KADOKAWA Technology Review
×
6/15開催 「生成AI革命2」参加受付中【会員優待あり】
幹細胞技術で「髪」復活、究極の薄毛治療は実現するか?
Ms Tech | Courtesy Photo dNovo
生命の再定義 無料会員限定
Going bald? Lab-grown hair cells could be on the way

幹細胞技術で「髪」復活、究極の薄毛治療は実現するか?

まやかしが多いことで知られる育毛・養毛産業に最新の遺伝子工学を持ち込むべく研究開発に取り組むスタートアップ企業が登場している。細胞を遺伝子操作して再プログラミングすることで薄毛を治すという。 by Antonio Regalado2022.01.20

昔から存在する脱毛症の問題に、最新の遺伝子工学の進歩を応用するスタートアップ企業がいくつか登場している。髪の毛を形成する細胞を新たに作り出すことで、髪を生やす能力を回復させられるかもしれない。

一部の研究者たちは、この手法を使って、研究室で人間の髪の毛の細胞を培養しているだけでなく、動物を使った実験もしているとMITテクノロジーレビューに述べている。スタートアップ企業のデノボ(dNovo)は、人間の毛が密集して生えているマウスの写真を送ってくれた。ヒト毛包幹細胞を移植した結果だという。

デノボの創業者は、スタンフォード大学出身の生物学者であるエルネスト・ルハン博士だ。ルハンCEO(最高経営責任者)によれば、デノボでは血液や脂肪など普通の細胞を、遺伝子操作で「再プログラミング」することにより、毛包の構成成分を作り出せるという。さらなる研究が必要だが、最終的にはこのテクノロジーによって「抜け毛の根本原因」を治療できる可能性があるとルハンCEOは考えている。

私たちが生まれた時に持っている全ての毛包は、その後もずっとなくなることはない。しかし、加齢やがん、テストステロン(男性ホルモン)、遺伝的な不運、さらには新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などにより、毛髪を作る毛包の中の幹細胞が死滅してしまう場合がある。一旦この幹細胞を失えば、髪の毛も失ってしまう。デノボでは、細胞の中で機能してる遺伝子のパターンを変化させることで、どんな細胞でも直接毛髪幹細胞に変えられるという。

「生物学では、細胞は不変の存在ではなく、『状態』として理解されています」と、ルハンCEOは言う。「私たちは、ある状態にある細胞を別の状態へと変化させられます」。

細胞を再プログラミングする

髪の毛を回復する可能性は、細胞を再プログラミングするテクノロジーによって老化の症状に打ち勝てるかどうかという、より広範囲な探求の一角にすぎない。MITテクノロジーレビューは2021年8月に、秘密のベールに包まれた企業であるアルトス・ラボ(Altos Lab)が、細胞の再プログラミングを使って人を若返らせることが可能かどうかを研究する計画であると報じた。別のスタートアップ企業であるコンセプション(Conception)は、血液をヒト卵細胞に変えることで受胎能力を拡張しようとしている。

こうした研究のカギとなるブレークスルーが起こったのは、2000年代前半のことだった。京都大学の山中伸弥教授のチームが、どのような種類の組織でも、胚の中にあるのと同様の強力な幹細胞(iPS細胞)に変えられる簡単な方法を見つけたのだ。 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
生成AI革命

自然な文章を生成するチャットGPT(ChatGPT)/GPT-4などの大規模言語モデル、テキストから画像を生成できるDALL·E 、Stable Diffusion、Midjourneyなどの拡散モデルの登場は、私たちの生活やビジネスを大きく変えようとしている。
人工知能(AI)の新時代を牽引する「生成AI(ジェネレーティブAI)」革命の最前線を追う。

記事一覧を見る
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.10
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.10世界を変えるU35イノベーター2022年版

人工知能(AI)/ロボット工学、インターネット、通信、コンピューター/電子機器、輸送、持続可能性、生物工学など幅広いテクノロジー領域で活躍する2022年の日本を代表する若手イノベーター14人、米国・中国・欧州などで活躍するグローバルのイノベーター35人を一挙紹介する。

詳細を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る