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「腸内細菌の生態系」は健康や長寿にどう影響するのか?
KATERYNA KON/SCIENCE PHOTO LIBRARY via Getty
Your microbiome ages as you do—and that's a problem

「腸内細菌の生態系」は健康や長寿にどう影響するのか?

マイクロバイオームの変化は、さまざまな病気に関連しているとされる。腸内細菌の生態系を整えることは、加齢に伴う病気を防ぐのに役立つのだろうか。 by Jessica Hamzelou2023.01.14

この記事は米国版ニュースレターを一部再編集したものです。

私たちの周りは、微生物であふれ返っている。私たちの体内では独自の生態系がいくつも築き上げられており、そこでは微生物や菌類などのさまざまな生物が生息している。こうした生物は、私たちの健康維持に欠かせない存在だ。マイクロバイオーム(生物の体に生息する微生物と、その遺伝情報)の変化は、さまざまな病気に関連していると言われてきた。微生物を大切にすれば、微生物もあなたを大切にしてくれるというわけだ。

こうした生態系は、私たち宿主の加齢とともに変化すると考えられており、生態系の変化によって、加齢性疾患のリスクが高まることが懸念される。では、どのようにすれば、年を重ねてもこの生態系を良い状態に保てるのだろうか?そして最高レベルの生態系は、病気を予防し、健康や長寿につながるのだろうか?

ここ最近私が考えていた疑問だ。というのも、複数の知人が冬の感染症にかかり、抗生物質を処方されているからだ。抗生物質は命を救うものではあるが、時として腸内細菌を死滅させ、悪玉菌だけでなく善玉菌までもを一掃してしまうことがある。では、抗生物質を服用した人は、その後どのようにして健全な生態系を取り戻せばよいのだろうか?

また、何千人分もの腸内細菌叢を分析し、年齢とともにどのように変化するのかを調べた、最近の研究を目にする機会があった。腸内にどのような微生物が生息しているかを知りたいなら、便を調べるのが最も一般的な方法だろう。排便時には、大量の腸内細菌が排出されるからだ。科学者は、便にどのような種類や系統の細菌が存在しているかを調べることで、腸内に生息している微生物を推測できる。

前述の研究では、アイルランド国立大学コーク校に拠点を置く研究チームが、ヒトの便サンプル2万1000検体から事前に収集されたデータを分析した。これらのサンプルは、欧州、北米、中米、アジア、アフリカなど世界19カ国から採取されたものだ。サンプルはすべて18歳から100歳までの成人から集められた。

同研究の著者らは、特に年齢が上がった場合において、どのような要素が「良い」マイクロバイオームとなり得るのかについて、より深く理解しようとしていた。それは、微生物学者が長年抱える難問であった。一部の細菌が、ヒトの腸に有益な化合物を生成することはよく知られている。例えば、あるものは消化を助け、またあるものは炎症を抑える効果があると言われている。

しかし、生態系全体となると、話はより複雑だ。現在のところ、微生物の種類は多い方が良いというのが通説となっている。つまり、微生物の多様性が高ければ高いほど良い。また、個々人特有のマイクロバイオームにも利点があり、通常とは異なる微生物群が健康を維持する上で重要だと考える科学者もいる。

研究チームは、若者のマイクロバイオームと高齢者のマイクロバイオームを比較し、加齢とともにどのように変化する傾向にあるかを調べた。さらに研究チームは、微生物の生態系が認知機能の低下、虚弱、炎症といった不健康な老化現象の兆候に応じてどう変わるのかについても注目した。

その結果、マイクロバイオームは実際に加齢とともに変化しているようで、また、腸内の生態系は全般的に加齢とともにより独自性が増す傾向にあることがわかった。つまり、一般的な「コア」マイクロバイオームとしての特徴を失い、より個人独特のものに変化しているように見えたのだ。

しかし、このような変化は必ずしも良いこととは言えない。事実、こうした独自性は、私たちができるだけ先延ばしにしたいと考えている類の、不健康な老化や前述した老化現象の進行に関わっているようだ。また、老化という側面に関して言えば、多様性を測定するだけでは、腸内細菌が有益かどうかはあまりよく分からない。

今回の発見は、同研究チームや他の研究者らが過去に確認してきた内容を裏付けるもので、独自性を良いものとする説に異議を唱えるものとなった。別の研究チームが、こうした状況をうまい例えで言い表している。それは、「マイクロバイオームのアンナ・カレーニナの法則」と呼ばれるものだ。つまり、「幸福なマイクロバイオームはどれも似たものだが、不幸なマイクロバイオームはいずれもそれぞれに不幸なものである」ということだ。

もちろん、重要なのは、幸福なマイクロバイオームを維持するために、我々ができることは何かという点だ。そして、幸福なマイクロバイオームが実際に加齢性疾患の予防に役立つのかという点である。

全体的に見ると、果物や野菜、食物繊維を多く含む食事が腸に良いことを示す証拠はいくらでもある。数年前、ある研究により、オリーブオイル、ナッツ類、豆類、魚類、果物、野菜などを豊富に含む地中海食を12カ月間続けると、高齢者のマイクロバイオームが変化し、健康にプラスの影響を与える可能性が示された。こうした変化は、虚弱や認知機能低下の発生リスクの減少と関連があるとされている。

しかし、個人レベルでは、食生活の変化がもたらす影響を実際に確認することは不可能だ。プロバイオティクスがその良い例だ。何百万もの微生物を飲み干すことは簡単だが、それが生きたまま腸まで届いているとは限らない。仮に腸までたどり着いたとしても、既存の生態系に入り込んで住み着ける場所を作れるかどうかは不明なうえ、何らかの悪影響をもたらす可能性も考えられる。微生物生態系の種類によっては、ザワークラウトやキムチなどの発酵食品に非常によく反応するものもあれば、そうでないものもあるかもしれない。

ちなみに個人的なことだが、キムチとザワークラウトは私の大好物だ。しかし、これらの食品に体内のマイクロバイオームを改善し、加齢性疾患を予防する効果があることがわかったとしても、それはマイクロバイオームに害となるケーキに砂糖の衣を少々乗せただけに過ぎないだろう。

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ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
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