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キュービット競争から脱却、
量子コンピューティングは
23年、どこに向かうのか?
Stephanie Arnett/MITTR; Getty
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What's next for quantum computing

キュービット競争から脱却、
量子コンピューティングは
23年、どこに向かうのか?

量子コンピューティング分野における2023年は、量子ビット数の新記録を樹立する競争から脱却して、実用的なハードウェアと長期的な目標を優先する年となるだろう。 by Michael Brooks2023.01.16

量子コンピューティング分野の研究がますます国際的になるなか、2023年における同分野の進歩は、大型ハードウェアの発表によって定義づけされることは少なくなるだろう。何年にもわたる懸命な努力を結集し、相互に通信するチップを開発し、ノイズを何とかしようとすることから方向転換した研究者によって定義づけされるようになるはずだ。

世界を変えるU35イノベーター2022年版
この記事はマガジン「世界を変えるU35イノベーター2022年版」に収録されています。 マガジンの紹介

何年もの間、量子コンピューティングのニュースの見出しは、新記録を定期的に樹立するハードウェア・システムによって占められていた。グーグルとIBMの研究者は、誰が何を達成したか、さらにそれがかけられた労力に値するかどうかについて、論争を繰り広げてきた。しかし、誰が最大のプロセッサーを持っているのかと議論する時期は過ぎ去ったようだ。企業は現実世界での生活に向けて準備をしている。いつの間にか、誰もが大人のような振る舞いになっている。

熱狂から抜け出したいという研究者の思いを裏付けるかのように、IBMは2023年に、「これまで以上に多くの量子ビット(キュービット)を搭載する」というトレンドに逆らうプロセッサーの発表を予定している。量子コンピューターの処理単位であるキュービットは、超伝導回路、イオントラップ、光の量子粒子である光子など、さまざまなテクノロジーを使って構築されている。

IBMは長期間にわたって超伝導キュービットを探求してきており、年月をかけて着実に進歩を遂げ、チップに搭載できるキュービットの個数を増やしてきた。たとえば、2021年には127キュービットの量子プロセッサーを発表してこれまでの記録を更新。さらに2022年11月には、433キュービットのオスプレイ(Osprey)プロセッサーを発表し、2023年にはコンドル(Condor)という1121キュービットのプロセッサーの発表を目指している。

その一方で、IBMは2023年に、わずか133キュービットのヘロン(Helon)プロセッサーも発表する予定となっている。一歩後退のように思えるかもしれないが、同社が熱心に指摘しているように、ヘロンのキュービットは品質面で最高水準のものとなる。そしてなんといっても、ヘロンではチップを他のヘロンプロセッサーに直接つなぐことができる。単一の量子コンピューティングチップから、複数のプロセッサーをつなげて構築された「モジュール型」量子コンピューターへの移行の先駆けだ。この動きは、量子コンピューターの大幅なスケールアップに寄与することが期待されている。

ヘロンは、量子コンピューティング業界において大きな変化が起こる前触れである。最近の複数のブレークスルーや積極的なロードマップ、多額の資金提供のおかげで、ほんの数年前に多くの人が予想していた時期よりも早く、汎用量子コンピューターが登場する可能性があると指摘する専門家もいる。「全体としては、間違いなく速いペースで物事が進歩しています」と、ウォータールー大学量子コンピューティング研究所のミケーレ・モスカ副所長はいう。

専門家が進歩を期待する領域をいくつか紹介しよう。

量子コンピューターの連結

IBMのヘロン・プロジェクトは、モジュール型量子コンピューティングの世界に向けた第一歩にすぎない。チップは従来の電子技術で接続されるため、プロセッサーからプロセッサーへと移動する情報の「量子性」を維持することはできない。しかし、それらのチップが、最終的に量子対応の光ファイバーまたはマイクロ波接続によって一緒につながれることで、合わせて100万キュービットもの大規模分散型量子コンピューター実現に向けた道が開かれることが期待されている。これにより、エラー訂正された実用的な量子アルゴリズムの実行が可能になるかもしれない。「規模とコストの両面でスケーリング可能なテクノロジーが必要です。モジュール方式は鍵になります」と、IBM量子ハードウェアシステム開発の責任者を務めるジェリー・チョウ博士は話す。

他の企業も似たような実験を始めている。「つなげるということが、いきなり大きなテーマになっています」と、光子をキュービットとして使用するサイクオンタム(PsiQuantum)のピーター・シャドボルト最高科学責任者(CSO)はいう。サイクオンタムは、シリコンベースのモジュラーチップに最後の仕上げをしている。シャドボルトCSOは、チップに必要な最後のアイテムである、超高速かつ低損失の光スイッチについて、2023年末までに十分に実証されると述べている。「これにより、機能が完全なチップを手に入れることになります」。その後、倉庫規模のシステムの構築を開始し、「製造するすべてのシリコンチップを集めて、ビルのような大きさの高性能コンピューターのようなシステムを構築します」と言う。

2022年にアルファベット(グーグル)からスピンアウトした量子テクノロジー企業、サンドボックスAQ(SandboxAQ)のジャック・ヒダリー最高経営責任者(CEO)によると、プロセッサー間でキュービットを行き来させたいという欲求は、ややなおざりにされてきた量子テクノロジー …

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