茶葉からアルゴリズムへ——「予測」という権力装置を解剖する3冊
未来を予測したいという欲求は人間の本質だ。だが今日、その営みはアルゴリズムに委ねられ、仮釈放から就職、広告表示まで、人生のあらゆる局面を機械が左右している。3冊の新刊が共通して指摘するのは、予測とは結局のところ権力と統制の問題だということだ。 by Bryan Gardiner2026.03.02
- この記事の3つのポイント
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- 人間は根本的に予測する存在だが、現在は利益追求企業によるアルゴリズム予測が生活の全側面を支配し、偏見の固定化や思考力低下を招いている
- 戦後の数学的合理性信仰により、人間の直感や判断が統計的予測に置き換えられ、あらゆる決定がコスト・ベネフィット分析に還元される社会が形成された
- 予測は自己実現する「願望」であり権力の道具でもあるため、テクノロジー決定論に抗い人間的な選択を取り戻すことが重要である
人間であることは、根本的に予測する存在であるということだ。時には、かなり優れた予測者でもある。過去の経験というレンズを通してであれ、因果関係の論理を通してであれ、未来を見通そうとする試みは、私たちが狩りをし、狩られることを避け、作物を植え、社会的絆を築き、そして総じて私たちの生存を優先しない世界で生き延びるうえで役立ってきた。実際、占いの道具が何世紀にもわたって茶葉からデータセットへと変化してきた中で、未来は知ることができる(したがって制御できる)という私たちの確信は、いっそう強まってきたのである。
今日、私たちはあまりにも広大で容赦のない予測の海の中にいるため、その存在をほとんど意識していない。私がいまこの文章を書いている間にも、どこか遠隔地のサーバー上では、すでに入力した単語に基づいて次の単語を推測しようとするアルゴリズムが稼働している。もしあなたがこれをオンラインで読んでいるなら、別の一連のアルゴリズムが、あなたが最もクリックする可能性が高いと判断した広告をすでに表示しているだろう(この記事を紙で読んでいる熱心な読者の皆さん、おめでとう。あなたはアルゴリズムから逃れている……今のところは)。
では、こうした事態はどのようにして生じたのだろうか。信頼できる予測を求める人々の欲求は理解できる。それでも、自分の人生のあらゆる側面を仲介する遍在的なアルゴリズムの神託に、進んで申し込んだ人はいない。3冊の新刊書が、未来志向のこの世界を理解しようと試みている。私たちはどのようにしてここに至ったのか、そしてこの変化は何を意味するのか。それぞれがこの新しい現実を乗りこなすための独自の処方箋を提示しているが、いずれもある一点で一致している。すなわち、予測とは最終的に権力と統制の問題であるということだ。
『The Means of Prediction: How AI Really Works (and Who Benefits(予測の手段:AIの実際の仕組み(そして誰が利益を得るか)』(未邦訳)において、オックスフォード大学の経済学者マクシミリアン・ケイシーは、私たちの生活における予測の大部分が、大規模でラベル付けされたデータセットのパターンの統計的分析に基づいていることを説明している。人工知能(AI)の分野では教師あり学習と呼ばれる手法だ。そのようなデータセットで「訓練」されるた教師あり学習アルゴリズムは、新たな情報を与えられると、特定の将来結果について最良の推定を提示することができる。あなたは仮釈放に違反するか、住宅ローンを完済するか、雇用されれば昇進するか、大学の試験で良い成績を収めるか、爆撃される時に自宅にいるか? ますます私たちの人生は、こうした問いに対する機械の答えによって形づくられている(そして、時に短縮さえされている)。
利益を追求する企業群によってあなたの人生に接ぎ木された遍在的でほとんど不可視の予測レイヤーという構図は、より残酷で、より味気なく、より道具化された世界へと私たちを導いている。そこでは人生の可能性が閉ざされ、古くからの偏見が固定化され、誰もが思考力を徐々に失っていくかのように見える。ケイシーによれば、これは完全に予測可能な帰結である。
AI支持者は、こうした帰結を「意図せざる結果」あるいは単なる最適化やアライメントの問題として説明するかもしれない。だがケイシーは、それらはシステムが意図どおりに機能している証左にほかならないと主張する。「ソーシャルメディア上であなたに表示する内容を選別するアルゴリズムが怒りを煽り、エンゲージメントと広告クリックを最大化するのであれば」と彼は書く。「それは怒りを促進することが広告収益にとって有利だからだ」。同様に、「職場外で家族介護の責任を負う可能性が高い」求職者を排除するアルゴリズムや、「慢性的な健康問題や障害を発症する可能性が高い人々をスクリーニングで除外する」アルゴリズムも存在する。企業の最終利益にとって望ましいことが、あなたの就職の見通しや平均寿命にとって望ましいとは限らない。
ケイシーが他の批評家と異なるのは、偏見を減らし公平性を高めたアルゴリズムを作ろうと努力しても、こうした問題は何ひとつ解決しないと考えている点だ。不均衡を是正しようとしても、予測アルゴリズムがしばしば人種差別的で性差別的で、ほかにも無数の点で欠陥のある過去データに依存しているという事実は変えられない。そして彼は、利益を生む誘因が、害を取り除こうとする試みを常に押しのけると言う。これに対抗する唯一の方法は、ケイシ …
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