ガソリン需要のピークはいつか?電気自動車が起こす地殻変動
過去25年間でガソリン需要は大きく上昇した。しかし電気自動車が普及すれば、世界のガソリン需要の低下は避けられない。 by Jamie Condliffe2016.11.23
ガソリンは、ある意味ドラッグと似ている。地球に有害だと知っていても、なかなかやめられない。しかし現在、電気自動車が普及段階に到達し、エネルギー業界からもガソリン依存から脱却しつつあるという見解が多く示されるようになり、実際、乗用車向けガソリン需要は2020年までに減少するだろう。
国際エネルギー機関(IEA)の新たな予測によれば、乗用車向けの世界のガソリン消費量は、非常に控え目に見ても、今後5年間で減少する。ブルームバーグによると、IEAは、世界の1日あたりのガソリン消費量は昨年の2300万バレルから、2020年までに2280万バレルに減少すると見ている。ただしIEAの予測は、2040年までのどこかで、ガソリン需要が再び増加に転じる可能性を示している。

しかし、IEAは、需要が再上昇したとしても、ガソリンの消費量は現在と比べて0.2%低下すると考えている。割合としては少ないが、過去25年間でガソリン消費量が20%増加したことを考えれば、間違った方向ではない。
興味深いのは、石油産業の予測よりIEAの予測のほうが明るい見通しを示していることだ。たとえばシェルは、全世界の石油需要はわずか5年後に頭打ちになるという見解を最近示したが、IEAは、ジェット燃料やディーゼル燃料など、ガソリン以外の精製油の需要が引き続き増加すると予想しており、産油国には朗報だろう。
IEAのファティ・ビロル事務局長は、IEAの予測は「電気自動車時代の到来」に基づいていると考えている。ファティ事務局長の見解は正しい。経済的に豊かな一部の都市では、道路を走る全ての自動車の3分の2が2030年までに電気自動車になる可能性がある。
とはいえ、すぐに電気自動車の利用が増え、ガソリン需要が横ばいになるわけではない。米国では今年、運輸業界が電力業界を抜いて二酸化炭素の最大の排出源になりそうだ。状況を確実に改善するには、気候変動との戦いを第一に考えることが必要だ。
うまくいけば、電気自動車の利用を促す現政権の戦略は、ドナルド・トランプ次期大統領の任期中にも継続する。米国がガソリン依存から脱却できるかは、その戦略にかかっている。
(関連記事:Bloomberg, Independent, “Planes, Trains, and Automobiles Have Become Top Carbon Polluters,” “ガソリン車と電気自動車の主役交代は2020年代後半,” “電気自動車普及に消極的なトランプ政権で、テスラがピンチ”)
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| クレジット | Photograph by Spencer Platt | Getty |
- ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
- MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。