95%が未解明の「深海」へ
低コストの自律ロボットが
地球資源の地図を描き始めた
地球の海底の95%以上はいまだ詳細な探査が行われていない。その未知の領域に眠る銅やコバルトなどの重要鉱物をめぐり、科学者と企業の関心が高まっている。WHOIのスピンオフ企業オルフェウス・オーシャンは、従来より低コストで水深6000mに到達できる自律潜水機で、その地図を描こうとしている。 by Hannah Richter2026.05.07
- この記事の3つのポイント
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- WHOIスピンオフのオルフェウス社が従来比10分の1以下のコストで深海6000mに対応するAUVを開発し、NOAAと太平洋探査ミッションを開始した
- 小型・低コスト・ホッピング着底という独自設計により、堆積物コア採取と高解像度マッピングを単機で実現し、深海科学の民主化を促す可能性がある
- 深海採掘を加速するトランプ政権の動きと科学者の慎重論が交錯する中、詳細な海底データの蓄積が規制基準の設計を左右する鍵となる
オーストラリアと南米のちょうど中間に位置する海域で、米国海洋大気庁(NOAA)の調査船「レーニア(Rainier)」が現在、重要鉱物資源の探索を目的として、太平洋の8000平方海里(約2万7000平方キロメートル)以上をマッピングするミッションに取り組んでいる。しかし、その作業は単独では実施されない。今週から1カ月間、このプロジェクトの特別エージェントとして2機の細長い蛍光色の潜水機が投入され、海底近くの水深約6000メートルまで潜航してホッピング探査を実施する予定だ。
潜水機を製造したのは、新興企業のオルフェウス・オーシャン(Orpheus Ocean)。微小な微生物からワームや巻き貝に至るまで多様な生物が生息し、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなど、世界中のテクノロジーに不可欠な金属の卵大の「ノジュール(団塊)」が点在する軟質な海底基質を探索することに特化して設計されている。
科学者や企業は長年にわたり深海を調査し、こうした資源を地上に持ち帰ろうとしてきた。2024年にウッズホール海洋研究所(WHOI)からスピンオフしたオルフェウスは、その可能性を大幅にコスト効率よく実現できる立場にある。オルフェウスは「安価に深海へ」というシンプルな哲学のもとで機体を設計している、と化学者出身の同社共同創業者兼CEO、ジェイク・ラッセルは語る。従来は費用が500万〜1000万ドルかかるのに対して、オルフェウスの機体1台の製造コストは数十万ドル程度。多くの自律無人潜水機とは異なり、海底に潜り込んで堆積物のコアサンプルとその中に生息する生物を採取することが可能だ。
オルフェウスのエンジニアたちは、長年にわたって深海向け設計の改良を重ねてきた。その多くはWHOIで実施され、NOAAおよび米国航空宇宙局(NASA)との共同研究として進められてきた。プロトタイプ機は最深部であるマリアナ海溝の1万1000メートルまでの潜航能力を持つと評価されている。これまでに2件の商業展開を完了しているが、今回の新たな遠征は最大の試練となる。数週間にわたり広範囲で、複数の計測機器を同時稼働させながら運用するためだ。海上の母船レーニアを拠点に、機体は1回につき約10キロメートル航行し、毎秒1枚の高解像度画像を撮影しながら、最大8点の海底サンプルを採取する。
試験がうまくいけば、この機体は、未解明の深海とそこに存在する資源を調査しようとする政府機関・科学者・企業にとって有力なツールとなる可能性がある。市場に出回っている唯一の選択肢ではないものの、オルフェウスはその小型性と低い製造コストにより、近い将来、最も利用しやすい選択肢の1つになるかもしれない。
現状では、これほどの深度に到達するためには、科学者たちは政府機関や研究機関が保有する、限られた高価な潜水機の利用機会を待たなければならない。そのような状況では、深海の相互に連関した生態系や生物地球化学的システムを詳細に調査するよりも、断片的なスナップショットを取得する調査に偏りがちだ。「私たちが調査しているこの海域の多くは(中略)、これまで詳細に探査されたことがほとんどありません」とラッセルCEOは言う。「私たちが目にするものはすべて、NOAAにとっても科学にとっても新発見になるでしょう」。
堆積物採取の専門家
オルフェウスの潜水機は、自律型無 …
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