賢く振る舞うAIチャットボットは「検索の未来」か?
大規模言語モデルをインターネット検索に活用し、ユーザーの質問に対する回答を専門家のようにすばやく返す方法をグーグルをはじめとするテック企業が模索している。だが、このアプローチは間違った考え方なのではないか? との批判や反発の声も出始めている。 by Will Douglas Heaven2022.03.31
最新のガジェットや開発中のテクノロジーが披露される年次イベント「グーグル I/O」で昨年、同社のサンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は、「自然言語理解における最新のブレークスルー」として、どんな話題でも会話できるように設計されたチャットボット「ラムダ(LaMDA)」を発表した。
ピチャイCEOは、冥王星に関する質問に対して自然言語で答えるというデモを披露し、検索に代わる便利な情報の取得方法をアピールした。従来の検索ボックスにクエリーを入力すると結果をリストで表示する方法ではなく、ラムダはこの準惑星になりきって会話に参加したのだ。
ラムダはその後いくつかの誤りを犯したものの、全体としては気の利いた対応を見せた。ピチャイCEOの説明によると、ラムダの基盤となる人工知能(AI)言語モデルはまだまだ開発中のものであり、ラムダを製品に組み込む具体的な予定は現時点ではないという。仮にそうだとしても、グーグルはラムダを使って、コンピューターと人間がやり取りするための新たな方法、特に情報検索のための新たな方法を模索している。「ラムダはすでに冥王星やそのほかの何百万もの話題について、かなり多くのことを理解しています」(ピチャイCEO)。
関連性のある正確な情報を、人間が理解しやすい一口サイズに加工して提供する「物知り顔のAI」というビジョンは、テック企業が目指す検索の未来に近づく方法を具現化するものだ。実際のところ、シリ(Siri)やアレクサ(Alexa)のような音声アシスタントの登場によって、言語モデルは一般に何らかの情報を探すときに頼れるテクノロジーになりつつある。
だが、このアプローチは間違った考え方なのではないか? こうした批判や反発の声も出始めている。コンピューターに1つの質問を投げかけ、自然言語で1つの回答を得るというやり方は、物事の複雑さを、それとは釣り合わない上辺だけの権威の陰に隠してしまう可能性があるからだ。「私たちは何ができるか? ということに囚われすぎており、何をすべきか? ということに目を向けてきませんでした」。ワシントン大学で検索テクノロジーについて研究しているチラグ・シャー准教授はこう話す。
シャー准教授は3月14日、ワシントン大学で計算言語学と自然言語処理における倫理問題を研究しているエミリー・ベンダー教授と共同で論文を発表した。この論文では、設計段階で対応が考慮されていないタスクへの言語モデルの性急にすぎる利用を批判している。2人は特に、検索に言語モデルを使用することで、誤った情報や偏った議論が増える可能性を懸念している。
「質問すれば答えを教えてくれる『スタートレック』のような全知全能のコンピューターが存在する空想の世界は、私たちが提供できるものでも、私たちが必要としているものでもありません」。ベンダー教授はこう指摘する。ベンダー教授は、大規模な言語モデルの危険性を指摘したことでグーグルを解雇されたティムニット・ゲブルと共同で論文を執筆した人物でもある。ベンダー教授は、検索という任務を遂行するのに、今日のテクノロジーが不十分なことだけが問題ではないと考えている。「ビジョンに間違いがあるのだと私は思います。情報を得るための方法が、専門家に聞いて教えてもらうだけというのは、あまりに幼稚な話です」。
グーグルはすでに、既存の検索テクノロジーの改善に言語モデルを使用しており、ユーザーの質問の意図をより正確に解釈するのに役立てている。だが、そうではなく、言語モデルを使えば検索方法を根本から見直すせるかもしれない考える人たちもいる。ラムダはその一例に過ぎな …
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