいるドーンは、いつもフィルターをオフにして動画を配信している。アプリの設定を確認してみたが、フィルター効果を無効にする方法はなさそうだった。どうやら、このフィルターはドーンの顔立ちを微妙に女性らしく変化させるために、永久に適用されてしまうようだ。

「私の顔はかなり中性的で、アゴのラインが気に入っているの」。ドーンはインタビューで語った。「アゴのラインが表れたり、消えたりするとき『なんで出たり、消えたりするの、どうして?』って感じ。アゴは私の顔の中で、数少ないお気に入りの一つなのに。なぜこんなことをするの?」

美容フィルターは今やネット上での生活の一部となり、ユーザーはソーシャルメディアで世界に向けて見せる自分の顔を変える選択ができる。フィルターで目を大きくしたり、唇をふっくらさせたり、化粧をしたり、自分の顔だちを変えたりできる。しかし、通常は一つの選択肢であり、ユーザーが強制されるものではない。この奇妙な現象に出くわしたドーンのようなユーザーたちが怒り、当惑したのはそのためだ。

ドーンは動画の中の意図しないフィルター効果について、フォロアーに伝えた。画面上でアゴへの効果が表れたり、消えたりするのを見せながらドーンは「どうでもいいと言えば、そうなんだけどね」と言った。「動画を作りながらだって、いい気持ちはしないの。だって、自分の顔じゃないから。それに、どうやってこのフィルターをオフにしたらいいか分からないし」。映像の再生は30万回以上になり、同じ現象に気づいた他のユーザーがシェアして、同じような訴えをする動画を投稿した

@toridawn817congrats tiktok I am super uncomfortable and disphoric now cuz of whatever the fuck this shit is♬ original sound – Tori Dawn

「だから、最近、私がエイリアンのように見えるの?」とある人が述べた。

「ティックトック、元に戻して」と別の人が言った

5月下旬の数日間、ティックトックの一部のユーザーの間で、カメラを通すと別人が映っているような動画が流れた。動画が広がるにつれ、多くのユーザーはティックトックが密かに一部のユーザーに美容フィルターをテストしているのではないかと考えた。

奇妙な、一時的問題

この記事を執筆している私はもっぱらティックトック・ラーカー(見るだけの人)だが、ドーンの動画を見て、その効果が自分のカメラを通しても表れるか確かめようと思った。動画を作り始めると、私のアゴの形の変化は一目瞭然だった。おそらく、肌もなめらかになっていたように思う。同僚や、自分のツイッターのフォロワーにその動画を送り、アプリを開いて同じことを試すよう頼んだ。彼らからの返信で、その効果はAndroid版にのみ適用されるらしいことが分かった。ティックトックに連絡すると、2日後には効果が適用されなくなった。後日、ティックトックは問題が発生したもののすでに解決済みである、との短い声明を発表した。それ以上の詳細は語らなかった。

表面的には、一部のユーザーだけに影響を与えた、奇妙で一時的な問題にすぎない。しかし、人々の容姿を半ば強制的に変えていたわけで、米国で約1億人が使用するアプリとしては重大な不具合だ。ウィスコンシン大学の博士課程に在籍し、美容フィルターの心理学的影響を研究しているエイミー・ニウにも映像を見てもらった。ニウは、中国などの一部の国では、初期設定で微妙な美容フィルターをかけているアプリもあると指摘した。ウィーチャット(WeChat)などのアプリを使って自分のカメラで撮った写真とアプリが生成する画像を比べてみると、フィルターが確かに適用されていることが確認できるという。

2カ月前、彼女は中国版ティックトックである「ドウイン(Douyin​)」をダウンロードした。「美容モードとフィルターをオフにしても、まだ顔は何らかの調整がされています」と彼女は話した。

アプリに美容フィルターがあるのは、必ずしも悪いことではない。しかし、アプリの設計者には、そういったフィルターがどのように使われるのか、フィルターが使用者の容姿をどのように変えるのかを考慮する責任がある、とニウは話す。一時的な不具合だとしても、自分がどう見えるのか、見る人たちに影響を与える可能性があるからだ。

「人々が持つ美の基準、自分自身の体型イメージ、あるいは外見に対する不安」といったことを考慮すべきだとニウは話した。

ドーンにとって今回の奇妙な顔の効果は、ティックトックへの不満が一つ増えたに過ぎない。「ナルシストみたいですね。ティックトックはあるとき、いたずらを仕掛けてきて、フォロワーや注目を集めて、とても気持ちよくさせてくれる。そして何らかの理由で縁を切ることになるのでしょう?」

 

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アビー・オルハイザー [Abby Ohlheiser]米国版 デジタル・カルチャー担当上級編集者
インターネット・カルチャーを中心に取材。前職は、ワシントン・ポスト紙でデジタルライフを取材し、アトランティック・ワイヤー紙でスタッフ・ライター務めた。
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