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がんに関与する遺伝子と患者の生存を関連づける「地図帳」が公開
生命の再定義 A Cancer “Atlas” to Predict How Patients Will Fare

がんに関与する遺伝子と患者の生存を関連づける「地図帳」が公開

スウェーデンの研究者たちが、多くのがんに関与する遺伝子と患者の生存とを関連づける「地図帳」を作成した。研究結果はがんの個別治療の必要性を強調するもので、32の遺伝子が創薬ターゲットになるだろうと予測している。 by Emily Mullin2017.08.21

腫瘍の遺伝子の変化を理解し、致命的ながんとより良性ながんの違いを区別できれば、医師が患者に対してより良い治療を提供するのに役立てることができる。

スウェーデンの研究者たちが、がんに関与する遺伝子の変化の多くを対応付け、誰でもアクセスできるカタログとして公開した。この「アトラス(地図帳)」は、多くのがんに関与する数千もの特定の遺伝子と患者の生存とを関連づけるもので、新たな創薬ターゲットの可能性を示すものでもある。

この新しいアトラスは、米国国立がん研究所の「がんゲノムアトラス」のような、腫瘍サンプルのレポジトリとなっている公開データベースから収集されたデータの意味を理解するために、現在進行している試みの一つだ。最終的な目標は、疾患のマーカーといった、抗がん剤開発や診断につながる実用的な情報を収集することにある。

スウェーデン王立工科大学で微生物学を研究するマティアス・ウーレン教授が率いる研究者たちのチームは、スーパーコンピューターを使用して、約8000の腫瘍サンプルを用いてヒトにおける主要な17種のがんを分析し、アトラスを作成した。同教授によれば、チームが探していたのは「突然変異によって生じたゲノムの包括的な変化」であるという。

ウーレン教授たちは、がん細胞で見つかったすべての遺伝子を対応付けて、これらの遺伝子によって作られるタンパク質が患者の生存にどう影響するのかを確かめようとした。遺伝子はタンパク質を作成するための指令を運び、遺伝子発現のレベルによって、作られるタンパク質の量が増加したり減少したりする。こうして作られたタンパク質は、がんのような生物学的過程に対し、非常に大きな影響力を持つ。

観察結果によるとタンパク質のレベルはがんごとに大きく異なっていた。このことは、患者の腫瘍の独自な特性に応じたがん個別治療の必要性を強調するものだという。

ウーレン教授たちは、がんの種類や腫瘍が体のどこにあるかにより、2000以上の遺伝子が患者の生存に対して異なる影響を与えていることを見出した。あるケースでは、より高度に発現した遺伝子が患者のより良好な転帰に関連し、他のケースでは見通しの悪さを予測したのである。結果の詳細は、2017年8月17日付のサイエンス誌に報告されている。

教授たちのチームは他にも、腫瘍の成長を止められる可能性がある、2000以上の遺伝子で構成するセットを特定した。しかし、これらのターゲットの大部分は、薬を効かせようとすると、患者に重篤な副作用が生じる可能性があり、がんの種類を問わず腫瘍の80%以上で見つかった32の遺伝子が創薬ターゲットになるだろうと予測している。

これまでの研究者たちは、がんに関与する遺伝子突然変異を特定するために、主にDNAシーケンシングを使用してきた。これに対してウーレン教授たちは、がんの影響で遺伝子がどのように変化するのかを理解するために、RNAシーケンシングを使っている。

遺伝子シーケンシング企業のイルミナでオンコロジー副部門長であるジョン・レイテ博士によれば、がん形成促進の根底にあるメカニズムを理解し、最終的に、研究者や医師が患者にとって最適な治療法を予測できるようになるには、多種の生物学的情報が必要になる。そうした際に、ヒト病理学アトラスのようなデータベースが役に立つだろうとしている。

一方、独立した非営利の学術研究機関であるニューヨーク・ゲノム・センターの計算生物学でアシスタント・ディレクターを務める、ニコラス・ロビン(Nicolas Robine)博士は、このアトラスは研究者の研究材料としては役に立つだろうが、患者のがんがどのように進行するかを知りたい医師に決定的な答えを自動的に提供するようなことはできないという。「発現プロファイルを入れれば転帰が良いか悪いかを教えてくれるようなものではないのです」

ウーレン教授たちが作成したアトラスは、人体の2万以上の遺伝子によって作られるヒトのタンパク質すべてを対応付けることを目的として、2003年にスウェーデンで始まったプログラムの一部である。

 

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クレジット Image courtesy of the Human Protein Atlas
エミリー マリン [Emily Mullin]米国版
MIT Technology Reviewの医学生物学副担当編集者(ワシントンD.C.駐在)です。取材したいのは、医学生物学と医療分野のイノベーションが、私たちの健康や日常生活をどう変化させるかです(いくらかかるのかも)。他に興味があるのは、こうした進歩のうち、世界の健康面の平等にどれがどのくらい影響を与えるかです。以前はフォーブス誌で契約ライターをしていた他、FierceBiotechで編集者のアシスタントをしていました。何かあればメールで連絡してください。
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