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1人のドナーから600人誕生も、精子提供に国際的な上限は設けられるか
Science Photo Library
Sperm donors need limits, says a European fertility group

1人のドナーから600人誕生も、精子提供に国際的な上限は設けられるか

「まるで工場で大量生産されたような気分」——7年で25人の異父母きょうだいを見つけた女性はそう語る。1人のドナーから600人が生まれた例もある中、欧州ヒト生殖学会は上限50家族を提言した。だが何が適切なのか。まだ誰にも分からない。 by Jessica Hamzelou2026.07.13

この記事の3つのポイント
  1. 欧州ヒト生殖学会が欧州全域でドナー1人あたり50家族を上限とする国際的な精子・卵子提供規制の策定を提唱した
  2. 精子の国境を越えた流通により国内上限が形骸化しており、近親交配リスクや有害遺伝子の広域伝播が現実の問題となっている
  3. 上限強化はドナー不足や無規制提供の拡大を招く恐れがあり、実効性ある国際的枠組みの構築が今後の焦点となる
summarized by Claude 3

ティース・ファン・デル・メーアは、自分に何人のきょうだいがいるのか知らない。

47歳の彼は、オランダの民間不妊治療クリニックで匿名ドナーの精子提供によって生まれた。オランダでは2004年に匿名での精子・卵子提供が禁止されたが、その後、このクリニックを運営していた医師がドナーを特定できる可能性のある記録を破棄したという。

彼はこの状況を「問題がある」と表現する。子どもには遺伝上の親を知る権利があると彼は言う。最終的に1人のきょうだいを見つけ、その助けを借りて父親や他の血縁者を特定することができたが、決して見つけられないきょうだいが他にもいるかもしれない。

ドナーによって生まれた人々の中には、きょうだいを探した結果、その数が数十人、あるいは数百人に及ぶことが分かった人もいる。7年間で25人の異父母きょうだいを見つけたある女性は、ガーディアン紙に対し、「まるで工場で大量生産されたような気分になります」と語った。

欧州の不妊治療団体は昨日、1人のドナーから生まれる子どもの数に国際的な上限を設けるべきだと主張した。ロンドンで開かれた会議で、メンバーらはまず欧州全域で上限を設ける計画を示した。

現在、英国を含む多くの国では匿名による卵子・精子提供が禁止されている。しかし、制度上は匿名提供が認められている地域でも、その匿名性は保証できない。アンセストリー(Ancestry)やトゥエンティースリー・アンド・ミー(23andMe)などの企業が提供する遺伝子検査に加え、DNAデータベースの普及によって、ドナーによって生まれた人々が遺伝子を共有する親やきょうだいを見つけることがはるかに容易になっているためだ。

また、精子は凍結保存され、何年も経ってから使用されることがあるため、現在の制度では、ドナーによって生まれた人が遺伝上の親の身元を知るのが、その親の死後になる場合もある。さらに、世界各地に年齢の大きく異なるきょうだいがいることを知るケースもある。

数百人ものきょうだいが見つかるケースもある。2007年から精子提供を始めたオランダ人のヨナタン・メイエルの精子は、550〜600人の子どもの誕生に使われた(ファン・デル・メーアが会長を務める、ドナーによって生まれた人々を支援する財団・擁護団体スティフティング・ドナーキント(Stichting Donorkind)がメイエルを提訴し、2023年に裁判所は彼に精子提供の停止を命じた)。

このような事例は、ドナーによって生まれた人々に苦痛を与えることがある。そして、上限設定が重要とされる理由はほかにもある。例えば、多くの子どもをもうけたドナーの子ども同士が、互いの血縁関係を知らないまま恋愛関係や性的関係を結ぶリスクがある。また、有害な遺伝子変異を持つドナーが、その変異を多数の子どもに受け継がせてしまうことを懸念する声もある。

ほとんどのドナーは十分な健康・遺伝学的スクリーニングを受けているため、このような事態が起こる可能性は低い。しかし、実際に起きた例がある。デンマークの精子バンクに精子を提供したある男性が、複数のがんのリスクを大幅に高める遺伝子変異を持っていることが判明した。しかし、その精子はすでに欧州各地で少なくとも197人の子どもの誕生に使われていた。その子どもたちの一部はがんを発症し、中には亡くなった人もいる。

多くの国では、すでにドナーに対する法的な上限が設けられている。例えば、7月8日にロンドンで開催された欧州ヒト生殖学会(European Society of Human Reproduction and Embryology:ESHRE)の会議で示されたデータによると、マルタとキプロスでは、卵子・精子のドナーはいずれも1人の子どもの誕生にしか関与できない。

一方、1人のドナーが提供できる家族数に上限を設けている国もあり、提供を受けた家族が遺伝的につながりのあるきょうだいを持てるようにしている。英国では、この上限はドナー1人につき10家族と定められている。

しかし、提供された配偶子が必ずしも国内で使用されるとは限らないため、こうした上限を実効性のある形で運用するのは難しい。デンマークでは国内の上限は12家族に設定されているが、同国は精子の主要な輸出国でもある。例えば英国では、2020年に使用された精子提供の半数以上が輸入されたもので、その大半はデンマークまたは米国からのものだった。

「本当に意味があるのは、国境を越えた上限設定だけです」。バーミンガム大学の生殖生物学教授、ジャクソン・カークマン=ブラウンは会議でそう語った。

カークマン=ブラウンらは数カ月をかけて、こうした上限に関するESHREの見解をまとめた文書を作成した。不妊治療の専門家やクリニック、精子・卵子バンク、ドナー、そしてドナーによって生まれた人々との協議を経て、チームはまず欧州全域で精子・卵子提供の上限を設ける計画を策定した。

ESHREは、精子・卵子バンクや不妊治療クリニックに対し、当面はドナー1人につき50家族を上限とするよう求めている。会議で私が話を聞いた数人によれば、それでもなお非常に高い数字だという。それでも、少なくとも第一歩にはなる。

欧州は、最終的にはドナー1人につき15家族という上限を目指すべきだとカークマン=ブラウンは述べた。「15家族でも多すぎることが分かるかもしれません」と話すのは、ロンドンのシティ・セント・ジョージズ大学で、提供された卵子・精子・胚によって生まれた人々の心理的健康を研究する心理学教授、ヴァサンティ・ジャドヴァである。「適切な数字がいくつなのかは、まだ分かっていません」。

こうした上限を実効性のあるものにするのも容易ではない。さらに、上限によってドナー精子の供給が不足すれば、健康スクリーニングを受けていない人からの無規制な精子提供に頼る人が現れる可能性もある。こうした無規制の提供は、子どもを望む人々に別の問題をもたらしかねない。その一つが、ドナーが自らの精子によって生まれた子どもに対して親権を主張する可能性である。

国際的な上限を設けることは、さらに難しい。欧州ヒト生殖学会が提案した上限について米国生殖医学会(American Society for Reproductive Medicine:ASRM)に見解を求めたところ、担当者はガイダンス文書を紹介した。その文書には、近親者同士が子どもをもうけるリスクを避けるため、人口80万人当たりでは、1人のドナーによる出生数を「25人以下」に抑えることが提案されていると記されている(米国の人口は3億4000万人を超えるため、全国での合計人数はかなり多くなり得る。ただし、多くの精子バンクは自主的に、1人のドナーが提供できる家族数を25家族前後に制限している)。

ファン・デル・メーアは、1人のドナーにつき5家族という上限でさえ多すぎると考えている。国境を越えた提供では、ドナーによって生まれた人々が遺伝上の親族とつながることがさらに難しくなるため、国際的な提供については2家族を上限とすべきだという。

それでも彼は、ESHREが提案する上限は「前向きな第一歩」だと評価している。ファン・デル・メーアはこれまでに、きょうだいや父親に加え、甥や姪、おじ、おばも見つけることができた。将来の制度が、ドナーによって生まれた子どもたちが遺伝上の親族を知り、その人々と交流する権利を尊重するものになることを彼は願っている。

「でも、どこかから始めなければなりません」。

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