KADOKAWA Technology Review
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Precision Medicine Pioneer

「ハーセプチン」が証明
遺伝子治療はすごく儲かる

世界初の遺伝子治療薬ハーセプチンでわかったのは、がんはひとひとつ異なることだ。 by Elizabeth Woyke2016.07.25

抗がん剤「ハーセプチン(トラスツズマブ)」は世界初の標的治療薬だ。侵襲性の強い乳がんに関係するHER2蛋白を標的にするハーセプチンは、バイオテクノロジー会社のジェネンテックが開発し、1998年に米国食品医薬品局(FDA)の承認を得た。世界中で200万人以上の患者の治療に使われ、ハーセプチンを世界で640億ドル以上売上げたスイスの製薬大手企業ロシュ(ジェネンテックの所有企業である)は、米国外でハーセプチンを販売している。この適確医療のパイオニアが発展を遂げた経過は次のようなものだった。

1985年

米国立衛生研究所はHER2遺伝子がヒトの乳房腫瘍細胞で頻繁に増幅していることを示す。

1990年

ジェネンテックの科学者(ヒトHER2遺伝子の複製にすでに成功していた)は、HER2をターゲットにしたマウス抗体をヒト化することでハーセプチンを生成。第三者が後に見積もったジェネンテックの開発コストは1億5000万から2億ドル。

1992年

ジェネンテックはハーセプチンを治験薬として投与する許可を米国食品医薬品局FDAに申請。

1992〜1998年

HER2陽性の転移性乳がん患者に対しハーセプチンを単独または化学療法との組み合わせで安全性と有効性を見る臨床試験。

1998年3月

ジェネンテックは診断会社ダコと提携し、HER2を過剰発現させる患者を特定する商用試験を開発すると発表。

1998年5月

ジェネンテックはハーセプチンを販売する許可をFDAに申請。FDAは標準的な審査期間の10カ月ではなく6カ月以内に審査する「早期手続き」と、重病患者の満たされていない医学的需要を認める「優先審査」に指定。

1998年9月

FDAがハーセプチンと患者を特定できる診断検査をHER2陽性転移性乳がん治療として承認。

2000年8月

ヨーロッパで初の承認。

2006〜2008年

FDAが、初期HER2陽性乳がんの手術後の治療のためハーセプチンに基づく3種の処方を承認。続いて胃がんに対しても承認。

2014年

ハーセプチンの最初の特許がヨーロッパで失効。インドのバイオテクノロジー企業は2013年、先陣を切って、極めてよく似た医薬品の承認を受ける。韓国の会社は安全性や有効性で元々の製品と臨床的に有意な違いの見られない「バイオ後続品」の承認を受ける。アジアでも承認が続く。

2015年5月

オバマ大統領が適確医療に関する2億1500万ドルの研究プロジェクトを発表して間もなく、世界保健機関(WHO)はハーセプチンを低中所得国向け必須薬品リストに加える。

2019年

ハーセプチンの最初の特許がアメリカで失効予定。

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クレジット Photograph by Jeff J Mitchell | Getty
エリザベス ウォイキ [Elizabeth Woyke]米国版 ビジネス担当編集者
ナネット・バーンズと一緒にMIT Technology Reviewのビジネスレポートの管理、執筆、編集をしています。ビジネス分野ではさまざまな動きがありますが、特に関心があるのは無線通信とIoT、革新的なスタートアップとそのマネタイズ戦略、製造業の将来です。 アジア版タイム誌からキャリアを重ねて、ビジネスウィーク誌とフォーブス誌にも在籍していました。最近では、共著でオライリーメディアから日雇い労働市場に関するeブックを出したり、単著でも『スマートフォン産業の解剖』を2014年に執筆しました。
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MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020
MITテクノロジーレビュー[日本版] Vol.2/Winter 2020SDGs Issue

今、世界中の企業や機関の技術者・研究者たちが各地で抱える社会課題を解決し、持続可能な世界の実現へ向けて取り組んでいる「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や貧困といった地球規模の課題の解決策としての先端テクノロジーに焦点を当て、解決に挑む人々の活動や、日本企業がSDGsを経営にどう取り入れ、取り組むべきか、日本が国際社会から期待される役割について、専門家の提言を紹介します。

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