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弁護士記者が見たマスク対アルトマン、第1週の攻防と裁判の行方
Benjamin Fanjoy/Getty Images)
Week one of the Musk v. Altman trial: What it was like in the room

弁護士記者が見たマスク対アルトマン、第1週の攻防と裁判の行方

イーロン・マスクがオープンAIを訴えた裁判が始まった。弁護士資格を持ち、毎日法廷に足を運ぶ本誌記者のミシェル・キムが、第1週の攻防と今後の見どころを語る。 by James O'Donnell2026.05.07

この記事の3つのポイント
  1. イーロン・マスクはオープンAIの非営利的使命の放棄を訴え、組織再編の無効化と巨額損害賠償を求めている
  2. 争点はマスクが欺かれたかどうかの立証に絞られるが、法廷ではAI安全性をめぐる大局的論争にも発展している
  3. 今後3週間でブロックマン、ナデラら業界の重要人物が証言する予定で、オープンAIのIPO計画にも影響しうる
summarized by Claude 3

人工知能(AI)業界で最も影響力を持つ2人、イーロン・マスクとオープンAI(OpenAI)のサム・アルトマンCEO(最高経営責任者)の法廷対決が先週、カリフォルニア州オークランドで始まった。マスクはオープンAIを提訴しており、約10年前に同社に投じた数百万ドルは非営利目的のためのものであり、営利企業のためではなかったと主張している。また、同社はその後その使命を放棄したと訴えている。

この裁判の行方は重大だ。マスクが部分的にでも勝訴すれば、2026年中に新規株式公開(IPO)を計画していると報じられているオープンAIにとって大きな痛手となりかねない。しかし注目を集めている最大の理由は、X上での確執が連邦裁判所という舞台で繰り広げられるという見世物的な側面にある。「オープンAIの創業と成長の裏にあった気まずいテキストメッセージ、生々しい日記の記述、そして絶え間ない策謀が明るみに出ると予想される」と、MITテクノロジーレビュー[米国版]フェローであるミシェル・キムは裁判開始前に書いた。そして裁判は、AIへの文化的反発が高まる中で展開している。裁判所の外で抗議者たちが掲げるプラカードの一部は、「マスク対アルトマン」の結果がどうなろうとも、私たち全員が敗者だと示唆している。

多くの人は裁判を遠くから見守るしかないが、弁護士でもあるミシェルは毎日法廷に足を運んでいる。これまでの経緯と今後の展開について、彼女に話を聞いた。

——この裁判が実際に何をめぐるものなのか、概要を教えてください。何が争われていて、現時点ではどちらが有利ですか?

イーロン・マスクは、オープンAIのサム・アルトマンCEOとグレッグ・ブロックマン社長が、オープンAIを事実上営利企業に転換することで同社の慈善信託に違反したと主張しています。マスクは、それは創業初期に約束されたことではないと訴えています。いくつかの救済措置を求めており、莫大な損害賠償やアルトマンCEOの解任などが含まれます。しかし彼が最も求めているのは、オープンAIの組織再編を無効にすることです。(2025年10月、オープンAIはカリフォルニア州とデラウェア州の司法長官と合意を結び、非営利部門がオープンAIの日常的な運営に関与する度合いを実質的に低下させることになった。これはオープンAIが当初提案したものからの妥協案だが、マスクはそれでも阻止しようとしている)。

オープンAIは、AIの開発には莫大なコストがかかることをマスク自身が理解していたため、同社が営利部門を持つことに実際には同意していたと主張しています。つまり争点は、マスクが何を知っていて何を知らなかったか、そして本当にアルトマンCEOとブロックマン社長に欺かれたのかどうかを証明することにあります。

マスクがこの不正行為とされる事実をいつ知ったのかについては、大きな議論があります。マスクは2015年にアルトマンCEOやブロックマン社長とともにオープンAIを設立し、2024年に提訴しました。慈善信託に関する訴訟には時効があり、不正行為とされる事実を知ってから3〜4年以内に訴えを起こす必要があります。そのためマスクは、当時は多少疑念を抱いていたものの、オープンAIがもはや本来の慈善的使命にコミットしていないと気づき、自分が騙されたと悟ったのは2022年になってからだという構図を描こうとしています。裁判はまだ第1週が終わったばかりですが、マスクがこの点を裁判官と陪審員に証明できているかどうか、私には疑問です。

——これまでの裁判で印象的な場面はありましたか?

ある時点で、マスクの弁護士の1人が「AIによって私たち全員が死ぬ可能性がある」と発言しました。法廷内の多くの人がこの発言に動揺したようで、裁判官はマスクの弁護士に対してこう告げました。「あなたはオープンAIがAIを開発する際の安全リスクについて語っているが、マスク自身もまったく同じ分野で会社を経営しています」と。そして実質的にこう言ったのです。「人類の未来をイーロン・マスクの手に委ねたくないと思っている人も大勢いるはずです」と。

その後、弁護士たちはAIの壊滅的なリスクについて、そしてイーロン・マスクとオープンAIのどちらがAI安全性を管理するのにより適した立場にあるかについて、延々と議論を続けました。すると裁判官がやや苛立った様子を見せ、この裁判はAIが人類に害を与えたかどうかを判断するものではないと、きっぱりと述べました。これは裁判における非常に印象的な場面だったと思います。技術的には単にイーロン・マスクが本当にオープンAIに欺かれたかどうかをめぐる裁判であるにもかかわらず、AIの安全性や、各研究所のAI開発における慣行についての大きな議論の場にもなっているということを、この場面は浮き彫りにしていました。

——この裁判に入廷するまでの舞台裏を教えてもらえますか?

記者の数は非常に多いです。注目度の高い裁判なので、私は午前4時半頃に起きて、午前6時きっかりにオークランドの裁判所に並びに行かなければなりません。それでも日によっては、午前6時に来ても法廷に入れないこともあります。特にマスクやアルトマンCEO、ブロックマン社長が出廷する日は、裁判所の前に多くのカメラマンが集まります。裁判を傍聴したいという市民の姿もあります。私はたいてい2時間ほど並んで、法廷内の予約なし席30席のうちの1席を確保しています。

——イーロン・マスクが証言する場面を実際に見てどう感じましたか? 彼の態度はどのように見えましたか?

彼はきちんとした黒いスーツで現れます。X上では過激な発言をすることもありますが、法廷では落ち着いていて、冷静で、自信に満ちており、非常に慣れた様子です。彼はこれまで多くの訴訟を経験しています。陪審員への話し方や、陪審員と裁判官の前での自己表現の仕方をよく心得ています。自分の弁護士とも、相手方の弁護士や裁判官とさえも冗談を交わしています。

機知に富んだ一面もあります。オープンAIの弁護士がマスクに質問し、ある意味で答えを誘導しようとした場面がありました。するとマスクは「それは誘導尋問ではなく、誘導回答だ」と言い返しました。裁判官が介入して「あなたは弁護士ではありませんよ、イーロン」と言うと、彼は「でも法学入門は受講しましたよ」と返しました。

とはいえ、オープンAIの弁護士から鋭く核心を突く質問をされると、動揺して居心地が悪そうになることもあります。そしてその弁護士はまさにそういった質問を続けています。

——裁判の初期段階では明らかでなかったことで、今回新たに判明した重要な事実は何ですか?

裁判4日目、マスクは反対尋問の中で、xAIがオープンAIのモデルを蒸留して自社モデルの訓練に使用していることを認めました。これは衝撃的な発言でした。マスクはその後、これは現在すべての研究機関で標準的な慣行であり、xAIは他社がすでにしていること以上のことは何もしていないと付け加えました。しかし、マスクがこの発言をした瞬間、多くのジャーナリストがノートパソコンで一斉にキーを打ち始めました。

大手テック企業の幹部たちの間でいかに多くの策謀が渦巻いているかも改めて実感しました。漠然とは知っていても、直接の証言を聞き、彼らのメールやテキストメッセージを読むのは実に興味深いものです。

例えば、マスクとメタ(Meta)のマーク・ザッカーバーグCEOの間のテキストメッセージがあり、2人はオープンAIの組織再編を阻止するために連携しようとしていました。彼らはさらに、オープンAIの非営利部門の全資産を買収しようとする入札まで試みていたのです。こうした幹部たちの間で繰り広げられる策謀の規模には、ただ驚くばかりです。

——今後の展開はどうなりますか?

イーロン・マスクの証言の一部を丹念にメモしていたオープンAIのグレッグ・ブロックマン社長が、来週証言台に立つ予定です。また、カリフォルニア大学バークレー校の計算機科学者スチュアート・ラッセル教授がAI安全性について証言する予定です。これによって、誰がAIを開発する上で信頼できるのかという激しい議論の扉が開かれると予想しています。

オープンAI元主任科学者のイリヤ・サツケバー、元最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOなど、他にも多くの著名人が証言台に立つと思われます。

裁判は約3週間続くことになっています。9人の陪審員は、オープンAIに対するマスクの請求についての裁判官の判断を導く勧告的評決を下しますが、裁判官は陪審員の意見に従う義務はなく、自らの判断で決定を下すことができます。もし裁判官がオープンAIに責任があると判断した場合、どのような救済措置が適切かを決定することになります。

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ジェームス・オドネル [James O'Donnell]米国版 AI/ハードウェア担当記者
自律自動車や外科用ロボット、チャットボットなどのテクノロジーがもたらす可能性とリスクについて主に取材。MITテクノロジーレビュー入社以前は、PBSの報道番組『フロントライン(FRONTLINE)』の調査報道担当記者。ワシントンポスト、プロパブリカ(ProPublica)、WNYCなどのメディアにも寄稿・出演している。
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