KADOKAWA Technology Review
×
DIY遺伝子療法キットは「違法」、 FDAとバイオハッカーが対立
The Odin
ニュース 無料会員限定
Biohackers Disregard FDA Warning on DIY Gene Therapy

DIY遺伝子療法キットは「違法」、 FDAとバイオハッカーが対立

遺伝子編集のための強力な手法であるCRISPR(クリスパー)が広まるにつれて、スタートアップ企業などによる手作り(DIY)遺伝子治療薬を自己投与する事例が相次いでいる。米国食品医薬品局は安全性リスクなどを懸念して警告を出しているが、事実上、無視されている。 by Emily Mullin2017.12.08

DIY遺伝子療法に対する連邦政府の警告にも関わらず、2つの企業はDNAを改変する材料を一般の人々に提供し続けるという。

オーディン(Odin)とアセンダンス・バイオメディカル(Ascendance Biomedical)の2社はともに最近、自社の研究室で作ったDNA分子を自己投与する人々の映像をオンラインに投稿した。

この映像が広く配信されたことを受けて、米国食品医薬局(FDA)は11月21日、DIY遺伝子療法キットについて消費者に警告し、販売を違法だとする 厳しい調子の声明を発表した。「こうした製品の販売は違法です。関連する安全性リスクを懸念しています」とFDAは述べている。

FDAはどの製品のことか明言はしなかった。2社の経営幹部はともに、自社が警告のターゲットかもしれないが、FDAからの連絡はまだないとしている。

MITテクノロジーレビューに対してFDAは、「調査・監視活動に関する情報は、処置を検討しているかどうかも含めて、強制措置がとられるまで通常一般に公開されません」と語った。

通常、製薬会社は新しい医薬品の試験のためにFDAの許可を求める必要があり、手続きにはしばしば何年も何億ドルもかかる。しかし現在、DIY遺伝子療法の事例が増えており、個々人が薬物を自己投与することを禁じる法律はないとの主張もあるため、規制当局が置かれた状況は難しくなりつつある。実際、長い歴史の中で、ノーベル賞受賞者を含めて科学者たちは自分自身の体を使って実験してきた。

DIYバイオロジー・キットと用品をWebサイトで販売するオーディンのジョサイア・ザイナー最高経営責任者(CEO)は10月、カリフォルニア州で開催されたバイオハッカー・カンファレンス中に遺伝子編集ツールのCRISPR(クリスパー)を自分自身に注入している動画を投稿した。この動画はYouTubeで5万8000回以上視聴されている。

FDAのスコット・ゴットリーブ局長は11月21日に、自己投与を目的としたCRISPR関連商品を販売する企業を直接強く非難する声明をツイッターに投稿するとと …

こちらは会員限定の記事です。
メールアドレスの登録で続きを読めます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る