KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
小惑星衝突を防ぐNASA実験で思わぬ影響か、新研究で指摘
NASA/Johns Hopkins APL
宇宙 無料会員限定
NASA is going to slam a spacecraft into an asteroid. Things might get chaotic.

小惑星衝突を防ぐNASA実験で思わぬ影響か、新研究で指摘

宇宙探査機を小惑星にぶつけて軌道を逸らす実験である「DART」ミッションが年内にも打ち上げられる。主な目的は小惑星の公転周期を変化させることだが、シミュレーションによると衝突の衝撃で小惑星の自転にも大きな影響が出る可能性が分かった。 by Jonathan O'Callaghan2021.09.13

恐竜には宇宙開発計画がなかった。だから6500万年前に自分たちが支配している地球に向かって小惑星が飛来したとき、警告を受け取ることもなければ、身を守る手段も持たなかった。その結果どうなったかは、周知の通りだ。

当然のことながら、人類は同じ運命を避けようと必死になっている。米国航空宇宙局(NASA)は今年、将来地球に衝突する小惑星の軌道を逸らすための予行練習となるミッションの打ち上げを実施する。「二重小惑星軌道変更実証実験(DART:Double Asteroid Redirection Test)」は早ければ2021年11月24日(遅くとも2022年2月)に打ち上げられ、1年で標的の小惑星「ディモルフォス(Dimorphos)」に到達する。ディモルフォスはスタジアムほどの大きさの小惑星で、より大型の小惑星「ディディモス(Didymos)」の周囲を公転している。

計画では、自動車ほどの大きさで重量およそ3分の1トンのDART宇宙機を秒速6.5キロメートルの速さでディモルフォスにぶつけ、ディディモスを約12時間で一周する周回軌道を数分変更する。5年後、欧州宇宙機構(ESA)の「ヘラ(Hera)」ミッションがディモルフォスに到達し、DARTミッションの結果を確認する。衝突による軌道への影響はほんのわずかだが、十分な余裕をもって事前に衝突させておけば、将来的に地球の進行路から小惑星をどかすには十分だ。DARTのプログラム科学者を務めるNASA本部(ワシントンD.C)のトム・スタトラーは、「非常に壊滅的な自然災害を回避できるようになるために、私たちはこの実験に取り組んでいます」と語る。

ディモルフォスの軌道がどのように変化する可能性があるかはよく研究されてきた一方で、衝突後にディモルフォス自体がどうなるかについては、これまであまり知られていなかった。衝突によってディモルフォスに生じうる変化を調査する初のシミュレーションについて記された論文が、学術誌「イカロス(Icarus)」に掲載された。

メリーランド大学の博士課程大学院生であるハリソン・アグルサの主導する研究チームは、衝突の勢いがロール、ピッチ、ヨーをどのように変化させるか計算することで、DARTがディモルフォスの自転にもたらす変化の度合いをモデル化した。衝突によって生じる変化は、非常に劇的なものになるかもしれない。「ディモルフォスは転げ回りはじめ、カオス状態になる可能性があります」とアグルサは言う。「これには本当に驚きました」。

思いも寄らない回転運動によって、いくつかの興味深い課題が生じることになる。ESAはヘラ・ミッションでディモルフォスに2つの小さな探査機を着陸させようとしているが、その難易度は上がるだろう。また、自転は小惑星の軌道に影響することから、地球に衝突する小惑星の軌道を逸らす将来の試みがより複雑なものとなる可能性 …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る