KADOKAWA Technology Review
×
チャットGPTはパーソナルトレーナーになるか? 実際に試してみた
Stephanie Arnett/MITTR | Pexels
人間とテクノロジー 無料会員限定
People are already using ChatGPT to create workout plans

チャットGPTはパーソナルトレーナーになるか? 実際に試してみた

オープンAIの大規模言語モデル「チャットGPT」のさまざまな用途がネット上では話題だ。中にはチャットGPTをフィットネスの計画作成に使っている人もいるが、あまり真に受けない方が良さそうだ。 by Rhiannon Williams2023.01.30

ロンドンマラソンに参加できることを知らせるメールを開いたとき、私は最高の気分になった。そして次に、恐ろしくなった。どれだけ練習に打ち込む必要があるか、分かっていたからだ。前回のマラソンからまだ6カ月しか経っていないのに、これから毎日、毎週、毎月、雨や寒さ、疲れ、イライラ、二日酔いを乗り越えて走り続けなければならない。

誰も警告してくれないことがある。それは、本番のマラソンで走るのは、簡単であるということだ。本当に苦しいのは、絶え間なく続く単調な練習である。そして、その練習を常に新鮮で面白いものに維持する方法を見つけるのが、難しいのだ。

一部の運動マニアは、その方法を見つけたと考えている。彼らは人工知能(AI)チャットボット「チャットGPT(ChatGPT)」を、パーソナルトレーナーの代わりのような役割で使っている。オープンAI(OpenAI)が生み出したこのチャットボットは、愛の詩から法的文書まで、あらゆるものを作成できる。現在、過酷なランニングをより楽しいものにするために、このチャットボットを利用しているアスリートたちがいる。起業家の中には、チャットGPTが生成するフィットネスプランをパッケージ化し、販売している者さえいる。

チャットGPTの魅力は明白だ。質問に数秒で答えてくれるので大量の情報を選別する手間が省けるし、追加的に質問することで、より詳細かつパーソナライズされた回答を得られる。そのくだけた口調はフィットネスのアドバイスを伝えるのに最適であり、情報も分かりやすく提示される。オープンAIは詳細を明かしていないものの、チャットGPTは、Webサイトやウィキペディアの項目、書籍のアーカイブをクロールして集められたデータを基に訓練されていることが分かっている。そのため、一般的な質問には、かなりうまく答えられるようだ(ただし、それらの答えが正しいという保証はない)。

では、チャットGPTは、未来のワークアウトの方法なのだろうか?それとも、ただの自信満々のうそつきなのだろうか?

うまく機能させる

チャットGPTのフィットネスメニュー作成能力をテストするため、16週間のマラソン練習計画書を書いてもらった。しかし、うまくいかないことがすぐに分かった。マラソンの適切な練習では、走る距離を毎週、徐々に増やしていく必要がある。一般的には、最長で約32キロメートル(km)まで距離を増やす必要があると言われている。チャットGPTが提案したのは、最長で約16kmだった。そんな準備不足の状態でマラソンを走ったら、どう対処すればよいのか、想像するのも恐ろしい。非常に苦しい状況に置かれ、怪我の深刻なリスクに晒されるだろう。

そこで私はチャットGPTと別の会話を始め、もう一度、頼んでみた。内容は先ほどと同じで、「16週間のマラソン練習計画書を書いてください」という依頼だ。すると、チャットGPTは、レースの前日に約30km走ることを提案してきた。これもまた、大惨事を招くことになるだろう。マラソンのスタートラインに立った時点ですでに疲れ果てており、やはり怪我を負うことになるかもしれない。

チャットGPTが同じ質問に対し、異なる2つの答えを出した理由が分からなかったので、オープンAIに聞いてみた。広報担当者は、大規模言語モデルは質問されるたびに異なる答えを生成する傾向があると話してくれた。そして、このように付け加えた。「それは、チャットGPTがデータベースではないからです。質問や問い合わせごとに新しい回答を生成しているのです」。オープンAIのWebサイトの説明によれば、チャットGPTは会話内のやり取りから学習することができるが、将来の回答を作成するために過去の会話を利用することはできないという。

チャットGPTが有害な可能性のあるアドバイスをした理由についてオープンAIにたずねたところ、広報担当者は次のように話した。「回答を読む人は、チャットGPTが研究用プレビュー版であることを念頭においていただかねばなりません。私たちは前もって、チャットGPTが時々間違った情報を生成することがあり、有害な指示や偏ったコンテンツを作成する可能性もあることを、お知らせしています」。

AIに作成してもらった計画書のうちの1つは、コーチにも確認してもらうの …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る