米エネ省副長官、「インフレ抑制法」で鉱物の中国支配に警鐘
2022年に成立したインフレ抑制法をきっかけとして、米国国内で鉱山や電池工場の新設計画が急増中だ。歓迎する声の一方で、気候変動への取り組みを遅延させる可能性も指摘され、同盟国から不満の声もある。米国エネルギー省のデイヴィッド・ターク副長官に狙いを聞いた。 by James Temple2023.03.17
最近制定された一連の包括的な法律群によって、米国では採掘事業、鉱物処理施設、電池工場の新設計画が急増しており、電気自動車(EV)やその他のクリーン・テクノロジーの急速な成長を支える国内サプライチェーンの基盤が築かれつつある。
これは意図的なものだ。2022年に制定されたインフレ抑制法(IRA:Inflation Reduction Act)では、電気自動車の税額控除を受けるにはある条件を満たす必要がある。その条件とは、搭載している電池が、米国または米国と自由貿易協定を結んでいる国で抽出・精製された鉱物を相当な割合で使用しているというものだ。電気自動車に搭載する電池を製造するには、コバルト、グラファイト(黒鉛)、リチウム、マンガン、ニッケルなどの原材料が大量に必要になる。現在では、米国はこれらの材料を諸外国、特に中国から輸入することが多い。
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BloombergNEF)によると、インフレ抑制法が通過して以来、北米では電池材料に数十億ドルを投資する発表が続いている。観測筋によれば、「国内生産要件」は、こうした計画の火付け役となり、加速装置の役割を果たしているという。しかし、どの国に加工材料を提供する資格があるのか、まだ明確になっていない。同盟国からは、米国が自国の産業に不当に有利な条件を設定していると非難する声も上がっている。
また、時間が経つにつれてあまりに厳しくなる要件は、実際にはクリーンな技術への移行を遅らせるという意図しない副作用を生む可能性があるとの懸念もある。新しい鉱山や工場を稼働させるには、最高の条件が整っていたとしても何年もかかる上、米国における大規模プロジェクトの許認可プロセスは時間がかかりすぎるとの悪名も高い。遅延の可能性に加えて、一部のコミュニティは特定の提案に対して、環境への影響や先住民の土地に関する問題を理由に反対の立場をとっている。
米国エネルギー省のデイヴィッド・ターク副長官は、MITテクノロジーレビューの取材に応じ、米国での採掘活動が復活したことの意義、サプライ・チェーンを構築することの重要性、そして付随する懸念に対して、バイデン政権がどのようにバランスを取ろうと努めているかを語った。
以下のインタビューは、発言の主旨を明確にし、長さを調整するため、編集されている。
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——米国は何十年もの間、重要な鉱物の採掘や加工を他国に委ねてきました。これらの産業を再び米国に呼び戻し、再構築することには、どのような意義があるのでしょうか? その重要性について教えてください。
これはエネルギー省だけでなく、現政権にとっても非常に大きな問題です。
テクノロジーやサプライチェーンの多くを見ると、中国が支配していることがわか …
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