人類初のNASA地球防衛実験、小惑星への衝突に成功
小惑星に探査機を衝突させ、軌道を変更する人類初の惑星防衛システムの試験となる「DART」をNASAが実施した。探査機が狙いどおりに小惑星に衝突する様子を映像で見ることができる。 by Rhiannon Williams2022.09.28
米国航空宇宙局(NASA)は、小惑星に探査機を衝突させ、その軌道を変えるという人類初の惑星防衛システムのテストの成功を祝っている。NASAの二重小惑星軌道変更実証実験(DART:Double Asteroid Redirection Test)は米国東部標準時9月26日午後7時14分、小惑星ディモルフォスに意図通りに衝突し、10カ月に及ぶミッションを成功裡に終えた。
DARTに搭載された小型カメラは、地球からおよそ1100万キロメートルの距離にある幅160メートルの小惑星に向けて探査機が着実に進んでいく姿を、ジョンズ ホプキンス大学応用物理学研究所にある制御室に向けてライブ配信した。チームは、ディモルフォスがぐんぐん小惑星に接近し、衝突時の衝撃でライブ配信が途絶える様子に歓声を上げた。この一撃は「基本的に狙い通り命中しました」(DARTミッションの主任技術者であるエレナ・アダムス)。アーカイブ映像からは、DARTがディモルフォスに衝突したまさにその瞬間をその目で確認できる。DARTのプログラム科学者であるトム・スタトラーは昨年、この衝突を、時速2万4000キロメートルで進むゴルフカートがサッカースタジアムの壁に激突するようなものだと説明していた。
2021年11月に打ち上げられたこのミッションの狙いは、人類が小惑星から身を守る方法を示すことにある。ディモルフォス自体に地球に衝突する予定はなかったが、このプロジェクトによって、将来同様の小惑星の軌道をそらす能力を実証することができる。研究者たちは、衝突によってディモルフォスの周期がおよそ10 分短縮された可能性があると考えている。これは、小惑星の移動経路を大きく変えるのに十分なものだ。NASAのビル・ネルソン長官は、このミッションを「惑星防衛に関する前例のない成功」と呼んだ。
次のステップは、地球上の望遠鏡で小惑星を観測し、DARTの衝撃によってディディモスというより大きな小惑星の周りを公転するディモルフォスの軌道が変化したことを確認することだ。
小惑星に確実に衝突するために必要な信じられないほど精密な計算については、こちらの記事で詳しく紹介している。
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- リアノン・ウィリアムズ [Rhiannon Williams]米国版 ニュース担当記者
- 米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」の執筆を担当。MITテクノロジーレビュー入社以前は、英国「i (アイ)」紙のテクノロジー特派員、テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を務めた。2021年には英国ジャーナリズム賞の最終選考に残ったほか、専門家としてBBCにも定期的に出演している。