KADOKAWA Technology Review
×
Here’s How to Speed Up the Electric-Car Revolution

ガソリン車と電気自動車の主役交代は2020年代後半

ドイツのガソリン車全廃決議をEUが受け入れれば、電気自動車主流時代は最大で7年早く到来する。 by Jamie Condliffe2016.10.13

自動車の未来は電気自動車かもしれないが、未来を現在に持ってくるには政府による規制強化が確実だ。

ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスとマッキンゼー・アンド・カンパニーは新しい報告MIT Technology Reviewでは既報の事実をまた述べている。電気自動車は2030年までに輸送の主流になるのだ。実際、いくつかの高所得な都市では、2030年までに道路を走る全ての車両の3分の2が電気自動車になる可能性がある、と新たな研究は推定している。

先月開催されたパリモーターショーを訪問した人なら誰でも、この未来の到来が確実だと思ったはずだ。パリモーターショーでは電気自動車の新車が24台発表された。来年上期には発表された車の多くが販売され、2020年までにはほとんどが販売される。BMWは声明で、今後10年間で、同社の販売台数の25%相当(年間約50万台)を電気自動車が占めるとしている。

競合車の増加にもかかわらず、大衆向け電気自動車の製造に業界を向かわせたのは、テスラのイーロン・マスクCEOの構想と、発売予定のテスラ モデル3の販売台数見込みに間違いない。また、この傾向はリチウムイオン電池の価格が急落したことでも加速した。リチウムイオン電池の価格は2010年以降65%下落し、今後10年間でさらに半額になることは確実だとされている。

しかし、このような楽観的な状況にも関わらず、電気自動車が広く選択されるためには積極的な政策が必要だ。ブルームバーグとマッキンゼーによる報告が示すように、純粋に消費者主導で電気自動車が購入された場合、規制主導に比べて、約5〜7年普及が遅れる可能性がある。

今後必要とされる強力な政策の例をEUはすでに用意している。2019年に制定される見込みの新しいEU指令によって、ヨーロッパの全ての新築・改築住宅は、電気自動車用に充電器を備えることが求められる、とガーディアン紙は報じている。年内施行の予定の別の規制では、新設する駐車場のうち最低10%は充電器を備える必要がある。

今週の初め、ドイツ連邦議会でEU全域で内燃機関エンジンを2030年までに禁止する決議案が可決された。政策を決めるのはEUであり、この決議は単独では大した影響力がない。しかし、決議はドイツ政府の意図を非常に明確なメッセージで伝えており、フォーブス誌が指摘するように、ドイツは歴史的にEUの立法に大きな影響を与えてきた。

このような規制は電気自動車を急速に広げる火付け役にはならないかもしれないが、EUがすでに示した規制に他の国や都市は従わなくてはならないだろう。

(関連記事:Bloomberg New Energy Finance and McKinsey & Company, BloombergThe Guardian, Ars Technica, “The Paris Motor Show Confirms It: The Future Is Electric,” “The 2020s Could Be the Decade When Electric Cars Take Over”)

人気の記事ランキング
  1. Advanced solar panels still need to pass the test of time ペロブスカイト太陽電池、真の「耐久性」はいつ分かる?
  2. Why hydrogen is losing the race to power cleaner cars 「いいことずくめ」の水素燃料電池車はなぜEVに負けたのか?
  3. I used generative AI to turn my story into a comic—and you can too プロンプト不要、生成AIで誰でも物語からマンガが作れる
  4. Trump wants to unravel Biden’s landmark climate law. Here is what’s most at risk. 「もしトラ」に現実味、トランプ返り咲きで気候政策はどうなる?
タグ
クレジット Photograph by David McNew | Getty
ジェイミー コンドリフ [Jamie Condliffe]米国版 ニュース・解説担当副編集長
MIT Technology Reviewのニュース・解説担当副編集長。ロンドンを拠点に、日刊ニュースレター「ザ・ダウンロード」を米国版編集部がある米国ボストンが朝を迎える前に用意するのが仕事です。前職はニューサイエンティスト誌とGizmodoでした。オックスフォード大学で学んだ工学博士です。
10 Breakthrough Technologies 2024

MITテクノロジーレビューは毎年、世界に真のインパクトを与える有望なテクノロジーを探している。本誌がいま最も重要だと考える進歩を紹介しよう。

記事一覧を見る
人気の記事ランキング
  1. Advanced solar panels still need to pass the test of time ペロブスカイト太陽電池、真の「耐久性」はいつ分かる?
  2. Why hydrogen is losing the race to power cleaner cars 「いいことずくめ」の水素燃料電池車はなぜEVに負けたのか?
  3. I used generative AI to turn my story into a comic—and you can too プロンプト不要、生成AIで誰でも物語からマンガが作れる
  4. Trump wants to unravel Biden’s landmark climate law. Here is what’s most at risk. 「もしトラ」に現実味、トランプ返り咲きで気候政策はどうなる?
気候テック企業15 2023

MITテクノロジーレビューの「気候テック企業15」は、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する、あるいは地球温暖化の脅威に対処できる可能性が高い有望な「気候テック企業」の年次リストである。

記事一覧を見る
フォローしてください重要なテクノロジーとイノベーションのニュースをSNSやメールで受け取る