IT企業トップをトランプ大統領が招集、グダグダ会議の中身
アップル、グーグル、アマゾン、マイクロソフトのトップらがホワイトハウスに招集された。トランプ大統領は新たなインフラ構築やサービス開発への協力を要請したが、具体的な計画は見えてこない。 by Jamie Condliffe2017.06.21
テック業界の重鎮は6月19日、ワシントンD.C.に集結してホワイトハウスで開催されたテック会議に参加した。トランプ政権の狙いは、国内トップレベルのイノベーターの手を借りて、政府向けテクノロジーの整備を進めることだ。
このイベントは、テクノロジーをテーマとした1週間に及ぶワークショップの一部でありながら、トランプ政権向けの会議でもある。企画に携わったのは、トランプ大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問だ。クシュナー上級顧問が招集した参加者はそうそうたる顔ぶれで、アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO、アマゾン共同創設者のジェフ・ベゾスCEO、そしてアルファベット(グーグル)のエリック・シュミット会長などが名を連ねる。最も注目すべき点は、フェイスブックが不参加だったことかもしれない。日程の都合がつかなかったことが欠席理由のようだ。
ワシントンポスト紙の記事によると、トランプ大統領はCEOたちとの会議の冒頭で「トランプ政権の目標は連邦政府向けテクノロジーを一新して、劇的に改善したサービスを国民に提供することだ」と語ったという。「我々は、大きな変化や大胆な考え、第三者の視点を受け入れている」。
このイベントでトランプ大統領は、老朽化した政府向けコンピューティング・インフラの全面的な見直しを大々的に発表した。クシュナー上級顧問によると、手をつける部分はたくさんあるという。たとえば、連邦政府関係機関が抱える6000以上のデータ・センターは統合の余地がある一方、政府が使用している最も古い10のネットワークは、遅くとも39年前から使われている。トランプ大統領は、今回のアップグレードにより今後10年間で1兆ドルの費用を削減できるかもしれないと発言した。
トランプ大統領が提案したテクノロジーの刷新に関して、具体的にどのような計画があるのかは説明されていない。しかし、トランプ大統領はアップグレードは「今回の出席者をはじめとする米国の偉大な民間企業の力を借りて」実現できるだろうと語った。
今回の会議以外でも、アメリカの将来を方向づけるためにどうやってテクノロジーを利用するべきかというテーマはよく話題になっている。たとえば、ナデラCEOは子どもたちにコーディングを学習させなければならないと主張し、ベゾスCEOは人工知能(AI)の重要性について「いくら強調しても大げさなことはない」と語った。
会議当日、最も面白い発言をしたのはクックCEOだろう。クックCEOは「米国政府は世界一近代的であるべきだが、現在の政府はそうでない」と発言し、さらに「ジャレッド(クシュナー上級顧問)が5年、10年、20年後に成果が見込めることに取り組んでいるのは素晴らしいことだ」と付け加えた。クックCEOの発言が皮肉なお世辞だったことは間違いない。
会議に出席した見返りに、テック企業は希望の光を見いだした。ブルームバーグの記事によると、トランプ大統領はこれまでの主張とは異なり、移民問題について議会と「非常に積極的に」取り組んでいるところだと説明したというのだ。トランプ大統領は、出席したCEOたちに「あなた方は欲しい人材を手に入れられる」と語った。トランプ大統領が甘い言葉を発したのは、政権が先日発表した入国禁止令に対してテック業界が大きく反対の声を挙げたことに対する反応かもしれない。
しかし、会議に参加したCEOにわずかなリップサービスをした以外には、トランプ政権がどうやってテクノロジーの見直しに取り組んでいくのか依然として分からないままだ。テック業界の重鎮を会議室に集結させることと、連邦向けのインフラを一丸となって整備してもらうこととはまったく別の問題だ。
トランプ大統領は、民間企業に友好的な姿勢を示すことで彼らを思い通りに動かせると期待しているのかもしれない。テック業界の重鎮がトランプ大統領を支援してくれたら、後からトランプ大統領も彼らの支援を考えるかもしれない。しかし、トランプ大統領がやりとりをしているのは同じように機転のきくビジネスリーダーたちであり、物々交換のような取引に納得するとは限らないだろう。その代わり、彼らは大きな仕事に取り組む前に、もっとうまい話を期待するかもしれない。
(関連記事:Wall Street Journal, Bloomberg, Washington Post, CNBC, “グーグル、アップルはトランプ政権に反旗、IBM、シスコは沈黙”)
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クレジット | Photograph by Chip Somodevilla | Getty |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。