トランプの税制改革案は
イノベーションを
加速させるか?
ワシントンDCで検討中の税制改革は、資金を米国に還流させようとしているが、イノベーションを促進する結果にはおそらくならないだろう。 by Peter Burrows2017.02.24
最近のワシントンDCの動きは見通しが読めないことが多いが、確実に起こりそうなことがひとつある。ロナルド・レーガンが1986年に実現して以来の大規模な税制改革の可能性が、かつてなく高まっているのだ。改革案は企業を優遇することになるのは間違いない(共和党主導の議会とホワイトハウスの両方が、法人税を概ね半額にしようとしている)が、必ずしもイノベーションを厚遇するとはいえない点に問題がある。
スタンフォード大学経営大学院のリサ・デ・シモーネ助教授は最近、この先起きそうな税制改革について、数々のテック企業と対話し「税制改革は必要だが、議論されている改革案が実際にイノベーションを促進するかどうかはまだわからない。シリコンバレーは監視の目を光らせるだろう」という。
今後数週間以内に「驚異的な」税制改革案を発表するというトランプ大統領は、昨年夏に共和党が下院で提出した全面的な改革案「ア・ベター・ウェイ」を支持すると発言している。 この改革案では、米国法人税を現行の35%から20%に削減し、輸入を不利に、輸出を有利にするため、賛否のある「国境税調整」と企業の設備投資を損金として計上する方法を提唱している。 また演説でトランプ大統領は、15%という、さらに低い法人税率を提案している。
資金力のある巨大テック企業は税制改革による恩恵を受けるが、テック産業の成長を牽引する、より小規模な企業によるイノベーションを促進すには不十分だ、と懸念する企業経営者は多い。全体として見ると、米国企業の研究開発に対する支出額は大きく、2008年から2015年にかけては毎年3.1%成長してきた。全米科学財団によれば、米国経済全体と比較すると3倍近い成長率なのだ。それでも、他の国、特に中国の研究開発費の成長率には伸び率で及ばない。ハイテク企業が一部出資している非営利のシンクタンクITIFによれば、1960年には全世界の研究開発費のうち69%を米国企業が占めていたが、現在では26%に低下している。
最も超党派的に支持されている改革は「レパトリエーション」だ。近年、米国に本社を置く多国籍テック企業が海外事業によって蓄積した資金は7000億ドルにのぼる。先進国で最も高い米国の法人税率35%(州税を加えれば平均39%)から逃れるためだ。この潤沢な企業の資金を米国に「レパトリエート(還流)」させ …
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