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The Greenest Job in the Executive Suite IKEA、ナイキが
本気で気候変動対策する理由

気候変動に対処する専門の役員を置く企業は、クリーンエネルギーや再生可能エネルギーをビジネスチャンスとみなしている。 by Elizabeth Woyke2016.05.23

パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー (PG&E) はカリフォルニア北部と中央部の約11万平方キロメートル に渡る地域に電力を供給しているが、この地域は暴風雨に関連する洪水、海面上昇、山火事の被害を受けやすい。サンフランシスコに本社があるPG&Eには、気候変動による危険を監視する生物学、水文学、気象学の専門スタッフがいる。メリッサ・ラビンソンCSO(最高サステナビリティ責任者)もそのひとりだ。

ラビンソンCSOは、気候変動に関する会社の取り組みの総責任者で、計画を事業戦略に統合することに尽力している。2015年4月に米国エネルギー省が、気候変動に対する脆弱度を測定するようPG&Eに求めた際、ラビンソンCSOのチームは科学部、業務部、緊急対策業務部などの社内各所に意見を求めた。報告書は、PG&Eが2014年からしていた調査に基づいており、気候変動によるPG&Eの損失の可能性について、洪水、猛暑、日照りなどの6つのリスクを詳述している。

調査は継続中だが、会社の対応策を練るため、過酷な気象の被害を被りやすいガス、変電所を含む電気の施設が特定されることをPG&Eは期待している。

インフラ設備への脅威、供給網の混乱、社会意識の高い投資家や消費者グループからの圧力など、理由はさまざまだが、多くの産業で、企業は気候変動の影響に敏感になっている。自動車、エネルギー、食料や農業、保険などの分野の大企業には、社内に気候の専門家を置く場合もあるが、ほとんどの企業は、気候変動の問題は会社のサステナビリティ部門が対処すると考えている。

長年の間、CSOは主に慈善的な、または地域社会への奉仕を扱う、形だけのリーダーと見られていた。しかし米国では2011年と2012年にハリケーンや津波の被害が相次いだ後、環境意識の高い投資家の注文や政府から新たな命令を受けた企業にとって、「お飾り」ではないCSOの選出が重要になった、とワシントンに本部のあるACCO(気候変動担当者協会)のダニエル・クリーガー・エグゼクティブディレクターはいう。また、サスネナビリティ専門の人材斡旋会社ワインレブ・グループ(本社サンフランシスコ)のエレン・ワインレブ代表は、「以前、CSOは会社に20年間務めた人が、退職するまでの最後に就く職だったんです。ところが最近は、サステナビリティの特定分野に経験のある人材を外部から招聘したがるようになりました」

15億ユーロ
IKEAが2009年から風力や太陽光に投資した額

大手企業のCSOには、環境科学の修士号や博士号を持つ人もいるし、前職が環境対策部門だったり、米国環境保護庁や農務省で働いていた人もいる。PG&EのラビンソンCSOは、環境コンサルティング出身だ。キュリイーグ・グリーン・マウンテンのモニーク・オクセンダーCSOは、フォード自動車などのメーカーが使った炭素、水、原材料の影響を調べ、減少させるプログラムを開発した経験がある。IKEAグループのスティーブ・ハワードCSOは、環境物理学の博士号を持ち、NPO団体クライメイト・グループを運営した後、IKEAに入社した。

ほとんどのCSOは、財政の長期計画に合わせて、5年ごとの計画を立てるが、設定される目標は挑戦的かつ現実的になりがちだ。一方IKEAのハワードCSOは、ほとんどの場合、目標を「100パーセント」に設定するのが「明確で、社員の秘められたエネルギーを解放させるから」最善だとする持説のとおり、かなり強気の目標を掲げた。たとえばIKEAは2012年、2020年までに再生可能資源で自社が消費するエネルギーと同量のエネルギーを生産する、と発表した。この誓約を守るには、IKEAがすでに2009年から風力や太陽光に投じてきた15億ユーロに加えて、風力発電設備や店舗や流通センターの屋上に設置する太陽光発電装置など、数百万ドルを投資する必要がある。

IKEAは、2012年のハリケーン・サンディのような過酷な天候は、クリーンエネルギー計画の「正当性を立証する」としている。気候変動が業務を妨害する証拠であり、企業が積極的に脱炭素に取り組む動機になるからだ。IKEAは、サンディによる停電や洪水で、米国東海岸の9店舗が一時的に閉鎖に追い込まれ、900万ドルの損失が出たと見積もっている。

気候変動は、IKEAの原材料確保にも影響を及ぼす。たとえば、IKEAがコットンの21%を仕入れているパキスタンでは、近年、洪水でしばしば綿の収穫に被害が出ている。IKEAは家具、寝具、タオル、ラグマットなどを製造するのに、莫大な量の天然資源を使う。その量は世界中の木材の1%、綿供給量の約1%に及ぶ。原材料は、しばしば環境に負荷をかける方法で収穫・加工されるため、森林破壊やその他の環境問題につながる可能性がある。そこで2015年の8月から、IKEAはすべてのコットンと木材の半分を、ベター・コットン・イニシアチブや森林管理協議会(Forest Stewardship Council)といった非営利団体が認定したリサイクル業者や供給業者から仕入れている。計算ではIKEAの二酸化炭素排出量の3分の1は、IKEAで購入した電化製品を消費者が使用した際のエネルギーによって発生しているため、IKEAは省エネ型の製品の開発にも取り組んでいる。昨年8月からは、IKEAの店舗でエネルギー効率の高いLED照明のみを置くようになった。

IKEAのLED構想は、企業が気候変動を単なる脅威や損失と見るよりも、製品を革新するチャンスだと考える最近の風潮の表われだ。ナイキのハンナ・ジョーンズCSOは、会社が水などの希少資源に依存せずに済む方法を模索している。アパレル産業では、布を染めるのに毎年5.8兆リットルもの水を使っているが、推定10〜20%の使用済み染料は、適切に廃棄されないと公害を引き起こす可能性がある。

114億リットル
Nikeが2011年にコットンやポリエステルの加工、染色、仕上げに使った水の量

2011年、ナイキは衣料品用のコットンやポリエステルの加工、染色、仕上げなどに1年で約114億リットルの水を消費したと発表した。2013年にナイキは、オランダの新興企業が開発した技術を採用し、水の代わりに、超臨界二酸化炭素(高温、高圧力下で流体になる)で繊維を染めることにした。さらにジョーンズCSOのチームは、コットンに代わる素材を探している。コットンの栽培には大量の水を使うからだ。

IKEAの最高幹部は9人おり、ハワードCSOは同社のピーター・アグネフィオールCSOとも定期会議がある。

「CSOは会社のあらゆる会議に参加する必要があり、通常業務を担当する部署責任者である同僚とも、対等な立場なのです」

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エリザベス ウォイキ [Elizabeth Woyke]米国版 ビジネス担当編集者
ナネット・バーンズと一緒にMIT Technology Reviewのビジネスレポートの管理、執筆、編集をしています。ビジネス分野ではさまざまな動きがありますが、特に関心があるのは無線通信とIoT、革新的なスタートアップとそのマネタイズ戦略、製造業の将来です。アジア版タイム誌からキャリアを重ねて、ビジネスウィーク誌とフォーブス誌にも在籍していました。最近では、共著でオライリーメディアから日雇い労働市場に関するeブックを出したり、単著でも『スマートフォン産業の解剖』を2014年に執筆しました。
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