期待先行のAIエージェント、誇大宣伝で「バブル崩壊」のリスク
AIエージェント技術には膨大な可能性がある。だが、用語に対する明確な定義もなく、現実とのギャップも大きい。誇大宣伝が先行すれば、過去の多くの技術トレンドと同様に、ユーザーの失望を招くことになるだろう。 by Yoav Shoham2025.07.09
- この記事の3つのポイント
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- 「エージェント」の定義が曖昧で、企業が基本的な自動化を高度なAIとして誇大宣伝
- LLMベースのエージェントは予測不可能で、企業環境では重大な損害を生む可能性
- エージェント間協働には技術的・商業的課題が山積み、解決には慎重な設計が不可欠
グーグルが最近発表した「新しいクラスのエージェント体験」と呼ぶものは、転換点のように感じられる。例えば、5月のイベント「グーグル I/O 2025」において、同社は単に質問に答えるだけでなく、最小限の人間の誘導で自転車修理の作業を手伝うデジタル・アシスタントを披露した。このデジタル・アシスタントは、適合するユーザーマニュアルを見つけ、ユーチューブ(YouTube)のチュートリアルを探し、さらには部品について地元の店舗に電話をかけてさえくれる。このような機能は、まもなくグーグルのエコシステムをはるかに超えて拡張される可能性がある。同社はさらに、異なる企業のエージェント同士が互いに会話し、協力して作業することを目指す「エージェント・ツー・エージェント(Agent-to-Agent:A2A)」と呼ばれるオープン標準を導入した。
そのビジョンは刺激的である。デジタル同僚のように行動し、飛行機を予約し、会議の予定を変更し、経費を処理し、物事を成し遂げるために舞台裏で互いに話し合うインテリジェント・ソフトウェア・エージェントである。しかし、注意を怠ると、実際の利益をもたらす機会を得る前に、このアイデア全体を脱線させてしまうことになるだろう。多くの技術トレンドと同様に、誇大宣伝が現実を上回るリスクがある。そして期待が手に負えなくなると、反発が起こるのもそう遠くない。
まず「エージェント」という用語自体から始めよう。現在、この用語は単純なスクリプトから高度な人工知能(AI)ワークフローまで、あらゆるものに安易に用いられている。共通の定義が存在しないため、企業が基本的な自動化を、はるかに高度なものとして売り込む余地が十分に残されている。このような「エージェント・ウォッシング(日本版注:エージェント機能を持つかのように既存製品のブランドを再構築すること)」は顧客を混乱させるだけでなく、失望を招く。必ずしも厳格な標準が必要というわけではない。しかし、これらのシステムが何をすることになっているのか、どの程度自律的に動作するのか、どの程度確実に機能するのかについて、より明確な期待を持つ必要がある。
次の大きな課題は、信頼性である。今日のエージェントの大部分は大規模言語モデル(LLM)によって動作しており、確率的な応答を生成する。これらのシステムは強力であるが、予測不可能でもある。特に、複数ステップのタスクを完了し、外部ツールを取り込み、LLM応答を連鎖させるよう求められた場合、作り話をし …
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