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テクノロジーの進歩はなぜ飢餓を根絶できないのか?
Nico Ortega
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Why people still starve in an age of abundance

テクノロジーの進歩はなぜ飢餓を根絶できないのか?

食料供給システムは近代世界で最も優れたテクノロジーの成功物語の1つとなっている。農業の生産性は何倍にも向上し、サプライチェーンでも驚異的な革新が起きている。にもかかわらず、なぜ飢餓の問題は解決できないのか。 by Bobbie Johnson2021.06.24

ノーベル賞には論争がつきものだ。栄誉あるノーベル賞はたいていヘビの巣をつついたような批判を巻き起こし、受賞者の経歴をあざ笑ったり、歴史の闇に埋もれた協力者の存在を訴えたり、不当に沈黙させられた人にこそ受賞資格があると示したりするのが通例となっている。

ノーベル委員会が2020年のノーベル平和賞を食物援助機関、国連WFP(国際連合世界食糧計画、United Nations World Food Programme)に授与すると決定したとき、これまで同様、そのニュースに何度となく冷笑や軽蔑の眼差しが向けられたのも不思議ではなかった。

ノーベル委員会によると、今回の授賞理由は「パンデミック(世界的な流行)に直面したWFPが目覚ましい能力を発揮して取り組みを強化した」ことだった。これには反論の余地はない。

ところが、実際には多くの人々が反論した。国連機関がノーベル平和賞を受けるのならば、それは「『組織の理念』に賞を与えるのとほとんど変わらない」と米アトランティック(Atlantic)誌のロビンソン・マイヤー記者は皮肉った。「ノーベル平和賞をWFPに与えるというのは奇妙な選択で、ノーベル賞を完全に無駄にしています」と英国マンチェスター大学で国際保健を研究するムケシュ・カピラ教授は言った。このような批判には一理ある。生活に困っている人々に食物援助を提供するWFPは国連最大の機関で、全世界に1万4500人の職員を抱えている。WFPは、単に職務を果たしただけで受賞したとカピラ教授は主張した。

その上、ノーベル委員会が解釈した職務の幅は極めて狭いものだ。国連がWFPを作ったのは、深刻に高まった危機から迫り来る脅威に取り組むためではなく、本来の任務は最終的に「飢餓と栄養不良を根絶する」ことだ。飢餓を終わらせるため60年近く努力しているのに、現在のWFPはかつてないほど巨大で多忙だ。世界中の農民は世界の人々全員を養って余りある食料を生産しているが、それでも人々は飢えている。なぜだろう。

本当に食べ物を待ちわびている人たち

世界の飢餓は好転するどころか、悪化を続けている。確かに、生きていくのに十分なカロリーを恒常的に得られない人々の比率は減少した。2000年の15%から2014年には8.6%に減少した。にもかかわらず、それ以降、この比率はほぼ横ばいで、栄養不良の人々の絶対数は増加している。国連によると、2020年は6億8800万人が恒常的な飢餓に陥り、2014年の6億2890万人から増加した。急激な増加ではないが、現在の傾向が続けば2030年には8億4000万人以上が栄養不良になるかもしれない。

この統計は抽象的に見えるが、数百万人の1人1人が実際に食べ物を待ちわび、耐え忍んでいる苦痛はすこぶる現実的だ。オーストラリアのジャーナリストで作家のジュリアン・クリブは、2019年の著書『Food or War(食物か戦争か)』(未邦訳)で飢餓の身体的プロセスを極めて綿密に記述している。身体は生命を維持するための糧を求めて自分自身を貪り食い、活力を消耗し、貧血や水分の蓄積、慢性下痢のような副次的影響が生じると説明している。その後、「筋肉が消耗を始め、犠牲者はどんどん衰弱していく」とも書いている。

「成人は、完全に食物を奪われると8週間から12週間で死にいたり(中略)子どもは長期的な飢餓で身体発育と精神の発達が遅れ、栄養が健全な状態に戻っても回復しない可能性があります。要するに、飢餓は心身両面において最も苦しい死に方で、実際、残忍な人々が発明した拷問のほとんどよりずっと悪質なのです。死にいたるまでの時間が非常に長く、人体のほぼすべての器官の破壊を伴うからです」。

現在、貧困根絶のために活動する国際非営利団体「オックスファム(Oxfam)」は、数百万もの人々がこの言語道断な拷問にさらされている全世界10カ所を「極度な飢餓ホット・スポット」として特定している。そのうちの数カ所は紛争地域だ。米国が関与した最も長期間に及ぶ戦争の舞台となっているアフガニスタン、隣国サウジアラビアが煽った内戦で2400万人の市民の80%が人道支援の必要に迫られているイエメンなどだ。だが飢餓の発生につながる状況は他にもある。ベネズエラの完全に失敗した経済、南アフリカの高い失業率、ブラジルの何年にもわたる緊縮財政などだ。

高度に発達した先進工業国でさえ、飢餓の脅威、単なる栄養不足ではなく実際の飢えが、経済的な不平等の結果として拡大している。英国ではフードバンク(食物を困窮者に配給する各団体・組織の総称)の利用が、2013年から2倍以上になった。米国では食物不足が広がり、最も打撃を受けるのは子どもや老人、それに貧しい人々だ。米国で最も飢餓が深刻なミシシッピ州では、子どもの4人に1人がいつも十分な食事をとれない。いったい何が起きているのだろう?

驚愕の未来

こうした世界の飢餓を理解するのが難しいのは、食料供給システムが近代世界で最も優れたテクノロジーの成功物語の1つとなっているからでもある。我々が何を食べ、それがどのように生産され、どこからやって来るのか、といったすべてが産業化時代(農耕社会から産業社会への変化)に劇的に変わった。機械化やコンピューター化から生化学や遺伝子操作にいたるまで、ほとんどあらゆる種類のテクノロジーを食物に適用する方法を我々は見つけてきた。このような技術的飛躍が生産性を劇的に向上させ、数十億もの人々が食物をより確実に、より広範囲にわたって入手できるようになった。

農業自体の効率と生産性は何倍も向上した。1900年代初頭、ハーバー・ボッシュ法(アンモニアを製造する方法の1つ)を利用して空気から窒素を抽出し、前例のない規模で肥料が作られた。機械化は急速に普及した。1930年代の米国農家は約7軒に1軒がトラクターを所 …

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