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名倉 勝 ✕ 早田吉伸:「脱・会社脳」で挑む広島。高解像度な現場が死の谷を越える。
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Masaru Nakura and Yoshinobu Soda: A Theory of New Business Ventures

名倉 勝 ✕ 早田吉伸:「脱・会社脳」で挑む広島。高解像度な現場が死の谷を越える。

技術もアイデアもあるのに、なぜ事業化に至らないのか。新規事業は、どこで止まってしまうのか。スタートアップ支援に携わるFoundersNation株式会社代表取締役CEO名倉勝と、叡啓大学教授・早田吉伸のの2人がイベントで語った内容から、その構造を紐解く。 by MIT Technology Review Brand Studio2026.05.29Sponsored

大企業がスピード感を失う正体は、技術と組織のミスマッチ

――新規事業がスケールしない最大の障壁は何でしょうか?

名倉 もっとも大きな要因は、技術と課題のミスマッチです。日本は技術力の高いスタートアップが多いですが、市場のニーズとズレているケースが少なくない。あいまいなままプロジェクトが走り出し、意思決定の速い海外勢に市場を奪われてしまいます。

早田 私は、大企業の意思決定を阻む「ガバナンスと組織カルチャー」に根深い問題があると感じています。大企業の中には「失敗を許容する」という言葉はあっても、そのガバナンスやカルチャーが整っていない。減点方式の評価制度や、何層もの承認プロセスを経るうちに、現場の熱量は削がれ、市場の動向から乖離していきます。つまり、既存事業の論理で新規事業を測ろうとする「組織の慣性」が、本来あるべきスピードを奪っている。だからこそ、既存の組織から物理的にも心理的にも距離を置き、異なる論理で動ける「場所」を確保することが不可欠です。

――なぜ今、東京ではなく地方が新規事業の成功への近道になるのでしょうか。

早田 地方には「現場の顧客」がいて、課題の解像度が圧倒的に高いからです。東京のオフィスでデータを見ていても、本当の課題や痛みは見えてきません。
地方の現場に入り込めば「コストを払ってでも解決したい」という切実なニーズに直面します。また、地方には意思決定の極めて速い「地方豪族」ともいえるオーナー企業が存在します。彼らと直接組むことで、大企業の重い決裁を待たずに実験サイクルを高速化できる。「意思決定の速さ」と「現場の具体性」の掛け合わせが、地方の持つ最大のポテンシャルです。

「日本の地方は北欧の国々よりもポテンシャルがある」
名倉勝(FoundersNation株式会社代表取締役CEO)

名倉 市場の捉え方も重要です。北欧のスタートアップは国内市場が小さいため、最初から世界市場を見て事業を設計します。日本の地方も同様に「なぜこの地でやるのか」という独自性、例えば特定の産業集積や地域特有の課題を突き詰めれば、そのまま世界に通じるユニークな強みになります。そこで実証実験のフィールドとして地方を使い倒し、そこで磨いたソリューションを横展開する。こうした視点こそが、これからのスタンダードになるはずです。

死の谷を越えるマインドセットと実証を事業にする生存戦略

――新規事業のプロジェクトの多くが、実証実験で満足し、収益化に至らず「死の谷」に落ちてしまいます。マネタイズへ繋げるための秘策はありますか。

名倉 極論ですが、そこに深刻なニーズさえあれば、実証は自然と事業へと動き出します。逆に言えば、はなりません。相手から「金を払うから続けてくれ」と言われるまで、いかにニーズを深掘りできるか。
実証実験を「技術の確認」ではなく「顧客の獲得」のプロセスと定義し直すことが必要です。

「選ばれるビジネスは解像度を高めた先にある」
早田吉伸(叡啓大学教授)

早田 そのためには、担当者が「会社脳」から「市場脳」へ切り替えなければなりません。社内説明のための美しい資料作りに時間をさくのではなく、現場を歩き、死に物狂いで1人目のお客さんをつかむ営業に徹する。社内の論理ではなく、市場の反応だけを信じて動く。そのためには、外に仲間を作ることも重要です。スタートアップや自治体、顧客といった外部のプレイヤーとチームを組むことで、それが結果的に社内を動かす強力なレバレッジになります。

名倉 社外のコミュニティの力も大きいです。情報共有や学びだけでなく「あの会社はこんなに早く動いている」という他社の事実がプレッシャーになり、社内の意思決定が進むこともある。そういう外部の刺激や、共通の志を持つ仲間との繋がりは、新規事業を前に進める大きな原動力になると思います。

――最後に、閉塞感を感じている大企業の新規事業補助金をもらってお試しでやっているうちは事業に担当者へメッセージをお願いします。

名倉 新規事業はどうしても組織内で浮いてしまいがちですが、外へ出れば必ず仲間がいます。企業同士のコミュニティやスタートアップとの連携を通じて、学び合い、刺激を受けながら実装を進めていく。
その積み重ねが、結果的に事業化への近道になるはずです。

早田 日本のビジネスは、いまだ大企業中心の発想に縛られ、停滞しがちです。しかし地方には、北欧諸国をも凌ぐ可能性を持つ都市が数多く存在しています。広島をはじめとする「形にする場所」を活用し、その呪縛を解き放ちましょう。机上ではなく、現場で、閉塞感をともに打破していきましょう。

対談場所となった「Technology ×Localで考える 新規事業の発想とつくり方」会場(2026.03.09)。

(制作協力=叡啓大学

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