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グーグルI/O 2026開幕、注目すべき3つのポイント
Justin Sullivan/Getty Images
What to expect from Google this week

グーグルI/O 2026開幕、注目すべき3つのポイント

グーグルの年次開発者会議「I/O」が今年も始まった。同社は最も重要な分野でライバルたちに後れを取っているが、果たして追いつくことはできるのか。 by Grace Huckins2026.05.20

この記事の3つのポイント
  1. グーグルはAIコーディング分野でアンソロピックやオープンAIに大きく水をあけられ、明確な3位に後退
  2. 科学・医療AIでは依然として強みを持ち、I/Oでの新ツール発表が注目される
  3. 国防総省契約への社内抗議など、グーグルが「中立」の外観を保てるかも焦点となる
summarized by Claude 3

グーグルの年次開発者会議「I/O」が米国時間5月19日に始まった。この会議に、同社は基盤モデル競争において明確な3位という立場で臨むことになる。1年前のグーグルI/O 2025では、状況はまったく異なって見えていた。同社はその年の3月にGemini 2.5 Pro(ジェミニ 2.5プロ)を発表した勢いに乗っており、トップクラスの大規模言語モデル(LLM)の違いは主観的な些細な差にすぎないように感じられることが多かった。

しかし今日、基盤モデルの評判は主としてコーディング能力に大きく左右される。そして数カ月にわたり、グーグルのコーディング・ツールはアンソロピック(Anthropic)のClaude Code(クロード・コード)やオープンAI(OpenAI)のCodex(コーデックス)に圧倒されてきた。これらはグーグルのサービスと比べて著しく優れており、同社はAI部門であるディープマインド(DeepMind)の一部のエンジニアに対し、業務でClaudeの使用を許可せざるを得なかったと報じられている。そうしなければ、さらに後れを取る恐れがあったからだ。

そのため、米カリフォルニア州マウンテンビューで開催されるこの会議で私は、グーグルがトップランナーの座を取り戻すためにどのような取り組みをしているか、注視するつもりだ。しかし同時に、「科学向けAI(AI for Science)」など、グーグルが最先端を切り開いている分野での新たな展開にも期待している。そうした取り組みはあまり注目されないかもしれないが、その重要性は決して小さくない。

以下に、今後2日間で特に注目したい3つのポイントを挙げる。

コーディング分野での巻き返しの試み

グーグルはAIコーディングの危機を深刻に受け止めている。ジ・インフォメーション(the Information)の報道によれば、ディープマインドに新たなAIコーディングチームが発足したという。また、ロサンゼルス・タイムズは、タンパク質構造予測ソフトウェア「AlphaFold(アルファフォールド)」の研究によって、2024年のノーベル化学賞をディープマインドのデミス・ハサビスCEOらと共同受賞したジョン・ジャンパーが、この取り組みにおいて活躍していると報じている。今回のグーグルI/Oで大規模なコーディング関連の発表がなければ驚きだ。おそらく同社のAIエージェント型コーディング・プラットフォームである「Antigravity(アンチグラビティ)」のアップデートという形で発表されるはずだ。

とはいえ、ここで劇的な変革を期待すべきではないかもしれない。グーグル社員は一般公開版よりもはるかに先進的なモデルや製品を利用できる立場にあるにもかかわらず、先月はClaude Codeへのアクセス権をめぐって争っていたと報じられている。それ以降に同社が驚異的な進歩を遂げていない限り、グーグルがこの2日間でコーディングの最前線に返り咲くことはないだろう。

科学と医療

コーディングはグーグル・ディープマインドの弱点かもしれないが、科学は同社の際立った強みだ。フロンティアAI企業の中でノーベル賞を受賞したのはグーグルだけだ。そしてLLMが科学向けAIの領域を席巻するようになった今、グーグルはそのリードをさらに固めている。昨年、同社は複数の科学向けAIツールをリリースした。その中には、ユーザーの質問に応じて仮説や研究計画を立案する「AIコサイエンティスト(AI co-scientist)」も含まれており、スタンフォード大学のある研究者からは「神託(オラクル)」と評されている。また、数学的・計算的問題に対する新たな解法を反復的に発見するシステムAlphaEvolve(アルファイヴォルヴ)もリリースされた。I/Oで新たな科学ツールが発表されれば、大いに注目に値する。

また、グーグルが医療・健康分野でどのような動きを見せるかにも注目したい。グーグルはLLMベース医療ツールに関して最先端の研究を進めているが、1月のChatGPT Health(チャットGPTヘルス)リリース以降、医療AI分野の議論はオープンAIが主導している。グーグルはAI搭載のHealth Coach(ヘルス・コーチ)を一般公開すると発表しているが、プロモーション素材を見る限り、このツールはユーザーの医療上の懸念に応えるというよりも、フィットネスや食事といったトピックに関するアドバイスを提供することに重点を置いているようだ。これはグーグルが後れを取っているもう一つの分野なのか、それとも同社がリスクの高い領域で適切な慎重さを発揮しているのか、見極めが必要だ。

ドラマ

グーグルのファンがマウンテンビューに集まる一方、北に約50キロメートル離れたオークランドでは、イーロン・マスク対サム・アルトマンの裁判が大詰めを迎えようとしている。ここ数カ月は、AIのCEOたちをめぐるドラマが相次いだ。裁判前には、アンソロピックとオープンAIが米国防総省との契約交渉を進める中で、アルトマンとアンソロピックのダリオ・アモデイCEOの対立が注目を集めた。しかしディープマインドのハサビスは、こうしたドラマからおおむね距離を置いてきた。彼はノーベル賞受賞者の研究者という立場を巧みに演じており、仮に同業者について批判的な文章を書いたとしても、それがメディアにリークされたり法的手続きの中で明らかになったりしたことはない。

だからといって、グーグルが論争と無縁というわけではない。先月、ディープマインドの社員を多く含む600人の従業員グループが、差し迫った国防総省との契約に抗議する書簡をサンダー・ピチャイCEOに送った。だが、グーグルはその翌日に契約に署名した。ハサビス、ピチャイ、そしてその他の著名人たちは、ステージ上でこうした問題やその他の繊細なテーマを巧みに回避しようとするだろう。しかし、論争はどこからともなく忍び込んでくるものだ。グーグルが中立という外観を維持できるかどうか、興味深く見守りたい。

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最先端の機械学習研究から、チャットボットの社会的・倫理的影響に至るまで、幅広いテーマを取材。スタンフォード大学で神経科学の博士号を取得。
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MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

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