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「若者、女性らの可能性に寄り添っていく街に」 広島県知事・横田美香
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Interview with Mika Yokota, Governor of Hiroshima Prefecture

「若者、女性らの可能性に寄り添っていく街に」 広島県知事・横田美香

コロナ禍の終盤から転出超過が続く広島県で、「若者や女性に選ばれる広島」を掲げる横田美香知事が動いている。10年間でユニコーン企業10社の創出を目指し、「失敗してもいい」文化の醸成に本腰を入れる。人口減少が進む地方都市が、「挑戦の実験場」を標榜する理由とは。 by MIT Technology Review Brand Studio2026.05.29Sponsored

若者や女性に選ばれる新しい広島のカタチ

――横田知事は就任以来、「若者や女性に選ばれる広島」をスローガンに掲げていらっしゃいます。若者を中心に転出超過が続いていますが、今後どのように対応していくお考えでしょうか。

横田知事 コロナ禍の終盤あたりから広島県では転出超過が続き、かなり強い危機感を持っているんです。特に若者が東京に一極集中する状況は、地方の少子化や人口減少を加速させますし、国全体の活力が落ちてしまうのではないかと感じます。若者が自分らしく活躍できる広島をつくるために、しっかりと対策を進めたいと考えています。

――若者にとって「成長できるか」「やりたい仕事があるか」は切実な問題だと思います。その受け皿として展開されている「それ、広島で。」というキャンペーンには、どのような思いを込められたのですか。

横田 若い人たちがなぜ首都圏に引き寄せられるのかを考えたとき、やはり「成長できるか」「やりたい仕事があるか」という点が大きいのかな、と思うんですね。実は、広島にはチャレンジできるおもしろい企業や環境がたくさんあるのですが、その魅力がまだみなさんに届ききっていない。だから、「そのやりたいこと、広島で叶いますよ!」というメッセージを込めて、「それ、広島で。」と発信しています。

都市と自然の近接性をイノベーションの武器に

――「挑戦できる環境」という点では、広島ならではの「都市と自然の近さ」も大きな武器になりそうですね。この環境は、暮らしにどのような価値をもたらすと感じていらっしゃいますか。

横田 人が幸せに暮らしていくためには、仕事と住まい、そして「楽しみ」があることが必要ですよね。広島には便利な都市機能もありますし、少し足を延ばせば山や川、滝などの豊かな自然にも恵まれています。瀬戸内海の多島美を眺めながらサイクリングを楽しむ方も多いですし、野球、サッカー、バスケ、バレーなど、スポーツが盛んなところも強みですね。全部で25チームくらいはあるんじゃないでしょうか。

――暮らしの豊かさはもちろんですが、こうした環境はビジネスの面ではどのように活きてくるのでしょうか。

横田 仕事をするうえでは、いわば「実験場」としてのフィールドが整っていると言えるでしょう。都市的な課題もあれば、中山間地域の課題もある。それらを自分たちの手で変えていけるおもしろさがあります。

また、伝統的な「ものづくり」も盛んで、自動車や造船、鉄鋼などの産業には活気がありますし、規模は小さいけれど、実は世界シェアナンバーワンを誇る会社も結構多いんですよ。いろいろなチャレンジができる素地は、十分にあると思っています。

――身近に課題があり、それを解決するための産業も揃っている。だからこそ、課題解決のための新しい挑戦が生まれやすいということですね。

横田 そうですね。課題がすぐそばにある分、解決に向けた動きも起こしやすいと感じています。

――なるほど、課題そのものが「宝の山」に見えてきますね。具体的にはどんな分野に期待していらっしゃいますか。

横田 例えば、農業では、担い手不足という課題を「世代交代のチャンス」と捉えることができます。スマート農業などの技術やアイデアを組み合わせて、新しい農業の姿が描けるはずです。

これは全産業に言えることですが、AIで業務をバージョンアップすれば生産性が上がり、働き方改革も進みます。人口が減っても、DX(デジタルトランスフォーメーション)で働き方を変えれば、仕事も家庭も地域もすべてが満たされる生活スタイルが実現できると思うんです。

失敗を恐れず新しいことに挑戦を

――こうした動きはほかの分野にも広がっていきそうです。DXの可能性については、どう考えていらっしゃいますか。

横田 DXはすべての産業に関わるテーマです。AIを活用して業務プロセスを改善すれば、生産性がぐっと向上します。それが働き方改革にも繋がり、人口が少なくなっても、個人の幸せと地域の活力を両立できる生活スタイルを実現できると考えています。

――働き方や生き方そのものをアップデートしていくということですね。そうした変化を実際のビジネスとして形にするために、県ではどのような支援をしているのでしょうか。

横田 挑戦することが当たり前の文化をつくるため、10年間で時価総額10億ドル以上の企業を10社生み出す「ひろしまユニコーン10」プロジェクトに取り組んでいます。海外進出支援や資本政策支援など、挑戦者のニーズや成長過程に応じて、さまざまなサポートを用意しています。これは前知事の時代から始まったものですが、私としても引き続き、みなさんのチャレンジを全力で応援しているところです。

「みなさんが広島で頑張りたいと思ってくれるよう、今、広島にいる私たちが挑戦をし、目に見える形で成果を出さないといけないですね」と話す横田知事。

――かなり手厚い支援体制ですが、横田知事が特に大切にされている考え方は何でしょうか。

横田 単なる資金援助だけでなく、何よりもいろいろなところと縁を繋ぎ、市場全体を拡大させていくことや、いろいろな実証をしっかりとバックアップすることが役目だと思っています。「失敗を恐れない」という雰囲気の中で、新しいことに挑戦しやすい環境を築けたらいいですね。

そうした高い目標を掲げる企業にトップランナーになっていただき、そのチャレンジ精神が広島の経済界全体に広がっていけばと。新しいサービスができれば、今度はそのサービスがほかの企業のビジネススタイルや業務プロセスを変えることに繋がりますよね。広島の経済界に刺激を与え、良い相乗効果が生まれることを願っています。

――「挑戦しやすさ」を支える実証の場として、「ひろしまサンドボックス」も成果を上げているようですね。

横田 はい。県が主導するプロジェクトで、IoTやAIなどの最新デジタル技術を活用し、企業や自治体が新しい商品・サービスの開発や課題解決に取り組むための実証実験の場を提供していて、手応えを感じています。

先日も新たなプロジェクト「ひろしまAIサンドボックス」の発表会に参加しましたが、非常に活気がありました。
何より良いなと感じたのは、東京や他地域の人たちが広島に集まり、地元の企業と交流することで新しい知恵や考え方が生まれていることです。関係人口を増やしながら新しいものを生み出す、そんな好循環を実感できました。

県外の企業と地場企業がコラボできるのはすごく良いことだと思いますし、そこからイノベーションが生まれると考えています。そういった意味では、意図している部分もありますし、県内外問わず、企業に交流を育んでほしいと願っています。「失敗を恐れずにチャレンジしてほしい」という思いのもとに展開しているプロジェクトなので、ぜひ広島県を挑戦の舞台に選んでほしいです。

生産計画の最適化AIや次世代プログラミング教育支援AIなど、「ひろしまAIサンドボックス」ではさまざまなプロジェクトが採択されている。

「稼ぐ力」にシフトする段階へ広島を挑戦の舞台に

――環境づくりが着実に進む中で、いよいよ生み出したものを「利益」や「成果」に繋げていく段階に入ってきたのではないでしょうか。

横田 仰るとおり、チャレンジするよう促すだけでなく、そこからしっかりと成果が表れてくることを目指しています。広島の経済に好影響が出るよう、成果にはこだわっていきたいですね。
広島は全国に8つある「スタートアップ・エコシステム拠点都市」の1つにも選ばれています。今後もモデルとなる企業が多く生まれるよう、資金調達や企業間の繋がりといった課題に、しっかりと寄り添っていきます。

教育が育む「正解のない時代」を歩む力

――産業だけでなく、教育分野でのイノベーションも広島の大きな特徴です。特に叡啓大学での「教育の革新」は、未来にどのような役割を果たすとお考えですか?

横田 教育は将来への本当に重要な投資です。持続可能な社会や地域の未来といったことを考えると、今は、先が非常に見えづらい状況だと思います。そんな状況の中では、自分で「解」を導き出す力が欠かせません。叡啓大学は、まさにそうした生きる力を持つ学生を育み、各地で活躍してもらうことを期待して設立されました。県としても、幼児教育から大学まで、一律ではない「個別最適な学び」を進めていきたいと考えています。

結局、どんなにAIが進化したとしても、最終的に考えるのは人間です。子どもたちが自分に合う職業を見つけられるような、広島ならではのキャリア教育を打ち出していきたいですね。

――叡啓大学では、都市圏の中核人材を客員研究員として受け入れて企業をマッチングする「ひろしまバリューシフトプログラム」など、産学官の連携も活発ですね。

横田 イノベーションは、違うものがぶつかり合うときに生まれるものですよね。異なる世界の人と交流することで、自分の考えをアップデートしていくことができると思うんです。叡啓大学の産学官の取り組みはこれを体現したものですし、私自身も学生の頃からさまざまな世界の人の話を聞くことが自身のプラスになったと感じています。
これからも続けていってほしいですね。

――2026年1月に大学で開催された座談会では、知事もアンバサダーのみなさんと「なぜ広島を選んだのか」を語り合われました。学生さんたちの反応はいかがでしたか?

横田 座談会に参加された学生さんから質問もいくつかいただいたのですが、座談会での話を自分の中に取り入れて、この先のことをしっかり考えておられるのが印象的でした。人は自己実現によって幸せをつかむものです。そんな力を身につけつつある彼らを見ていると、広島の未来が見えるようで、とてもうれしくなりました。

2026年1月30日に叡啓大学で開かれた座談会の様子。自分たちが持つ可能性や進路について、広島で築くキャリアと道筋を考える機会となった。

日本で一番熱い「実験場」へ、ようこそ

――やはり、若い人たちが「広島で頑張りたい」と思えるためには、魅力的な大人がいて、おもしろいことが起きている地域であることが不可欠ですね。

横田 そうなんですよね。だからこそ、新しいものが生まれたときには、私たちがしっかり目に見える形にしていかなければなりません。「おもしろいことをやっている人がいる」という発信は、今後の県の大きなテーマです。伝統的な祭りや観光資源といった宝を磨きつつ、一方で、若い人たちが楽しめる音楽や文化も積極的に取り入れていきたいと考えています。

――最後に、広島という舞台で新しい一歩を踏み出そうとしている方々へ、メッセージをお願いします。

横田 誰もが「成長したい」と願っていますし、成長は大きな喜びです。広島県はそのための「素地」と「挑戦する場」を用意しています。私たちは挑戦そのものに価値を置き、みなさんをしっかりとサポートしていきます。どんどん変わっていく広島には、ほかにはないおもしろさがあります。「それ、広島で。」、ぜひみなさんの挑戦をお待ちしています。

横田美香(よこた みか) 1971年、広島県呉市生まれ。小学5年生から4 年間父親の仕事でブラジルにて生活。広島大 学附属高等学校、東京大学法学部卒業。1995 年に農林水産省入省、富山県副知事や内閣審 議官を経て2025年11月から広島県知事に就任。


INSIDE HIROSHIMA
―社会実装の最前線―

人口減少や少子化・高齢化の進行、急速なデジタル化への対応など、さまざまな課題に対する解決を図るため、広島県では多様なプロジェクトを展開している。将来にわたり、広島県が活力を維持して持続可能な未来を切り開いていくための取り組みを、一部抜粋して紹介。

ひろしまユニコーン10
10年間で10社のユニコーン企業(世界に羽ばたき急成長することを目指す企業)創出を目標に、応援するプロジェクト。「創業10年以内」「テック系企業」「未上場」にはこだわらず、急成長を志向し、社会に大きなインパクトを与える企業を対象にサポート。

ひろしまサンドボックス
AIなど最新のテクノロジーを活用し、県内の課題を解決するプロジェクトを支援。技術やノウハウを有する県内外の企業や人材を呼び込み、新たな付加価値の創出や生産効率化を、共創で試行錯誤できる実証実験の場。写真は、船の自動航行の実験のもの。

ひろしまAIサンドボックス
ひろしまサンドボックスの実績を受け、2024年10月に開始した新プロジェクト。全国からAI開発者を呼び込み、広島県内の企業や自治体とマッチング。課題解決のための環境を提供して、AIを活用したソリューション開発を支援している。

(制作協力=叡啓大学

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MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

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