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行政のデジタルサービスはなぜ失敗するのか? ボストンに学ぶ処方箋
Stephanie Arnett/MITTR | Getty, Envato
How to make government technology better

行政のデジタルサービスはなぜ失敗するのか? ボストンに学ぶ処方箋

免許の更新、住宅手当の申請、道路のくぼみの修理依頼——政府とのオンラインのやり取りがこれほど不便なのはなぜか。答えはよく言われるよりもはるかに複雑だが、ボストン市の取り組みにヒントがある。 by Tate Ryan-Mosley2023.11.10

先週、私はこの1年の大半を費やして取材した、政府とテクノロジーに関する記事を公開した。きっと読者のみなさんも共感してくれるものと思っている。

これまでにオンラインで政府のフォームに入力しようとした時、何の問題にも遭遇したことがないという人はいないのではないだろうか?あるいは免許の更新など、「この基本的な市民活動をオンラインで簡単に済ませることができないのはなぜだろうか?」と思ったこともあるのではないだろうか。そして近所にできたくぼみを埋めるためにデジタル・リクエストを送信できる(そして実際にそのくぼみが埋められる)世界を想像できるだろうか?

政府機関とのオンライン上のやり取りが著しく非効率なケースは、あまりにも多い。それと同時に、危険で目を丸くしてしまうようなテクノソリューショニスト的思考が横行している例もある。世界は今、大きな政策措置を切実に求めており、新たなテクノロジーとデータによって実現する機会がたくさんあることを考えると、これはいっそうもどかしい。しかし米国政府は、少なくとも今はその局面に応えられていない。

そこで私は、テクノロジーと政府の関係がなぜこれほどまでに壊れているのかを理解しようとして、これらの質問に答えるために何カ月も費やしたのだ。
そう、その答えはよく言われているよりもはるかに複雑なのだ。ここでは、すべての理由についての説明は省略する。全国のトップレベルの政府技術者から私が学んだことについては、こちらの記事を読んでほしい。

この記事では、私は主にニューヨーク市に焦点を当てることにした。ニューヨーク市が、あなたが予想もできないような方法で、これらの課題に取り組んでいるからだ。しかし、テクノロジーをうまく活用している自治体の例として、記事の中でもう1カ所の名前が何度も登場している。マサチューセッツ州、特にボストン市である。

その理由を理解するには、少し話を戻す必要がある。私が話を聞いた専門家のほとんどは、同じような話をしてくれた。彼らによれば、歴史的に現場レベルで政策を施行する責任を負う政府職員には、国民が実際にこれらの政策とどのように関わるのかを形作る権限が与えられていないということだ。例えば、私たちに手頃な価格の住宅を提供する責任を負う機関が、必ずしも登録手続きの仕組みを決定する権限を持っているとは限らないのである。ユーザー中心のテクノロジーの時代では、この境界線は破滅的なものになりかねない。

ボストン市の最高情報責任者であるサンティアゴ・ガーセスは、「グーグルやアップルなどは製品を開発する際、顧客からのフィードバックを受けて製品を変更するための、非常に密接で緊密なチャンネルを持っています」と語った。「政府の場合、製品やサービスの多くは法制化されています。そして議員は確かにフィードバックを受け取ります。たとえばパブリック・コメントなどです。しかし実際には、フィードバックによってその規制が更新されることは非常にまれなのです」。

しかしボストン市には、実際にデジタル・サービスに関して、ユーザー・エクスペリエンスの研究と人間中心の設計を優先し、政策立案にフィードバックを組み込む方法を見出してきた長い歴史がある。

このことが実現できたのは、少なくとも部分的には、ボストン市が、非営利組織の「コード・フォー・アメリカ(Code for America)」の創設者であり、また素晴らしい本「Recoding America」の著者でもあるジェニファー・パルカが筆者に語ってくれたものと同様の組織的アプローチを採用しているためと言える。パルカによれば、政府のテクノロジーは、政策を決定できる組織内のプロダクト・マネージャーが運営しているという。

「最も成功した法案のいくつかは、有権者とのより緊密なフィードバック・ループを実現するための、最大の能力を発揮できるプログラムやサービスに権限を与えるものです」とガーセスは語った。

ガーセスの話によれば、ボストン市は最近国内初の最高プロダクト責任者を採用し、議員と連携して働くプロダクト・マネージャーとUXデザイナーのチームを構築しているとのことだ。要するに、実際に政策を実行する人たちがテクノロジーを形作ることができれば、より良い結果を得られるということである。

マサチューセッツ州IT部門でユーザー・エクスペリエンス・デザイナーフェローとして働いていたハーラン・ウェバーは、数年前にマサチューセッツ州共通住宅アプリケーションプログラム(CHAMP:Common Housing Application for Massachusetts Program)に取り組んでいたときのことを私に話してくれた。ウェバーによれば、「住宅当局の大勢の職員や、このプログラムを使わなければならない政府職員のもとに足を運んで調査を行った」とのことである。その後、そのフィードバックを活かしてポータルを形成し、最終的に住民が単一の合理化されたオンライン・システムで住宅手当を申請できるようになったとウェバーは話している。

「Code for Boston」の創設者でもあるウェバーによれば、ボストンには「もともと備わった多くの利点がある」とのことだ。「そして、私たちはそれらの利点を生かすために懸命に努力してきたのです」とウェバーは語っている。

またウェバーは、マサチューセッツ州は教育水準が高く資源が豊富な州であり、「州政府は問題の一部ではなく、解決策の一部になり得ると信じている」と語る。また、ボストンは多くのテック企業やテック分野の研究者の拠点となっており、政府の中枢に近いところに集まっていることも後押ししている。これにより、ボストン市は内部に人材プールを構築できたのだ。

最後に、ボストン市にはデジタル・サービスを優先する文化が確立されている。市長室は、米国で最初の政府イノベーション・ラボの1つを設立し、ボストン市は最高デジタル責任者(CDO)「Code for America」のフェローを持つ最初の都市の1つとなった

とはいえ、マサチューセッツ州のデジタル・サービスは完璧とは程遠いのが実情である(実際、最近の調査で、CHAMPと手頃な価格の住宅に関する重大な問題が明らかにされている)。そして私の記事で示しているように、政府とテクノロジーとの壊れた関係を修復できる特効薬はまったく存在しないのだ。これは、非常に厄介な問題だ。しかし、政府がデジタル・サービスの改善に早急に取り組むことは極めて重要であり、私たちの民主主義はそれにかかっている。

私は、中核的な政府サービスについてパルカから聞いたことについてずっと考えていた。「米国民が、政府は成果を挙げることができないと見た場合、国民はどちらか一方の政党に偏るよりも、政府から完全に遠ざかってしまうと思っています」。

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テイト・ライアン・モズリー [Tate Ryan-Mosley]米国版 テック政策担当上級記者
新しいテクノロジーが政治機構、人権、世界の民主主義国家の健全性に与える影響について取材するほか、ポッドキャストやデータ・ジャーナリズムのプロジェクトにも多く参加している。記者になる以前は、MITテクノロジーレビューの研究員としてニュース・ルームで特別調査プロジェクトを担当した。 前職は大企業の新興技術戦略に関するコンサルタント。2012年には、ケロッグ国際問題研究所のフェローとして、紛争と戦後復興を専門に研究していた。
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