KADOKAWA Technology Review
×
進歩する遺伝子検査で浮上する「人種間格差」問題
Color Genomics
ニュース Insider Online限定
White-people-only DNA tests show how unequal science has become

進歩する遺伝子検査で浮上する「人種間格差」問題

遺伝子検査の新しい手法である「多遺伝子リスクスコア」は、従来より高い精度で疾患のリスクを予測できるとして注目されている。だが、リスクスコアを算出するアルゴリズムの作成に用いたDNAデータベースに偏りがあるため、白人以外には高精度の判定が期待できない。 by Antonio Regalado2018.10.22

DNA検査会社のカラーゲノミクス(Color Genomics)は、心臓発作のリスクの有無が分かる新しいタイプの遺伝子分析を来年初めにも顧客に提供するという。

しかし、この検査には問題がある。白人に対してしか有効でないのだ。

多遺伝子リスクスコアと呼ばれる新しいタイプのDNA分析は、がん、糖尿病、動脈血栓などさまざまな重大疾患のリスクを予測できる。MITテクノロジーレビューが選出した2018年版ブレークスルー・テクノロジー10にリスト入りするほど、大きな進歩と言えるテクノロジーだ。

だが、このアルゴリズムは、ほとんどの部分が、ヨーロッパ人を近い祖先に持つ人の健康状態とDNAデータに関する大規模データベースを用いて開発された。そのため、黒人、ヒスパニック系、アジア系など他のグループに対してそれほど正確ではない。

サンフランシスコ近郊に拠点を置くカラーゲノミクスのような企業にとって、これはジレンマとなる。

「一部の人々にしか製品を提供できないのは不公平であり、医学分野で容認できることではありません」とカラーゲノミクスで研究を率いるアリシア・チョウは述べる。一方で、この検査は一部の人には有効であり、今現在、実際に命を救える可能性がある。「メリットを受けられるはずの人々からデータを隠しておく」のも間違っているとチョウはいう。

問題を解決するためにカラーゲノミクスは、少数民族も含めて5万人分の遺伝子データを公開したと説明する。同社は、他の科学者らがこのデータを使うことで、すべての人種に対して有効なリスクスコアの開発が促されることを望んでいる。「5年以内には成果が出てほしいと考えています」。

従来の遺伝子検査は、疾患の原因となる単一遺伝子に治して突然変異を詳細に調べるが、新しい検査手法である多遺伝子リスクスコアは異なった方法を用いる。単一遺伝子を調べるのではなく、ヒトゲノムの中の多くの(通常約50万カ所)測定値を考慮して総合スコアを作成し、この総合的な結果を基にリスクを判断する。

問題は、このスコアを準備するために利用したバイオバンクが格納しているDNAが、主に、ヨーロッパ系の人のものだということだ。2016年時点で、一連の大規模科学プロジェクトに参加した3500万人のうち約80%がヨーロッパ系であり、ヒスパニック系はたった1%であった(「DNAデータベースの白人偏重は何が問題なのか?」を参照)。

こちらは有料会員限定の記事です。
有料会員になると制限なしにご利用いただけます。
有料会員にはメリットがいっぱい!
  1. 毎月120本以上更新されるオリジナル記事で、人工知能から遺伝子療法まで、先端テクノロジーの最新動向がわかる。
  2. オリジナル記事をテーマ別に再構成したPDFファイル「eムック」を毎月配信。
    重要テーマが押さえられる。
  3. 各分野のキーパーソンを招いたトークイベント、関連セミナーに優待価格でご招待。
人気の記事ランキング
  1. The balcony solar boom is coming to the US 安全性は大丈夫? 米国で「バルコニー発電」がブーム
  2. Three things in AI to watch, according to a Nobel-winning economist AIによる雇用破壊、ノーベル賞経済学者の答えはまだ「ノー」
  3. This startup’s new mechanistic interpretability tool lets you debug LLMs LLMをデバッグできる? 機械論的解釈可能性ツールが登場
  4. How Chinese short dramas became AI content machines 1日470本、制作費9割減 ——中国は生成AIで 世界のドラマ工場になる
MITテクノロジーレビューが選んだ、AIの10大潮流 [2026年版]

AIをめぐる喧騒の中で、本当に目を向けるべきものは何か。この問いに対する答えとして、MITテクノロジーレビューはAIの重要なアイデア、潮流、新たな進展を整理したリストを発表する。

特集ページへ
MITテクノロジーレビューが選んだ、 世界を変える10大技術

MITテクノロジーレビューの記者と編集者は、未来を形作るエマージング・テクノロジーについて常に議論している。年に一度、私たちは現状を確認し、その見通しを読者に共有する。以下に挙げるのは、良くも悪くも今後数年間で進歩を促し、あるいは大きな変化を引き起こすと本誌が考えるテクノロジーである。

特集ページへ
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る