ゲノムを改変した微生物でがん治療、マウス実験で効果を確認
私たちは周りに存在する微生物の遺伝子を改変して、病気の治療に役立てようとする研究が進んでいる。マウスによる実験では、この手法によってがん細胞の増殖を抑えられるという結果が得られた。 by Jessica Hamzelou2023.04.19
私たちの体の内部や表面には何兆もの微生物が生息している。そうした微生物を改変することで、病気の治療に役立つかもしれない。科学者はこれまで、皮膚に生息するこれらのバクテリアのいくつかについてゲノムを改変してきた。がんを予防したり治療したりできる微生物を作り出すためだ。この方法はマウスには効果があるようで、人間を対象にした臨床試験も考えられている。
「これは本当に大きなブレークスルーだと思います」。米国メリーランド州ベセスダにある国立ヒトゲノム研究所(National Human Genome Research Institute)の遺伝学者で皮膚生物学者のジュリー・セグレ博士は言う(同博士は今回の研究には関与していない)。微生物を利用してがんや他の病気を治療するというアイデアは、「マイクロバイオームの非常にエキサイティングな新しい道です」とセグレ博士は語る。
マイクロバイオームに関する研究の多くは、私たちの腸内に生息する何兆もの微生物に焦点を当てたものだ。しかし、私たちの皮膚にもまた、多数の微生物の生態系が存在している。脇の下に生息しているコミュニティと、まぶたに生息しているコミュニティとでは、まったく違って見えるかもしれない。これらの微生物が厳密に何をしているかはまだ解明されていないが、私たちの分泌物を餌として、おそらく自分でも有益な分泌物を作り出し、私たちを感染症から守ってくれているようである。
微生物は免疫系の働きにも影響を与えるようだ。ますます多くの研究で、感染症や腫瘍、あるいはより害の少ないものであっても人間に害を及ぼす可能性のあるものに対して、私たちの体の内部や表面に生息する微生物が免疫反応を増幅させたり、低下させたりできることが示されている。
動物の皮膚に微生物を導入するだけでも、痛みや発熱、吐き気といった通常の感染症の兆候を引き起こすものではないにせよ、免疫反応は起こる。これはいささか驚くべきことだと、スタンフォード大学のマイケル・フィシュバッハ准教授は語る。これらの微生物はたいていの …
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