KADOKAWA Technology Review
×
産業ロボ大手クーカ、家庭用ロボット参入へ
Industrial Robot Firm Kuka Looks to Automate the Home

産業ロボ大手クーカ、家庭用ロボット参入へ

中国企業に買収された産業用ロボット大手のクーカが消費者向けロボットの開発を表明。工場向けに開発された技術からどんなロボットが生まれるのだろうか。 by Jamie Condliffe2017.06.22

世界で最も成功した産業用ロボットのメーカーのクーカ(Kuka)は、人間を助けるロボットの開発に取り掛かかろうとしている。

2016年の夏、明るいオレンジ色のロボットが工場の床一面に並んでいる、ドイツのロボット企業クーカは、中国の家電メーカー、ミデア・グループ(美的集団)に50億ドルで買収された。この買収は、自動化を取り入れるという中国の長期的な願望を反映している。当時、MITテクノロジーレビューのウィル・ナイトAI担当上級編集者は、買収はおそらくミデアの国内工場の生産をロボット化するためだろうと説明したが、ミデアの国産ロボット開発に役立つかもしれないとも推測している。

今では後者の推測が証明されつつある。クーカのCEOは、 フィナンシャル・タイムズ紙とのインタビュー(ペイウォール)で、「ミデアはロボットやオートメーションに何も手をつけていませんが、クーカこそがミデアにとってオートメーションなのです。そして、ミデアは消費財産業と非常によい繋がりがあります。だからミデアとクーカは一緒に消費者向けロボットを開発したいと思います」。

そのロボットがどのような形になるかは、まだはっきりしていない。しかし、これまでのクーカの製品から考えると、話をしたり家の周りを歩き回ったりする程度の小さな友達のようなロボットになることはまずないだろう。それどころか、クーカは、食器洗い機から食器を出し入れしたり、飲み物や一皿の食べもの用意したり、高齢者がベッドから出るのを手伝うようなロボットを作ろうとしているかもしれない。こういった作業は機械にとっては複雑な仕事だが、次第にロボットがするのがより妥当だと思われるようになってきている

消費者へのロボットの普及を広く促進するのは、快活な会話タイプのロボットではなく、こうしたヘルパー型のロボットになりそうだ。今年初め、市場調査会社のリサーチ・アンド・マーケッツは、パーソナルロボット産業が2022年までに年率40%近く成長し、340億ドル規模に達するだろうと推定した。また、清掃や高齢者のケアに使用されるロボットが、成長の主な推進要因となると指摘した。

クーカの新しいマシンが人型ロボットになるとは期待すべきではない。実際、フィナンシャル・タイムズ紙の説明によれば、クーカは「2本の腕と顔が必要か、あるいは何か別の方法で動いたり、作業できるかどうかを再考している」という。

(関連記事:Financial Times, “Chinese Bid for Kuka Shows How Serious It Is About Robots,” “China Is Building a Robot Army of Model Workers,” “Audi Drives Innovation on the Shop Floor”

人気の記事ランキング
  1. An ancient man’s remains were hacked apart and kept in a garage 切り刻まれた古代人、破壊的発掘から保存重視へと変わる考古学
  2. This startup just hit a big milestone for green steel production グリーン鉄鋼、商業化へ前進 ボストン・メタルが1トンの製造に成功
  3. AI reasoning models can cheat to win chess games 最新AIモデル、勝つためなら手段選ばず チェス対局で明らかに
  4. OpenAI has released its first research into how using ChatGPT affects people’s emotional wellbeing チャットGPTとの対話で孤独は深まる? オープンAIとMITが研究
タグ
クレジット Photograph by TOBIAS SCHWARZ | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る