KADOKAWA Technology Review
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リンゴ農家の人手不足をロボットが救う
知性を宿す機械 Apple-Picking Robot Prepares to Compete for Farm Jobs

リンゴ農家の人手不足をロボットが救う

機械化の進む米国の農業ではロボットの開発も盛んだ。トランプ大統領の難民政策の影響で季節農業労働者の確保が困難になったいま、リンゴ収穫ロボットが注目されている。 by Tom Simonite2017.07.11

毎年、米国ではおよそ40億ドル相当のリンゴが収穫されている。スタートアップ企業のアバンダント・ロボティクス(Abundant Robotics)は、熟した果実を木から真空吸引でもぎとる機械を使って、リンゴを収穫しようとしている。

現在、リンゴ園では作物の収穫を人手に頼っている。アバンダントの共同創業者ダン・スティア最高経営責任者(CEO)によれば、リンゴ収穫の季節を迎えているオーストラリアで行なわれた最近のテストで、アバンダントの試作機は人間とほぼ同じ精度でリンゴを見つけ、人間のように丁寧に摘み取れることを実証した。この機械は、人間の摘み取り作業者が使用するのと同じ大きさの木箱にリンゴを入れる。

「このテスト結果によって、収穫マシン実用化への道が開けていることを確信しました」とスティアCEOはいう。

アバンダントは、この秋、ワシントン州で試作機のテストを重ねることを計画しており、2018年には栽培業者に対してマルチアーム・システムの販売を開始しようとしている。「当社の収穫システムは、作業員数十人分に相当する仕事をこなすでしょう」(スティアCEO)。

アバンダントは2016年に独立系研究所のSRIインターナショナルからスピンアウトし、設立時にワシントン州果樹研究委員会から一部資金の提供を受けた。同委員会のマイク・ウィレット部長は、米国では雇用できる季節農業労働者の数が長期にわたって減少していることから、栽培業者は収穫の自動化を待ち望んでいるという。

 

ウィレット部長は、政治情勢の影響で、現在米国の季節労働者不足への懸念が深まっているという。トランプ大統領の移民に対する高圧的な発言により、あらゆる種類の作物の農家にとって、移民の労働力が枯渇すると懸念している。アバンダントは5月に、グーグルから1000万ドルの新たな資金を調達したと発表した。

ワシントン州立大学のマノジ・カルキー准教授は、アバンダントの技術は素晴らしいと語る。

カルキー准教授によれば、リンゴやそれと同類の梨などの作物の収穫の自動化については長年研究されてきた。ところが、機械では高精度に果実を識別させて丁寧に取り扱わせることが難しいため、これまでは失敗続きだった。しかし、コンピューターや視覚アルゴリズムの性能向上、ロボット工学の進化などにより、今や農業をはじめとするさまざまな産業で自動化が可能になった(「」を参照)。

果樹園の設計の変更も、自動化への移行を促進する。栽培業者は低木を植えはじめ、枝葉の広がりが浅く幅広くなるように剪定した。それによって収穫量が増大し、機械の手や真空ノズルが果実に届きやすくなった。

「収穫ロボットは、これから3年以内に市販化されるでしょう」とカルキー准教授はいう。カルキー准教授は、機械が枝をつかみ、リンゴを木から慎重に振り落とす別の方法に取り組んでいる(この方法は、あまり丁寧に扱う必要のない、一部のジュース用のリンゴの収穫にすでに使用されている)。 アバンダントの競争相手であるイスラエルのスタートアップ企業FFロボティクス(FFRobotics)は、この秋、3本の指で果物を摘み取る試作機をワシントン州でテストしようとしている。

ウィレット部長は、ロボット収穫テクノロジーのテストに協力してくれる栽培業者には事欠かないという。だが、当面の間は機械が大勢の作業者に取って代わることはないと予想している。ワシントン州には、機械による収穫に適した果樹を所有していない果樹園もあるからだ。

スティアCEOは、たとえアバンダントの機械が人間の労働者に取って代わったとしても、アバンダントは古い物語の新たな章の始まりを告げる存在に過ぎないと語る。「1800年代の農業の歴史を見てください。機械が収穫の方法を変え、それが社会に大きな利益をもたらしました」。

 

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クレジットImage courtesy of Abundant Robotics
トム サイモナイト [Tom Simonite]米国版 サンフランシスコ支局長
MIT Technology Reviewのサンフランシスコ支局長。アルゴリズムやインターネット、人間とコンピューターのインタラクションまで、ポテトチップスを頬ばりながら楽しんでいます。主に取材するのはシリコンバレー発の新しい考え方で、巨大なテック企業でもスタートアップでも大学の研究でも、どこで生まれたかは関係ありません。イギリスの小さな古い町生まれで、ケンブリッジ大学を卒業後、インペリアルカレッジロンドンを経て、ニュー・サイエンティスト誌でテクノロジーニュースの執筆と編集に5年間関わたった後、アメリカの西海岸にたどり着きました。
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