KADOKAWA Technology Review
×
3/9無料開催!新規事業のアイデア創出から実証まで考える【新規事業担当者】向けイベント
現実味を帯びて来た寿命延長の野望、ブレークスルーも間近か?
Chris Labrooy
How the sometimes-weird world of lifespan extension is gaining influence

現実味を帯びて来た寿命延長の野望、ブレークスルーも間近か?

死を「悪」とみなし、若返りや不死を目指す長寿愛好家たちは、はたから見ると荒唐無稽なことをしているように思える。だが、そのムーブメントは確実に市民権を得つつあり、権力者たちの支援で画期的な進歩を遂げる様相すら呈してきた。 by Jessica Hamzelou2026.02.05

この記事の3つのポイント
  1. 長寿愛好家らが「バイタリズム」という新哲学を確立し、老化治療の研究推進と政策変更を目指す運動を展開している
  2. トランプ政権で長寿支持者が要職に就任し、連邦機関も寿命延長研究への資金提供を強化する体制が整いつつある
  3. 長寿クリニック増加や政治的支援拡大により、この分野が画期的な医学進歩を実現する可能性が高まっている
summarized by Claude 3

ここ数年間、私は死を人類の「根本的な問題」だと考える人々のグループの進歩を追ってきた。簡単に言えば、彼らは、すべての人にとって死は悪いことであり、道徳的に悪であるとさえ言っている。

彼らは新しい哲学だと考えるものを確立し、それを「バイタリズム(Vitalism)」と呼んだ

しかし、バイタリズムは哲学以上のものである。それは老化を遅らせたり逆転させたりする治療法の発見において、真の進歩を遂げたいと考える筋金入りの長寿愛好家たちの運動である。科学的進歩だけでなく、影響力のある人々に彼らの運動を支持するよう説得し、実験的薬物へのアクセスを開放するために法律や政策を変えることもいとわない。

そして彼らは進歩を遂げ始めている。

バイタリズムは、アダム・グリースとネイサン・チェンによって設立された。人間の寿命を延ばす方法を見つけたいという共通の願望で結ばれた2人の男性である。私が初めてチェンの講演を聴いたのは2023年、生命延長やその他の技術に興味を持つ人々のためのモンテネグロの「ポップアップシティ」(期間限定で出現した街)、ズザルでのことだった。それは興味深い体験であった(詳細はこちらで読むことができる)。

ズザルは、グリースとチェンが正式にバイタリズムを立ち上げた場所だった。しかし私は2022年から長寿シーンを密接に追ってきた。その旅の過程で私は、スイス、ホンジュラス、そして同じ志を持つ長寿愛好家たちが生命延長の夢を共有するカリフォルニア州バークレーの施設を訪れた。

私はワシントンDCにも行った。そこでは2025年に、寿命延長の支持者たちが、現在メディケア・メディケイド・サービスセンター(米保健福祉省傘下の公的保険機関)のセンター長であるメフメット・オズを含む政治家たちに、法律や政策の変更を求める主張を提示した。

この旅は魅力的で、時には奇妙で、さらには超現実的でさえあった。私は脚が煙を上げることで終わったバイオハッキングの話を聞いた。ある男性とその生涯を通じて持った複数の妻たちの冷凍保存、そしてその後の蘇生によって可能になるかもしれない多重パートナー関係について聞かされた。自分を優生学者だと考え、親は長寿の傾向を持つIVF胚を選択すべきだと信じていると面と向かって言われたこともある。

私は高級ホテルのレストランで夕食中に人々が生物学的年齢を測定するために採血するのを見た。人間の意識を保存し、機械の中でそれを復活させる野心的な計画を聞いた。勃起不全を治療し、最終的に「根本的長寿」を達成するために、男性の陰茎に実験的遺伝子治療薬を複数回注射する計画について話してくれた人たちもいる。

私は怒鳴られ、法的措置をとると脅された。裸足で大地を歩いた。あるインタビュー対象者は私にボトックス注射・注入をするように言った。まさにジェットコースターのような体験だった。

取材ではまた、長寿への現在の関心がソーシャルメディアのインフルエンサーやウェルネスセンターを超えて広がっていることを実感した。長寿クリニックの数は増加しており、より長く、あるいは永遠に生きることについてのドキュメンタリーが大量に制作されている。

同時に、州法、巨額の連邦予算、さらには国家保健政策に影響を与える権力者たちが、老化を遅らせたり逆転させたりする治療法の研究を優先している。長寿科学の長年の支持者であるジム・オニールが2025年に保健福祉省(HHS)の副長官に任命されたとき、長寿コミュニティは歓喜した。オズを含むトランプ政権の他のメンバーも長寿について語っている。「今の政権は、米国史上最も長寿を支持しているようです」とグリースは私に語った。

私は最近、保健高等研究計画局(ARPA-H)の新局長アリシア・ジャクソンと話した。2022年にジョー・バイデン大統領の下で設立されたこの機関は、「画期的な」生物医学研究に資金を提供している。そして長寿に新たな焦点を当てているようだ。ジャクソンは以前、「すべての女性の健康と長寿」に焦点を当てた企業、エバーナウ(Evernow)を創業し、率いていた。

「多くの興味深い技術がありますが、それらはすべて同じことに帰結します。私たちは寿命を延ばすことができるでしょうか?」とジャクソン局長は数週間前、ズーム(Zoom)通話で私に語った。そして、保健高等研究計画局が「保健福祉省の最上層部」から「信じられないほどの支援」を受けていると付け加えた。私がジム・オニール副長官のことを指しているのかと尋ねると、「はい」と答えたが、具体的なことは語ろうとしなかった。

グリースは正しい。長寿治療の進歩に対する多くの支援があり、その一部は権力のある地位にいる影響力のある人々からのものだ。おそらくこの分野は、本当に画期的な進歩を遂げる準備ができているのだろう。

そして、そのことが、時折感じる奇妙さにもかかわらず、私がこの分野に非常に興味を抱いている理由である。

人気の記事ランキング
  1. Promotion Emerging Technology Nite #36 Special 【3/9開催】2026年版「新規事業の発想と作り方」開催のお知らせ
ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
AI革命の真実 誇大宣伝の先にあるもの

AIは人間の知能を再現する。AIは病気を根絶する。AIは人類史上、最大にして最も重要な発明だ——。こうした言葉を、あなたも何度となく耳にしてきたはずだ。しかし、その多くは、おそらく真実ではない。現在地を見極め、AIが本当に可能にするものは何かを問い、次に進むべき道を探る。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る