KADOKAWA Technology Review
×
ニュース Insider Online限定
DNA could arrange nanoparticles into materials that manipulate light in new ways

「DNA折り紙」でプラズモン歩行器システムを試作、ドイツチーム

金属導体中の電子の海と光子との相互作用によるプラズモン現象を、情報処理や通信に利用するプラズモニクスの研究が始まっている。ドイツのマックスプランク知能システム研究所は「DNA折り紙」の技術を使うことで、金でナノスケールのスイッチや歩行器を試作することに成功した。 by Emerging Technology from the arXiv2018.04.11

DNAの長い鎖と、長い鎖の特定の場所に取り付くよう設計した短い鎖を混ぜると、短い鎖は連結支柱のように振る舞う。長い鎖を所々でつなぎ合わせて3次元形状に自己組織化させるのだ。

生化学者らはこの「DNA折り紙」を使って複雑な形状を作っている。たとえば、立方体やスマイリーフェイス、さらには中国とアメリカの簡単な地図などだ。

だがこれは始まりに過ぎない。DNA折り紙は分子スケールでさまざまなデバイスを作る可能性を秘めている。生化学者らは人工酵素や薬物送達システムを作る取り組みを始めており、人体を探索するナノボットもおそらく視野に入っているだろう。

物理学者らもこのテクノロジーの可能性を研究し始めている。ドイツのマックスプランク知能システム研究所(Max Planck Institute for Intelligent Systems)のチャオ・ジョウ博士と数人の同僚たちは、既存の材料では不可能だった方法で光を操る特殊な物質である「メタマテリアル(電磁波に対して自然界の物質には無い特性を持つ物質)」を、DNA折り紙で作る方法について研究している。ジョウ博士らは3月18日に発表した論文で、光によって形を変えることで、スイッチとして動作したり、表面を「歩いたり」できるDNA構造体の作り方を示している。

近年、物理学者らは金属導体中の電子の海と光子との相互作用について詳細な研究を始めた。「プラズモン」の海に打ち込まれた光子は、その海の表面に波を作る。それは地球の海洋に小惑星が衝突する様子に似ている。

この波は情報を伝達し、さまざまな方法で操ることができる。プラズモンの海は光を吸収するだけでなく、光を散乱し、情報を伝達できるのだ。

プラズモンを利用する技術である「プラズモニクス」は、情報処理と通信の領域に新たに出現した刺激的な研究分野だ。だが誕生して間も …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. AI companions are the final stage of digital addiction, and lawmakers are taking aim SNS超える中毒性、「AIコンパニオン」に安全対策求める声
  2. Here’s why we need to start thinking of AI as “normal” AIは「普通」の技術、プリンストン大のつまらない提言の背景
MITTRが選んだ 世界を変える10大技術 2025年版

本当に長期的に重要となるものは何か?これは、毎年このリストを作成する際に私たちが取り組む問いである。未来を完全に見通すことはできないが、これらの技術が今後何十年にもわたって世界に大きな影響を与えると私たちは予測している。

特集ページへ
日本発「世界を変える」U35イノベーター

MITテクノロジーレビューが20年以上にわたって開催しているグローバル・アワード「Innovators Under 35 」。世界的な課題解決に取り組み、向こう数十年間の未来を形作る若きイノベーターの発掘を目的とするアワードの日本版の最新情報を発信する。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る