KADOKAWA Technology Review
×
締切 迫る!【1/31まで】ひと月あたり1000円。
お得に購読できるキャンペーン実施中!
ANTS
Chameleon-inspired robot skin changes colors instantly

まるでカメレオン、一瞬で背景に溶け込む人工カモフラージュ・ロボ

カメレオンの皮膚のように自由自在に変色するロボットを韓国の研究者が開発した。生物にヒントを得たロボットには新たな可能性がある。 by Tatyana Woodall2021.08.14

カメレオンは昔から適応の象徴だ。皮膚の下に虹色素胞という特殊な細胞の層を持ち、それを調整して周囲の環境に溶け込む能力があるからだ。

2021年8月11日のネイチャー・コミュニケーションズ誌に、韓国の研究者が本物のカメレオンを真似る能力を持つカメレオンロボットを作り出し、人工カモフラージュの新テクノロジーの道を開いたという新たな論文が掲載された。

研究チームは、カラーセンサーと銀ナノワイヤーで出来た微小なヒーター、温度によって色を変える性質を持つサーモクロミック材料を利用して、複数の高解像度の皮膚模様の再現に成功。ほぼ一瞬で色を変化させる能力をロボットに持たせられるようにした。

人工カモフラージュに対するこれまでの試みは、マイクロ流体装置に頼る場合が多かった。微小な流路で内部の液体の流れを制御するというものだ。しかし、今回のプロジェクトでは完全に電気的な手法を用いている。

この論文の著者の1人であり、ソウル大学校工科大学機械工学部で熱工学を研究しているコ・スンファン教授によると、色の変化速度を自然のカメレオンと同様の速度に上げることが最も難しかったという。非常に速く温度を上げることができるナノワイヤー・ヒーターを利用することで問題を解決。人工皮膚の温度をすばやく上昇させ、本物の生物と同等の速度で色を変えられるようになった。

「最初の試作品を作るのには非常に時間がかかりました」とコ教授はそう語る。最初のステップは、ロボットのモデルを何にするかを決めることだ。脊椎動物(背骨を持つ動物)にするか、それともイカやタコのような無脊椎動物にするかといったことだ。無脊椎動物をモデルにした方が動きにより自由度を持たせることができる。そのため研究チームは最初、タコを模倣する計画を立てた。しかしコ教授によると、そのアイデアは「野心的過ぎる」ことが判明したという。

さまざまなデザインや材料構造を検討した結果、最終的に研究チームはカメレオン自体のシンプルな形に取り組むと決めた。ナノワイヤーを点や線や鱗形で構成されたシンプルな模様の形にすることで、この映像で見られるような複雑な効果を作り出すことに成功した。

人工カモフラージュに対する以前の研究は軍事目的に関連付けられることが多かったが、コ教授は、研究成果が特に輸送、美容、ファッションなどの分野で幅広い影響を与えると期待している。将来的には、例えば色を調整して目立たせることができる自動車や、色を変えられる服などに応用できるそうだ。

コ教授は「このカメレオン皮膚の表面は、つまり一種のディスプレイ(表示装置)なのです」と言う。「柔軟性と伸縮性を持つディスプレイに応用できます」。

しかし、このテクノロジーは温度に依存しているため、極端に寒い場所ではあまり機能しない。人工カメレオンがあらゆる色を表現することが難しくなってしまう。

パデュー大学で生物の機能を模倣したロボット工学を研究しているラムセス・マルティネス助教授は、生物学的な影響を受けたシステムを新しいテクノロジーに転用することで、例えば地震が発生した際に生存者の位置を特定するシステムなど、さらなる可能性を開くだろうと指摘している。

人気の記事ランキング
  1. Going bald? Lab-grown hair cells could be on the way 幹細胞技術で「髪」復活、究極の薄毛治療は実現するか?
  2. The worst technology of 2021 MITTRが選ぶ、2021年の「最低なテクノロジー」5選
  3. These are the most detailed photos yet of the far side of the moon 中国、過去最高解像度の「月の裏側」写真を公開
  4. Competitive e-cycling lets you be a champion from your apartment 盛り上がるeサイクリング、「お隣さん」が世界王者になる?
タチアナ・ウッドオール [Tatyana Woodall]米国版 新進ジャーナリスト・フェロー
MITテクノロジーレビューの新進ジャーナリスト・フェローとして、宇宙、生命工学、AI分野の取材を担当。MITテクノロジーレビューに参加する以前は、ニューヨーク・タイムズ学生ジャーナリズム研究所での執筆、WOSU-NPRでのラジオ番組制作などを経験。大学新聞の編集長として、スポーツ文化からメンタルヘルスまで幅広く取材した。
日本発「世界を変える」35歳未満のイノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Going bald? Lab-grown hair cells could be on the way 幹細胞技術で「髪」復活、究極の薄毛治療は実現するか?
  2. The worst technology of 2021 MITTRが選ぶ、2021年の「最低なテクノロジー」5選
  3. These are the most detailed photos yet of the far side of the moon 中国、過去最高解像度の「月の裏側」写真を公開
  4. Competitive e-cycling lets you be a champion from your apartment 盛り上がるeサイクリング、「お隣さん」が世界王者になる?
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.5
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.5Cities Issue

新型コロナのパンデミックによって激変した都市生活は、ポストコロナでどう変わるのか? 都市部への人口集中が世界で加速する中、環境、災害、貧困といった負の側面をテクノロジーは解決できるのか? 多様な人々が集まり、化学反応が起きるイノベーションの集積地としての役割を都市は今後も果たし続けるのか? 世界の豊富な事例と識者への取材を通して、新しい都市の未来像を描く。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る