KADOKAWA Technology Review
×
【4/24開催】生成AIで自動運転はどう変わるか?イベント参加受付中
ニュース Insider Online限定
Fukushima’s nuclear signature found in California wine

福島第一原発事故がカリフォルニア・ワインに残した確かな痕跡

大気圏内の核実験では、大量の放射性物質が大気中にまき散らされる。1950年代から1980年までのワインには、その痕跡が克明に現れている。日本の福島第一原発の事故に由来するセシウム137が当時生産されたカリフォルニア・ワインから検出されるかどうかを薬理学者が調べた。 by Emerging Technology from the arXiv2018.07.23

1950年代を通して、米国やソビエト連邦は地球の大気圏内で熱核兵器の実験をした。こうした核実験は大量の放射性物質を大気中に放出した。核反応によって海の重水素が発火し、地球が悲惨な火の玉となって破壊されるのではないかという恐れを生んだくらいだ。

大気圏内での核実験は、1980年に中国が計画を終了した際に終わった。しかし、核実験により、放射性核種の痕跡が地球に長期間残ることとなった。最もわかりやすい痕跡のひとつにセシウム137がある。これはウラン235の核分裂で生じる放射性物質だ。

セシウム137は大気中に放出されると、世界中に広がって食品に微量に混入する。こうした混入はまったく歓迎すべきものではない。しかし、2001年にフランスの薬理学者のフィリップ・ユーベルが、この痕跡を使うことで、ボトルを開けずにワインの生産時期を特定できることを発見した。

この手法はすぐに、若いワインに古いビンテージの年号ラベルを付けて価格を上げるワイン詐欺との戦いにおいて有効な武器となった。こうした詐欺は様々な種類の化学薬品や同位体分析で発見できるが、こうした方法ではワインのボトルを開けなければならず、ワインの価値を無駄にしてしまうことになる。

一方、セシウム137は放射性物質であるため、開栓せずに検査することが可能だ。セシウム137は、存在する同位体の量に比例して際立った量のガンマ線を放射す …

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
【春割】実施中! ひと月あたり1,000円で読み放題
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る