スペースX、通信衛星40基を失う 磁気嵐の影響で
スペースXが2月3日に打ち上げたインターネット通信サービス「スターリンク」用の人工衛星40基が、太陽活動の活発化に伴う磁気嵐の影響を受けて高度が低下し、大気圏に突入しつつある。 by Jonathan O'Callaghan2022.02.14
太陽による磁気嵐の影響により、2月4日、スペースX(SpaceX)のインターネット接続サービス「スターリンク(Starlink)」のために新たに打ち上げられた人工衛星、最大40基が軌道を離脱した。現在、専門家らは、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスなどが計画している「メガコンステレーション」と呼ばれる巨大な衛星ネットワークが、将来、このような事態に耐えられるかどうか懸念している。
スペースXは、2月3日にフロリダ州のケープカナベラルから、スターリンク用の新型人工衛星を搭載したロケット「ファルコン(Falcon)9」を打ち上げた。スペースXは、これまでに1900基以上の自動車サイズの人工衛星を打ち上げており、最終的には4万2000基の人工衛星を地球低軌道に打ち上げ、地球上のあらゆる場所にインターネット通信サービスを提供したいと考えだ。
しかし、打ち上げの翌日に大惨事が発生した。太陽表面からプラズマが噴出したことにより、荷電粒子が地球の大気中に流れ込んだのだ。これにより地球の磁場が狂い、大気密度が急激に上昇し、地球軌道上の人工衛星が受ける粒子が増加した。これは大気抵抗と呼ばれる現象であり、大気抵抗が発生すると人工衛星の速度が落ちて、軌道から逸脱してしまう恐れがある。
スペースXは、この磁気嵐の結果、最大40基の最新人工衛星が「今後地球の大気圏に再突入する予定であり、すでに再突入しているものもあります」とする声明を発表し、「特異な状況」であると表現している。今回打ち上げられた人工衛星は、大気の密度が高い高度210から240キロメートルの低軌道に打ち上げられたため、磁気嵐の影響をより強く受けてしまった。これらの人工衛星は、搭載したイオンエンジンを使って、数週間かけてゆっくりと軌道を高度550キロメートルまで上昇させる計画であった。高度が高くなると大気が薄くなり、大気抵抗が減る。すでに高い高度の軌道に乗っている人工衛星は、大気から受ける影響がより少なくなっていた。
スペースXは、これらの人工衛星は大気中で完全に燃え尽きるよう設計されているため、「地球周回軌道上にスペースデブリが発生せず、人工衛星の部品が地上に落下しないようになっています」と述べている。一部の人工衛星はすでに大気圏に再突入しており、残りの人工衛星も1週間以内に再突入する予定だ。しかし、今回の打ち上げ失敗による経済的損失は、5000万ドルから1億ドルと見積もられている。
今回の出来事は、メガコンステレーションの展開計画と今後の展望について、いくつかの重要な問題を提起した。アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、ロケット打ち上げの数日前に、磁気嵐が発生する可能性につ …
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