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Wristband Communicates with a Nudge

スマートウォッチ失敗を反省
触覚で情報を伝達

触覚で情報を伝えるウェアラブルデバイス「Moment」は、スマートウォッチにがっかりした人も満足できる? by Signe Brewster2016.08.16

現在のモバイルデバイスは、音や画面でユーザーと意思疎通するが、ソマティック・ラボが設計した新しいリストバンドは、触覚で意思疎通する。

「Moment 」は、情報を振動で伝えるウエアラブルデバイスだ。携帯電話やスマートウォッチは、デバイス全体を振動させて「何かのアラート」を送るが、Momentは4つのモーターを使って、さまざまな種類の触覚フィードバックを用意している。

「実際、自分の肌を、まるで誰かが指で三角や矢印をなぞっているように、形を感じるのです。Momentが作れる形には、とてもたくさんの種類があります」(共同創業者兼シャンタヌ・バラCEO)

The Moment wristband has no screen, just four motors to deliver specific vibrations for different notifications.
Momentのリストバンドには画面がなく、さまざまな通知を特定の振動で伝えるために、4つのモーターだけがついている

ソマティック・ラボは、2017年の上半期に159ドル(キックスターター経由の注文129ドル)で、Momentの販売を計画中だ。またMomentにはGPSナビゲーション、メッセージ通知、メトロノーム機能も付いている。新たなGPSの道順が現れるたびに、携帯電話のスクリーンをちらっと見るかわりに、出口に近付くにつれて、自分の腕に矢印形が、より激しくなぞられることを想像してみるといいだろう。

アプリ、テキスト、その他のスマホ通知について、Momentは、個々の連絡先ごとに異なる触覚パターンを用意しており、新着メッセージが誰から届いたのかわかるようになっている。開発者にとっては、Momentの電話アプリにアクセスできるアプリを開発するチャンスだ。電話アプリは、ユーザーが初期設定して、Momentとやり取りする主要なインターフェイスだ。再通知させるには、ユーザーはリストバンドの脇のボタンを押して、ジェスチャーで設定すればよい。

バラCEOは、アリゾナ州立大学の、認知ユビキタスコンピューティングセンターでMomentを開発し始めた。バラCEOの研究は、障がいを持った人が使えるように、もともと広範囲に利用できるテクノロジーに注目していた。周囲の状況に対処するために、画面から目を離してもいいように、人々を助けたいというバラCEOの関心から、Momentは生まれたのだ。

Users interact with the Moment wristband primarily through an app, which will add new functionality as developers create more applications for the technology.
ユーザーは、Momentのリストバンドと、主にアプリを通してやり取りするので、開発者がMomentのために、より多くのアプリを作ってくれれば、それだけ新機能が増える

ペンシルベニア大学GRASPロボット工学研究所のキャサリン・クヘンベカー所長は、電子デバイスが人間と意思疎通する有効な新手法を、触覚が提供する、という。

「触覚による合図は、上手く設計されれば、個人的で、際立っていて、非常に表現力豊かになりえます。腕のウエアラブルは、両手での作業の邪魔をしないので、合図を送るにはとても理想的な場所なのです」(クヘンベカー所長)

触覚フィードバックはまた、通知を聞きにくい状況では必要不可欠だ。バラCEOは、作業機械のオペレーターが防音耳あてを付け、視界が限られている工場のような環境を想定している。Momentのようなデバイスは、問題発生時に、機械が人間にすぐにフィードバックできるだろう。

Momentの最初のバージョンは、使用頻度にもよるが、数日間から1週間分のバッテリー稼働時間がある。現時点のスマートウォッチやスマホはバッテリー寿命が短めであり、モーターが増えることになるMomentのような手法は、既存デバイスに統合されないだろう、とバラCEOはいう。

ソマティック・ラボとしは、アップルウオッチからMomentに買い換えて欲しいわけではない、とバラCEOはいう。ソマティック・ラボはスマートウォッチに幻滅している人がいることに気付いており、スマートウォッチのように、スマホより小さな形状でスマホの機能を再現するのではなく、Momentでは、スマホの機能を拡大することを意図しているのだ。

「もし人間の体用のウエアラブルを作るなら、人間の体が最も反応しやすいモノをつくるべきです。それが触覚なのです。私たちが考えているのは、間違いなく、広範囲な人々に訴えられる製品です」

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シグニー・ブリュースターは科学とテクノロジーのライター。特に注目しているのは、たとえば実質現実やドローン、3Dプリントなど、芽生えたばかりのテクノロジーが今後どうなるか、です。記事は、TechCrunch、Wired、Fortuneでも執筆しています。
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