KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
無料ドーナツに野球観戦 ワクチンの接種拡大に本当に必要なもの
Ms Tech | Getty
生物工学/医療 無料会員限定
The best vaccine incentive might be paid time off

無料ドーナツに野球観戦 ワクチンの接種拡大に本当に必要なもの

米国で新型コロナワクチンの接種が進む中、時給制で働く何百万人もの現場労働者たちがを接種を受けられずにいる。ワクチン接種を推進するためにさまざまな奨励策が設けられているが、本当に必要なのは有給休暇と信頼性の高い情報かもしれない。 by Mia Sato2021.08.03

無料のドーナツ、ロサンゼルス・レイカーズの観戦チケット、愛する人たちと映像越しに面会できる囚人向けビデオ訪問、100万ドルの宝くじに当選するチャンス——。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種するよう米国民を説得するために、各州や都市、民間企業は、思いつく限りのあらゆるご褒美をぶら下げている。ワクチン接種に抵抗があるわけではないが、あと一歩のところで接種をためらっている人を後押しするのが狙いだ。しかし、こうしたプログラムによって、意図したような効果が得られたという証拠はほとんどない。

だが、デルタ型変異株の感染件数が全米各地で増加する中で、すべての人に有給休暇を与えれば、ワクチン接種率を引き上げ、現場で働く労働者と彼らのコミュニティを守ることができるかもしれない。ズーム(Zoom)から数時間だけ退出して接種を受けてくるといったことが容易にできる月給取りのリモート・ワーカーにとって、有給休暇はささやかな特典のように思えるかもしれない。だが、時給制のシフトで働く何百万人もの労働者たちにとっては、有給休暇こそが、接種に踏み切るための最後の一押しになり得る。

パンデミック下の仕事の現場

パンデミックによって日常生活の大部分が停止状態に陥る中、多くの米国人が対面での労働を継続しなければならず、危険手当が給付されないことも多い。

カイザー・ファミリー財団(Kaiser Family Foundation)が6月に実施した調査によれば、労働者の65%は雇用主から新型コロナのワクチン接種を奨励されたが、接種や副反応からの回復のための有給休暇を実際に取得できると答えた人は50%に過ぎなかった。 そして、有給休暇を取得できる労働者は、年齢、人種、収入、支持政党に応じた調整を踏まえても、ワクチン接種を受ける可能性がより高くなるという結果が出た。

残り50%の労働者は、ワクチン接種に伴う経済的な支援や補償が受けられないままとなっている。より多くの雇用主が従業員にワクチン接種を呼びかければワクチン接種率を上昇させることが可能であり、接種のための有給休暇も取得できるようにすればさらに高い効果が得られるということが、この研究から読み取れる。

このことは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染する確率が高く、小売業やサービス業などの低賃金の仕事に就いている割合の多い黒人やヒスパニック系の労働者にはさらに良く当てはまるだろう。カイザー・ファミリー財団の調査では、全労働者のうち20%近くが、「欠勤したくないから」あるいは「忙し過ぎるから」という理由で新型コロナワクチンの接種を受けていないと回答した。ワクチン未接種の理由としてこの2つを挙げた人の割合は、黒人労働者では26%、ヒスパニック系労働者では40%に跳ね上がる。

すでにボーナス支給などのインセンティブを設けている企業もある。小売業者のターゲット(Target)がワクチン接種会場までの無料送迎を実施し、米1ドルショップ大手のダラー・ゼネラル(Dollar Gener …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る