主張:「現金がなくなる日」はやってくるか?
もはや現代の生活スピードと合わなくなった「現金」に代わるデジタル・マネーは、利便性を向上させる一方で、不平等を促進する。現金を再考する時なのだろうか? by Lana Swartz2022.04.22
私がよく行くカフェのきらびやかなガラス扉には、「当店はキャッシュレスです」というステッカーが貼られている。このステッカーは、その横に貼られたピカピカの「新型コロナウイルス感染症対策リスト」よりも前に作られたものだが、2つを合わせると「非接触の効率性」を訴える宣言となる。つまり、社会的交流、客同士の交流の場であるパブリックな空間を、最高の利便性と清潔感で体験できるという店側の約束だ。だが、キャッシュレスのこのカフェは、人との接触をなくそうとする一方で、はるかに重い社会的障壁や不平等を再生産しているのだ。
個人やコミュニティにとってのデジタル・ウォレットやモバイル決済などの取引技術は、意思決定における自律性、危機的状況における柔軟性とレジリエンス(回復力)、それに被害や搾取、侮辱と対抗する能力を高められる存在だ。これらの取引技術に対する信頼は、富やインフラ、将来の世代の繁栄の基礎を築く長期的なものであると同時に、実験やリスクに対する能力を作り上げるものでもある。当然ながらその逆もまた真であり、これらのツールの悪意あるものについては、コミュニティや個人の主体性を奪ってしまう。
現金は、人類がこれまでに発明した、コミュニティと個人の自律性を高めるための、最高の取引ツールである。現金は、複製が困難であるという価値や意味を提供する。現金は使うのに誰かの署名は必要ない。どこで、何に使うかも指定されていない。匿名性が高く、使う人が何者であるか、誰も知る必要がない。また、現金の取引に関するデータが第三者に提供されることもない。支払人、受取人ともに手数料なしで取引できる。手元にいくらあるかが分かる。不透明な第三者支払処理機関によって気まぐれに口座が凍結されたり、詐欺師によって取り消されたり、気づかないうちに当座貸越になるまで手数料に食いつぶされたりすることもない。店頭販売を運営するために、ハードウェアとソフトウェアの脆弱な複数のレイヤーで構成されるインフラに依存することもない。
現金がなく …
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