失敗から再挑戦、
心不全の遺伝子療法は
ついに実現するか
2015年の大規模な臨床試験で失敗して以来、心不全への遺伝子療法の適用は停滞していた。しかしここに来て、再挑戦の機運が高まっている。ニューヨークのマウントサイナイ医科大学のチームは豚での試験で良好な結果を出しており、来年の臨床試験に向けて患者の登録を開始する予定だとしている。 by Emily Mullin2017.11.06
10年以上に渡り、科学者たちは心臓に新たな遺伝子を送り込むことによって、血液の循環と体内への酸素供給を改善し、心不全を治療しようと試みてきた。
2015年に実施した心不全の遺伝子療法の大規模な臨床試験は失敗に終わった。ところが、他の様々な疾患に対する遺伝子療法が何年もかけてついに現実になってくると、遺伝子療法を再び心不全に試してみようという新たな機運が盛り上がっている。
ロジャー・ハジャール教授が率いるニューヨークのマウントサイナイ医科大学のチームは、何頭かの複数の豚に遺伝子療法をテストし、有望な結果を得たばかりだ。ハジャール教授は、以前失敗に終わった臨床試験を後援したバイオテク企業、セラドン(Celladon)の共同創設者だった。
重度の心臓疾患を持つ13頭の豚を扱った研究で、ハジャール教授と同僚たちは、6頭に遺伝子療法を実施し、他の7頭にプラセボ(偽薬)として生理食塩水を与えた。遺伝子療法は豚に危険を及ぼすことなく、心不全を左心室で25%、左心房で20%抑制。さらに、豚の肥大した心臓の大きさを10%減少させた。
ハジャール教授によれば、豚の心臓は人間と同じぐらいの大きさなので、この種の療法の試験対象に適しているという。ハジャール教授は、来年の臨床試験に向けて、進行したうっ血性心不全の患者の登録を開始する予定だ。
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、米国では約570万人の成人が心不全を患っており、その約半数が5年以内に死亡すると診断されている。心不全は現時点では治療できない。投薬のほか、禁煙、食事療法、定期的な運動など生活習慣の改善によって抑制できるだけだ。
心不全は、心臓が実際に止まるわけではない。体が必要とするだけ …
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