KADOKAWA Technology Review
×
「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集中!
殺人ロボよりも現実的なAIの脅威
Miguel Porlan
The Dangers of Tech-Bro AI

殺人ロボよりも現実的なAIの脅威

企業でのAIの展開を支援するコグニション・エックス(CognitionX)の共同設立者タバサ・ゴールドスタウは、人間が持つ無意識の先入観がAIに与える影響について危惧している。 by MIT Technology Review Editors2017.10.30

人工知能(AI)や、AIをAIたらしめる中核要素とは、与えられた目標を達成する方法を見つけることにあります。しかし、目標を達成する過程については不透明な部分が多く見られます。もし、機械に無意識の先入観が組み込まれていて、だれもそれに気が付かなったとしたら、実は女性にとって不利な結果が出る可能性があるのです。しかも、そのような結果が出た理由を正確に知ることですら非常に困難なのです。

従来のテクノロジーでは、原因を追及することは容易です。例えば、自動車事故の死亡率は女性の方が高いですが、それは衝突試験で使われるダミー人形が、女性よりも男性に近い形状だったからです。AIにおいても、医薬品の治験や自動運転車などの分野で生死にかかわる問題が起きる可能性があります。

AIの性的偏向については、現時点でも事例があります。 グーグル広告では、高報酬の求人広告は女性よりも男性に多く提示されています。ほかにも同様の状況を想定することができます。女性の方がお金や住宅ローンを借りたり、保険に入るのが難しかったすることもあるのではないでしょうか?

私はAIについて、悲観的な未来を思い描いているわけではありません。殺人ロボットが作られることなどは想定していません。もっと狭い範囲での応用について考えています。その狭い応用例をつぶさに見ていくと、女性へのマイナスの影響に行き当たると思います。これはAIの問題ではなく、別の原因から生まれているのです。開発中の機械に、人間の無意識の性的偏見や人種差別が浸透してしまうリスクについて考えているのです。

AIの開発に携わる人たちに、このような問題を認識してもらうにはどうすればいいのでしょうか? まずは利用者の側が、倫理的なAIを求めていくことが必要です。単なる性の問題として捉えている人も大勢いますが、偏った先入観を持ったAIが生まれてしまうことは、根幹に関わる問題なのです。

(聞き手:レイチェル・メッツ=MITテクノロジーレビュー モバイル担当上級編集者)

人気の記事ランキング
  1. AI can make you more creative—but it has limits 生成AIは人間の創造性を高めるか? 新研究で限界が明らかに
  2. Promotion Call for entries for Innovators Under 35 Japan 2024 「Innovators Under 35 Japan」2024年度候補者募集のお知らせ
  3. A new weather prediction model from Google combines AI with traditional physics グーグルが気象予測で新モデル、機械学習と物理学を統合
  4. How to fix a Windows PC affected by the global outage 世界規模のウィンドウズPCトラブル、IT部門「最悪の週末」に
  5. The next generation of mRNA vaccines is on its way 日本で承認された新世代mRNAワクチン、従来とどう違うのか?
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。2024年も候補者の募集を開始しました。 世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を随時発信中。

特集ページへ
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2024年版

「ブレークスルー・テクノロジー10」は、人工知能、生物工学、気候変動、コンピューティングなどの分野における重要な技術的進歩を評価するMITテクノロジーレビューの年次企画だ。2024年に注目すべき10のテクノロジーを紹介しよう。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る