KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
機械から学習する子どもたち 
AIネイティブ世代の行方
kristian hammerstad
カバーストーリー Insider Online限定
Growing Up with Alexa

機械から学習する子どもたち
AIネイティブ世代の行方

米国では人口の5分の1近くの人がアマゾン・アレクサのような家庭用AI(人工知能)アシスタントを使っている。口頭での様々な指示や命令に応えるのような家庭用AIアシスタントは今後、一層普及が進むだろうが、家庭に入り込んだAIアシスタントが、子どもたちの成長にどんな影響を与えるのかはあまりわかっていない。 by Rachel Metz2017.09.05

4歳になる姪っ子ハンナ・メッツは、アマゾンのデジタル・アシスタント、アレクサを発売当初から使っている。ハンナの家にはホッケーのパックのような形をしたAI(人工知能)スピーカー「アマゾン・エコー・ドット」が4台あり、いつでもアレクサを呼び出せるように、ハンナの部屋など家のあちこちのコンセントにつながっている。

ある晴れた日の午後、ハンナがアレクサに言った。「アレクサ、『It's Raining Tacos(タコスが降ってくる)』をかけて」。アレクサはすぐに応じて、スピーカーからは「空からタコスが降ってくる。おいしい、おいしい、おいしいな」と楽し気な歌声が流れてきた。

クスクスわらったり手をたたいたりしながらハンナは部屋中を踊り回った。ハンナが思い通りに音楽をかけさせられたことに感心したのとお付き合いで、私はハンナと一緒に踊った。しかし、AI執事と一緒に成長するのはハンナにとってどんな意味があるだろうとふと思った。

市場調査会社イーマーケター(eMarketer)によれば、米国で2017年に少なくとも1カ月に一度はデジタル・アシスタントを使う人は6050万人(人口の5分の1弱)に上り、そのうち約3600万人がアマゾン・エコーやグーグル・ホームなどのスピーカー型デジタル・アシスタントのユーザーだろうと予想している。こういったデジタル・アシスタントは、25歳から34歳までの子育て世代あるいは子育て予備軍などに最も人気が高い。

デジタル・アシスタントは今後、普及が進むだけでなく、質問や命令に対する答え方も上達し、より人間らしく話すようになるだろう。同時に、ハンナのような幼いユーザーたちは、デジタル・アシスタントに慣れて上手に使いこなし、曲を流す以上のことを頼むようになるだろう。宿題を手伝うように要求したり、家中の装置を操作するよう命じたりするかもしれない。

この状況は少し気がかりでもある。インターネットに接続されたコンピューターに、子どもたちがあらゆることを話すことでプライバシー問題が心配される。しかし、それ以外に、人工知能や自動化装置が、子どもたちの振る舞いやコンピューターに対する考え方にどんな影響を与えるのかについて、あまりわかっていないということがある。アレクサのような人工知能に物事や買い物を簡単に頼めるようになると、子どもたちは怠け者になるのだろうか?あるいはあれこれ命令しているうちに、何をするにもテクノロジーに頼らざるを得ないような間抜けになってしまうだろうか?(あるいはその両方だろうか?)

一部は実際にあり得るだろう。だが、これまで多くのテクノロジーがそうだったように、デジタル・アシスタントの有用性が、欠点を上回る可能性の方が高い。すでに途方もない量のデータやコンピューターを使ったさまざまな装置が、学習や遊び、交流を目的として、入園前の幼児も含む子どもたちの手に入るようになっている。アレクサを使えば、子どもたちはお馬鹿なものも真面目なものも含めてすべての質問に答えを得られ、お話を聞いたり、遊んだり、アプリを操作したりできる。手が届かないところにある電気のスイッチも入れられる。これは子どもたちのAI革命の始まりに過ぎない。

アレクサに感情はあるのか?

アレクサが人間ではないことをハンナが知っているのかどうか確信が持てな …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る