KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
Serial Battery Entrepreneur’s New Venture Tackles Clean Energy’s Biggest Problem

連続起業家のMIT教授、フロー電池で化石燃料に挑む

数々の電池関係のスタートアップ企業を創業したMITのチェン教授が、化石燃料に対抗する競争力を持つフロー電池で再び起業した。多くの失敗を教訓として、チェン教授は他の電池関連スタートアップ企業も巻き込んだ戦略を立てている。 by James Temple2017.10.12

マサチューセッツ工科大学(MIT)のイェット‐ミン・チェン教授が、最新のエネルギー貯蔵技術に賭けた。再生可能エネルギーと化石燃料の直接競争を前提に設計されたフロー電池のスタートアップ企業を立ち上げたのだ(「24M’s Batteries Could Better Harness Wind and Solar Power」参照)。

チェン教授らが新会社で挑む目標の高さは、「ベースロード・リニューアブル(Baseload Renewables)」という社名から容易に想像できる。マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置くベースロードが目指すのは、再生可能エネルギー源から送電網へ24時間連続して安定的な電力供給ができる電池。それもリチウムイオン電池と比べて少なくとも5分の1のコストで生産できる電池の開発を目指している。

実現すれば、夏の間に太陽光発電で余剰電力を作り出して保管しておき、曇り空が続く冬でも地域の需要を間断なく満たす、「周期的な貯蔵」という考え方が現実に近くはずだ、とチェン教授はいう。

最近、ベースロードは、MIT発の新しいベンチャー・キャピタルであるジ・エンジン(The Engine)から約200万ドルの資金提供を受けた(「MIT発ベンチャー・キャピタルが手ごわい技術に投資する理由」参照)。

ベースロードは現段階では技術的な詳細をあまり公表していないが、低コストを実現する鍵は硫黄にあるという。石油とガスの生産過程で生まれる廃棄物である硫黄は非常に豊富にあり、エネルギー密度が高く、1キログラムあたりわずか10セントという低価格で手に入る。

リチウムイオン電池のスタートアップ企業であるA123・システムズ(A123 Systems)、24Mほか3社を共同設立した経験を持つ物質科学者のチェン教授は、「1ドルあたりの蓄電量から考えると、硫黄は次善の物質よりも10倍以上も優れています」という。

ベースロードの他の共同設立者には、アクイオン・エナジー(Aquion Energy)で副社長を務めたテッド・ウィリーや、24Mでチェン教授と一緒に働いたマルコ・フェラーラ、ビリー・ウッドフォードらがいる(「蓄電池ベンチャーが 成功できないこれだけの理由」参照)。

再生可能エネルギー源がエネルギー需要のより大きな部分を占め、温室効果ガス排出量を大幅に削減するためには、より良く、より安価で、より長持ちするエネルギー貯蔵 …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る