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狙うは100mの世界記録、短距離走向けロボット外骨格が登場
Assistive and Rehabilitation Robotics Lab at Chung-Ang University
This robotic exoskeleton can help runners sprint faster

狙うは100mの世界記録、短距離走向けロボット外骨格が登場

短距離を全力で走るランナーをさらに速く走らせるように支援するロボット外骨格が登場した。装着したランナーを100m走の世界記録よりも速く走らせることが目標だという。 by Rhiannon Williams2023.10.06

ウェアラブル外骨格は、ランナーの歩数を増やし、短距離をより速く走れるようにする。

これまでの研究では、ウェアラブル外骨格がランニング中のエネルギー消費をどのように抑えられるかに焦点が当てられてきた。だが、サイエンス・ロボティクス誌に9月27日に発表された新しい研究では、ウェアラブル外骨格が短距離を全力で走るランナーをどのように支援できるかが検証されている。

新しい外骨格スーツは、スピードアップを目指すアスリートがトレーニング中に使う有用なツールになる可能性がある。「これは予備的な研究ですが、外骨格スーツは人間の走る能力を増強できると言えます」。今回の研究を率いた韓国ソウルにある中央大学校のイ・ギウク准教授は話す。

イ准教授の研究チームは、ランナーの大腿部に電気モーターで動く鉄のケーブルを取り付けた軽量の外骨格スーツを開発した。モーターがケーブルを引っ張り、筋肉が収縮するように動く。この外骨格スーツは、股関節の伸展(ランナーを前進させる力強い動き)を補助することで、ランナーがより速く走るのをサポートする。

外骨格スーツは、両大腿部にあるセンサーで着用者の下半身の動きをリアルタイムで追跡する。このデータは、ランナーの足取りを追跡するアルゴリズムに送られ、他のアルゴリズムと連動して一人ひとりのランナーそれぞれの走り方やスピードを追跡する。

同研究チームは、エリートアスリートではない9人の若い男性ランナーを対象に、外骨格スーツをテストした。ランナーは外骨格スーツがどのように機能するかについて3分間のトレーニングを受けた後、着用感に慣れるため、トレッドミルで短時間ランニングした。

その後、屋外で200メートルの直線を2回(1回は外骨格スーツを着用して、1回は着用せずに)全力で走った。2回のテストの間は最低30分間の休息をとった。

参加者は外骨格スーツを着用しているときの方が、着用していないときよりも平均して0.97秒速く走ることができた。

研究チームは、ランナーが200メートルを走り切るのにかかる時間が短いほど、歩数が多いということに気づいた。このことは、外骨格スーツがランナーの歩数を増やすことによって、スプリント時間の短縮に役立っている可能性を示している。

この発見に後押しされた研究チームは、野心的な目標を掲げた。引退した韓国の元エリートランナー、オ・ギョンスのためにカスタマイズした外骨格スーツを開発し、100メートル走の世界記録更新を目指すというものだ。現在の男子世界記録は、ジャマイカのウサイン・ボルトが2009年に樹立した9秒58だ。

研究チームはまた、障害者ランナーと協力し、補助的な外骨格スーツが有益かどうかの検証も始めている。

ロンドン大学クイーンメアリー校の先端ロボット工学センターで所長を務めるカスパー・アルトホーファー(この研究には参加していない)は、「彼らは偉大な業績を成し遂げました」と述べた。アルトホーファー所長は、この外骨格スーツがより短距離のスプリントにどのように役立つのかに興味があるという。

「世界記録保持者を100メートル走で0.68秒速く走らせることができれば、それは大きな成果だと思います」と付け加えた。

しかし、このような外骨格スーツを着用してトレーニングをしても、支援テクノロジーの着用が認められていないレースでアスリートがより速く走れるようにはならないだろう。スーツは着用者が足を速く動かすことを促すが、筋肉をより強くする助けにはならない、とアルトホーファー所長は述べた。また、外骨格スーツに過度に依存すると、理論上、ランナーは時間とともに弱くなる可能性があるとも指摘した。

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リアノン・ウィリアムズ [Rhiannon Williams]米国版 ニュース担当記者
米国版ニュースレター「ザ・ダウンロード(The Download)」の執筆を担当。MITテクノロジーレビュー入社以前は、英国「i (アイ)」紙のテクノロジー特派員、テレグラフ紙のテクノロジー担当記者を務めた。2021年には英国ジャーナリズム賞の最終選考に残ったほか、専門家としてBBCにも定期的に出演している。
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