最先端は「レンガ」、熱貯蔵は脱炭素の切り札になるか?
化石燃料を使って製造プロセスで使う熱を生成する重工業は、温室効果ガスを大量に排出している。クリーン電力で生成した熱を貯蔵して使うことで、化石燃料の使用を減らす試みが始まっている。 by Casey Crownhart2023.04.14
世界的にも特に大きな大気汚染源である重工業の工場において、熱を保持するレンガが再生可能エネルギーを利用するための鍵となるかもしれないと考えているスタートアップ企業がいる。
鋼鉄からベビーフードにいたるまで、製造に大量の熱を必要とする製品を作っている産業界は、現時点ではその熱の大半を天然ガスなどの化石燃料を燃やすことで生み出している。とりわけ重工業は、世界の温室効果ガス排出量の約4分の1を占めている。温室効果ガス排出量の少ない代替電力源(風力や太陽光)では、工場で製品を製造するために必要とする熱を絶えず生み出し続けることはできないからだ。
そこで、注目されているのが「ヒート・バッテリー(熱電池)」だ。積み重ねたレンガにクリーン電力によって作られた熱を取り込み、後に使用するために貯蔵しておくシステムの導入に取り組んでいる企業が増えてきている。このようなシステムの多くはシンプルな設計と市販の素材を使用し、どこでも必要な場所にすばやく構築できる可能性を持っている。米国カリフォルニア州で今年、ある実証実験が始まり、その直後に別の試験システムが稼働を始めた。これらはまだ初期段階だが、熱貯蔵システムは産業界の化石燃料からの脱却を後押しする可能性を秘めている。
未来のトースター
熱電池の今後の成功への鍵の1つは、その単純さにある。「大規模なものにしたいなら退屈で信頼性の高いものを、という意見には誰もが同意するはずです」。カリフォルニアに拠点を置く熱貯蔵スタートアップ企業、ロンド・エナジー(Rondo Energy)の最高経営責任者(CEO)であるジョン・オドネルはそう話す。
ロンド・エナジーは今年3月に、同社初の商用試験システムをカリフォルニア州のあるエタノール工場に導入した。そのシステムとは基本的に、慎重に設計されている積み重ねたレンガである。
ロンド・エナジーのシステムでは、電気が発熱体を通過し、熱へと変換される。オドネルCEOによると、これはトースターに使われているのと同じメカニズムで、はるかに大きく、温度が高くなっただけだという。変換された熱は積み重ねたレンガを通じて放射され、温度は1500 °C以上に達する場合もある。
このレンガは断熱性を持つ鋼鉄のコンテナに収納されているため、高温を数時間あるいは数日間にもわたって維持できる。閉じ込めた熱を使う時が来たら、ファンでレンガに風を吹き込む。レンガの溝を通過する空気の温度は、最大で1000 °Cに達する。
最終的に作り出された熱がどのように使われるかは各商用プロセス次第だが、おそらくは多くの施設が水を高圧蒸気に変換するために使用することになるだろうとオドネルCEOは …
- 人気の記事ランキング
-
- These AI Minecraft characters did weirdly human stuff all on their own マイクラ内に「AI文明」、 1000体のエージェントが 仕事、宗教、税制まで作った
- Promotion MITTR Emerging Technology Nite #31 MITTR主催「再考ゲーミフィケーション」開催のご案内
- The startup trying to turn the web into a database Webをデータベースに変える、新発想のLLM検索エンジン
- 3 things that didn’t make the 10 Breakthrough Technologies of 2025 list 2025年版「世界を変える10大技術」から漏れた候補3つ
- OpenAI’s new defense contract completes its military pivot オープンAIが防衛進出、「軍事利用禁止」から一転