この20年で大幅低下した集中力、AIで脳はさらに「萎縮」するか
心理学者のグロリア・マーク教授によれば、人が1つのことに集中できる時間は、約2分半からはわずか47秒へと縮んだ。そして今、より深刻な懸念がAIだ。執筆や要約を委ねるほど思考は浅くなり、使わない「筋肉」のように脳は萎縮しかねない、と警告する。 by Jessica Hamzelou2026.06.08
- この記事の3つのポイント
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- デジタル技術の普及により、成人の平均注意持続時間は2003年の約2分半から2020年には約47秒へと低下
- AIへの認知作業の委託は「処理の深さ」を損ない、批判的思考力や感情的知性の長期的な劣化を招くリスクがある
- 技術との関係は変えられるが、読書や対面交流など意識的な努力の実践が不可欠だとマーク教授は提言する
6月第1週、私は、世界最大級のクリエイティブ・フェスティバルであるSXSWロンドン2026に参加した。音楽、映画、そして人工知能(AI)に関する膨大な、本当に膨大な議論があった。カリフォルニア大学アーバイン校の心理学者であるグロリア・マーク教授とセッションで対談する機会も得た。マーク教授は過去30年間、人々がデジタル技術とどのように関わるかを研究してきた。
マーク教授のキャリアの初期、最大の懸念はインターネットや電子メールの使用が私たちの脳に与える潜在的な影響だった。今日ではそうした懸念を笑い飛ばすかもしれないが、これらの技術がより普及し日常生活に深く根付くにつれて、私たちの注意持続時間が縮小し始めたのは事実だ。
マーク教授は状況がさらに悪化しつつあると懸念している。今回のセッションのタイトルは「私たちは脳のコントロールを失ったのか?」というものだった。残念ながら、マーク教授が私に語ったところによれば、答えは「そのとおり」だという。
約20年前、マーク教授はデバイスの使用が私たちの注意持続時間にどのような影響を与えるかについて考え始めた。「生活実験室」と呼ぶ環境を構築し、センサーやトラッカーを使って成人ボランティアがデバイスを使用している際の注意、気分、行動を観察した。
2003年、マーク教授は平均的なユーザーの注意持続時間が約2分半であることを発見した。これは、人々が別のことに移る前に1つのことに集中できる時間だ。「当時はそれに驚きました」とマーク教授は6月3日のセッションで語った。「これは本当に短いと思いました」。
しかし2012年に実験を繰り返したところ、注意持続時間はさらに縮小し、平均で約75秒にまで落ち込んでいたとマーク教授は述べた。2014年から2020年にかけて実施した研究では、注意持続時間はさらに短縮し、平均でわずか47秒にまで縮まった。これは驚くべき結果だ。
そして、これは私たちにとって好ましくないことだ。マーク教授は、注意を頻繁に切り替えることがストレスになると判明したと語った。「参加者に心拍数モニターを装着してもらったところ、注意の切り替えが速いことと、ストレスの上昇との間に直接的な相関関係が見られました」。
こうした注意散漫は、物事を成し遂げることも難しくする。「注意を切り替えていると、どんな単一のタスクをこなすにも時間がかかります」とマーク教授は語る。「パフォーマンスにとっても良くありませんし、感情的な幸福にとっても良くありません」。
これは大人の話だ。では、デジタル技術が子どもたちに与える影響はどうだろうか。数カ月前、Facebook(フェイスブック)とInstagram(インスタグラム)を所有するメタ(Meta)と、グーグルのYouTube(ユーチューブ)は、幼少期に依存症を引き起こす製品を作ったとして訴えた20歳の女性に対し、数百万ドルの損害賠償を支払うよう命じられた。
ほんの数週間前には、メタが別の訴訟を和解で解決した。今回はケンタッキー州の農村部の学区が起こしたものだ。同学区もメタが生徒に有害な依存性のある製品を設計したと非難し、メンタルヘルスに関するコストをまかなうために6000万ドル以上を求めていた。約1200の他の学区も、ソーシャルメディア企業に対して同様の法的措置を取っている。
しかし、ソーシャルメディアがすべて悪いわけではない。周縁化された集団の人々を含む一部の人々にとって、他の方法では難しいつながりを築く機会を提供することもある。LGBTQ+のティーンエイジャーを対象とした2024年の調査では、ソーシャルメディアを拒絶と恐怖の場と表現する人がいる一方で、帰属意識を感じ、友情を育み、アイデンティティを形成できる場と表現する人もいることがわかった。
実際のところ、ソーシャルメディアの使用が子どもたち全体にどのような影響を与えているかを断定することはできない、とマーク教授は言う。「非常に多くの研究が実施されてきましたが、現時点では証拠は結論に至っていません」。(このテーマに関するベストセラー書籍が複数あるにもかかわらずである)
マーク教授は、大規模かつ長期的な研究がこの問題にようやく光を当て始めることを期待している。そのような取り組みがオーストラリアで進行中だ。同国は2025年末、16歳未満のソーシャルメディア利用禁止を施行した。
20年の歴史を持つ技術についてこれほどの不確実性があることを踏まえ、私はマーク教授がAIの潜在的な影響についてどのように考えているか気になった。AIは明らかにはるかに新しい技術でありながら、わずか数年のうちに私たちのデジタル生活に深く統合されたように見える。
マーク教授は「懸念している」と語った。
コンテンツを評価したり要約したりするなど、何かに努力を注ぐとき、私たちは「処理の深さ」として知られる行為をしているとマーク教授は語った。「情報に積極的に関与しているとき、あなたは非常に深いレベルでそれを処理しています。そうすることで、それを学び、理解し、記憶に定着させる可能性が高まります」。
しかし、ChatGPT(チャットGPT)、Claude(クロード)、Gemini(ジェミニ)といったAIボットを使う多くの人々にはそれが起きていない。これらのツールに文章の作成、要約、評価を依頼するとき、私たちはもはやその処理の深さを実践していない。「人々は認知的な作業をAIに委ねているのです。そして、それは私たちにとって良くありません」。
リスクは、私たちの認知能力が時間とともに低下することだ。「筋肉を常に鍛えていなければ、萎縮することがあります」とマーク教授は言った。「それはまさに私たちの心にも起こりうることです」。批判的思考能力が弱い人は誤情報の餌食になりやすいと同教授は付け加えた。
AIを搭載した「合成コンパニオン」との交流も同様に有害になりうる。人間同士の関係には時間、労力、理解といった努力が必要だ。しかし、おべっかを使うボットと関係を築く場合、そのいずれも必要ない。ここで萎縮するリスクがある「筋肉」は感情的知性であり、調査によればそれはすでに低下しつつあるとマーク教授は述べた。
マーク教授が描く将来像は、特に明るいものではない。
「このままの軌道を進み続ければ、注意持続時間は低下し、孤独感は増し、退屈感も増し、感情的知性は低下し、そして研究によれば目的意識も実際に低下しています」とマーク教授は語った。
幸いなことに、マーク教授はこれらの技術との関係を変えることで軌道修正できると考えている。鍵となる要素は努力だ。
何かに注ぐ努力が大きいほど、得られる満足感も深くなるという。それはつまり、要約を流し読みするのではなく本を読む努力をすること、そしてできるときは友人と直接会うことを意味する。おそらく自力でなんとかなる場所ではGPSを使わないようにしてみよう。
「私はテクノロジーが大好きですし、手放すことはできません」とマーク教授は語った。「でも、新しい生活習慣を作る方法を学ばなければなりません」。
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- ジェシカ・ヘンゼロー [Jessica Hamzelou]米国版 生物医学担当上級記者
- 生物医学と生物工学を担当する上級記者。MITテクノロジーレビュー入社以前は、ニューサイエンティスト(New Scientist)誌で健康・医療科学担当記者を務めた。
